「お香」はなぜ今、暮らしに戻ってきたのか――千年続く香り文化の現在地 (3/4ページ)

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同氏も、お香の用途や使うタイミングを一つに決めてはいないという。

朝に使う人もいれば、仕事を始める前や一日の終わりに使う人もいる。どの場面で使うかは、生活者自身が決めるという考え方だ。香りを商品として扱う難しさは、こうした感覚的な価値をどのように伝えるかにある。

「心地よい」「懐かしい」といった感覚は共有できることもある一方、万人に同じように伝わるわけではない。

特に海外市場では、日本人が当然のように持っている文化的な背景が共有されていないため、商品と一緒に文化的な文脈をどう説明するかも重要になる。

「Zen」や「Mindfulness」に置き換えるだけでいいのか

日本文化を海外で紹介する際、「Zen」や「Mindfulness」など、すでに知られている言葉を使って説明することがある。分かりやすさという点では有効だが、それだけでは日本のお香文化が持つ背景を十分に伝えられない可能性もある。

Nakayama氏は、伝統文化をそのまま保存するのでも、現代の流行に合わせて単純化するのでもなく、現在の生活者に理解できる形へ「翻訳」することを重視しているという。

例えば、千年前の調合をそのまま再現するのではなく、現代の住宅環境や生活習慣に合う香りとして組み直すことも、その一つだ。また同社では、天然香原料や自然環境との関係を意識し、売上の一部を自然環境保護活動へ寄付しているという。

もっとも、こうした活動も含めてブランドの価値として伝えるのであれば、理念だけでなく、商品として継続的に選ばれることが必要になる。

伝統文化を残すためにも、事業として成立しなければ継続は難しい。

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