『風、薫る』ロスを救う『ブラッサム』へのバトン!「自分で選ぶ道」を生き抜いたヒロインの共通点とは
2026年、3月に始まったNHK朝の連続テレビ小説「風、薫る」も、早いもので半年が過ぎ、最終週『道標(みちしるべ)』のフィナーレを迎えました。
来週から9月28日(月)からは後期の「ブラッサム」が始まります。
「風、薫る」は、日本初の“トレインドナース”という、一定の教育課程を修了し知識と技術を習得した「正規の訓練を受けた看護婦」の女性たちがヒロインでした。
そして、「ブラッサム」は、幼い頃からの小説を書きたいという夢を諦めず「一流の作家」となっていく女性がヒロインです。
両方の物語とも、時代背景が明治時代(ブラッサムは大正・昭和も)であること。
そして、看護婦と作家という違いはあれども、女性が自分で生きる道を選び取って生きていくのが困難な社会であったことが似ています。
「風、薫る」も「ブラッサム」も、“明治という古い価値観が揺らぎつつある時代”を出発点に、激動の時代を生き抜いた女性たちのきらめきが魅力ではないでしょうか。
前期から後期にバトンタッチする二つのドラマの共通点を考察してみました。
「風、薫る」の余韻の振り返りをしつつ、新しい「ブラッサム」への期待に胸をときめかせつつ、ドラマのお供にしていただければ幸いです。
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左「風、薫る」右「ブラッサム」(NHK朝の連続テレビ小説公式サイトより)
「女性が職業を持つ」こと自体が社会への挑戦だった「風、薫る」がスタートした時代は、明治維新後の明治9年(1857)頃。
主人公の一ノ瀬りん(見上愛)は、「日本のナイチンゲール」とも呼ばれる実在の人物・大関和。もうひとりのヒロイン大家直美(上坂樹里)は同じく実在の人物・鈴木雅がモデルでした。
りんは、当時の女性の最終目的であった「結婚して家に入る」ことに収まらず、自分で働いて離婚した夫との間にできた娘を育てていくために。
孤児だった直美は、貧乏生活から抜け出して生活費を稼ぐために。
日本ではまだ知られていなかった「トレインドナース」となり、職業としての看護婦の誕生に大きな貢献をしました。
かたや、「ブラッサム」の主人公、葉野珠(石橋静)は、明治30年生まれで大正・昭和・平成にかけて活躍した誰もが知る女性作家・宇野千代がモデルとなっています。
14歳で初婚、結婚4回…朝ドラ『ブラッサム』石橋静河が演じるヒロインモデル・宇野千代の激動の生涯両方とも、実在の人物をモデルにしつつも、さまざまなフィクションを加えて再構成したドラマです。
史実の宇野千代は、山口県・岩国に生まれ上京して作家として活躍しつつも、その多才さで編集者や着物デザイナーでもあった女性。
私生活では四度結婚し「華麗なる男性遍歴の女性」ともいわれています。
ドラマで描かれるヒロインは……
好奇心旺盛で即行動する、パワフルでチャーミングな小説家
小説を書きたいという幼き日の夢を諦めず、故郷の山口・岩国を飛び出し
魅力的な人々との出会いによって、夢を手繰り寄せ、
大正・昭和の激動の時代へと突き進んでいきます。(NHK公式サイト「2026年度後期 連続テレビ小説「ブラッサム」制作・主演発表)
とのこと。ワクワクしますね。
看護婦と作家という異なる職業の物語ではありますが、
・「風、薫る」:看護という新しい専門職を選び、日本に看護婦という職業の道を切り開いた主人公たち
・「ブラッサム」:女性が小説を書くことを職業として一流になり、社会的地位を確立した主人公
「女性の生き方がまだ決められていた時代に、新しい生き方を自分の手で掴んでいった女性」というところが共通しているように思います。
「良妻賢母」という社会規範から離れた
さらに、両作品のヒロインたちに共通しているのは「女性は家にこもって良妻賢母であるべき」という、当時押し付けられていた「女性はこう生きるもの」という社会規範に従わなかったところにあるような。
「風、薫る」のヒロインたちは、ドラマでも史実でも結婚経験があり子どもも育てていますが、「“看護という仕事”を捨て家に入って家事育児だけに専念する」ことはありませんでした。
看護のキャリアを積み重ねて、自分たちで「派出看護の会」を設立し、次世代の看護婦を育てるまでになりました。
一方、「ブラッサム」のヒロインは、恋愛と別れ・仕事を経験しつつ、自由を求めて生きることに正直であり続けた女性……というイメージ。
両作品のヒロインたちは、「誰かに選ばれて幸せにしてもらう女性」ではなく、「自分で生き方を選ぼうとする女性」という点で重なっているような気がします。
「風、薫る」のヒロイン、一ノ瀬りんと大家直美。右は「ブラッサム」のヒロイン主人公・葉野珠。(NHK朝の連続テレビ小説公式サイトより)
自分の人生を生きた結果、社会も変わっていく「風、薫る」のりんと直美は最初から高い志を持ち「日本の医療を変えてやろう!」「日本中に看護婦を広めよう!」として活動していたわけではありません。
看護婦養成所で西洋の看護法を学ぶうちに、「病に苦しむ患者を助けたい」「そのために看護の知識をもっと身に付けたい」「看護婦という専門職で自立して生活したい」という、ごく身近な動機から始まりました。
そして、差別や偏見と戦ったりサポートしてくれる人々に支えてもらったりしていくうちに成長。日本に「看護」の必要さを周知し、女性が社会進出できる仕事としての「看護婦」を増やしました。
「ブラッサム」の珠も同様、「日本における女性の文学史を変えてやる!」という大義を背負って奮闘したというよりも、本が好きで「小説を書きたい」という夢を持ったところから始まるようです。
自分の夢を捨てることないという生き方が、結果的に女性として一流の作家となり、女性たちの生き方に大きな影響を与えていく、そんな素敵な女性になっていくのでしょう。
女性が生きるのが大変だった時代に、出会いや経験を大切にしつつ、困難に遭いながらも、自分らしく道を切り開いていく……そんなキラキラした魅力を持つヒロインに、また勇気や元気を分けてもらえそうです。
主人公・葉野珠役の石橋静河さん。(NHK「ブラッサム」公式「X」より)
「近代化=女性の自由」ではなかった時代に生きた女性「風、薫る」のりんと直美は、出自も性格も得意分野もまったく異なる二人でした。けれども「看護」という仕事を通じて、お互いに影響を受けつつ成長していきました。
「風、薫る」の背景となった明治維新後も、「ブラッサム」の背景となる明治・大正・昭和時代も、日本社会が急速に近代化・西洋化していく一方で、女性の生き方にはまだ強い制約が残っていた時代です。
社会は新しくなっているのに「女性の人生」に対する考え方は古く「自由」にならない……
「風、薫る」では、西洋の新しい医療は入ってくるのに看護婦に対する認識は広がらず苦労を重ねたヒロインたちが描かれていました。
「ブラッサム」のヒロインも、社会は発展していくのに女性の自由な恋愛・結婚・離婚の選択は認められず、女性作家として生きていくことに葛藤しつつも成功していくのではないでしょうか。
『咲き誇れ、わたし』というキャッチコピーにあるヒロインの生き方は、世代に関係なく頑張る現代の女性たちへのエールとなる物語になりそう。楽しみですね。
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