売上・規模を追う「膨張」から脱却へ―九州情報大学・井上善海教授が語る、中小企業の「質の成長」 (2/4ページ)
「売上は伸びているが利益が残らない」「組織拡大にマネジメントが追いつかない」といった成長企業にとっても、規模拡大の意味を改めて問い直す視点となります。
■「人を大切にする」を精神論で終わらせず、経営の仕組みに落とし込む
井上氏は「人を大切にする経営学会」の副会長を務める一方、「人を大切にする」という理念だけで経営が良くなるのではなく、その考え方を企業の仕組みに落とし込むことが重要だと指摘します。
理念を掲げるだけでなく、組織制度や日々のマネジメント、意思決定の仕組みとして定着させる。これは、人材不足や採用難に直面しながら、社員が働き続けられる組織づくりを求められる中小企業にとって重要な論点です。
研究室だけでなく企業の現場へ足を運び、企業と長期間付き合いながら実態を見極めてきた井上氏ならではの「現場主義」から、理念と仕組みを両輪で考える経営のあり方を紹介します。
■DXは「自社に使えるITを探す」から始めない――最先端技術を事業へ応用する逆転の発想
中編では、2026年4月に出版された編著書『経営情報入門』を題材に、AI・DX時代の経営情報について掘り下げます。井上氏が示すのは、経営課題から使えそうなITを探す従来型の発想ではなく、最先端の情報技術をまず理解し、「この技術を自社の事業にどう応用できるか」を考えるアプローチです。
記事では、建設業でデジタル技術を活用し、新たな事業モデルへ展開した企業などを例に、情報技術を単なる業務効率化の手段ではなく、事業創造や競争力の源泉として捉える考え方を紹介しています。
AI・DXを「導入すること」が目的化しやすい企業に対し、技術を理解し、自社ならではの使い方へ変換することの重要性を提示します。
■データを集めるだけでは競争力にならない。「自社固有の情報」に変える力
井上氏は、データそのものは単なる数字であり、それを企業が実際に活用できる「情報」へ加工することが重要だと説明します。同じデータを利用できても、どのように加工し、どのような意思決定へつなげるかによって企業ごとの差が生まれます。
AIやデータサイエンスの導入が広がるほど、「データを持っていること」だけでは差別化になりません。