【ブラッサム】秋山格之介(高良健吾)のモデルは芥川龍之介!史実では宇野千代が短編小説のモデルに

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【ブラッサム】秋山格之介(高良健吾)のモデルは芥川龍之介!史実では宇野千代が短編小説のモデルに

 

【ブラッサム】東京で珠(石橋静香)が初めて出会った本物の作家・秋山格之介(高良健吾)……モデルはあの芥川龍之介

NHK朝ドラ「ブラッサム」第5週『狂騒で、東京』。

従兄の木村保(金子大地)と東京の下宿で一緒に暮らし始めるも、保の実家からの仕送りが途絶え、下宿代を払うため仕事を探す葉野珠(石橋静香)。

新聞広告で見つけた西洋レストラン『悠樂軒』のウエイトレスとして採用になりました。

この店は実際、ドラマのモデルである宇野千代が18日間だけ働いた店で、大正時代に東京の本郷三丁目にあった『燕楽軒』と考えられます。

『燕楽軒』に関して、下記記事でまとめています。

『ブラッサム』珠が働く「悠楽軒」は本当にあった!わずか18日のバイトで芥川龍之介らと交差した運命の場所

春日通りを隔てて向かいには『中央公論社』があり、同社の名編集者・滝田樗陰(たきた ちょいん)が作家たちを伴い、よく食事をしに来たそうです。

そのうちの一人に、当時すでに誰もがその名を知る作家・芥川龍之介がいました。

ドラマでは、秋山格之介(高良健吾)という名前で登場しています。演じる高良さんのビジュアルや仕草、佇まいなどが芥川龍之介にそっくり過ぎて話題になっていますね。

この時代、芥川龍之介との出会いは、宇野千代の運命にどのような影響を与えたのでしょうか。

※朝ドラ「ブラッサム」の話題はこちらの記事もおすすめです!

【ブラッサム】保との別れ、そして再々婚…黒崎(遠藤憲一)モデル、名編集長・滝田樗陰が引き寄せる数奇な運命

東京で出会った作家・秋山格之介(NHK「ブラッサム」公式「X」)

「文学は呼吸」という名言を残し書籍を購入

ドラマでは、珠が初めて秋山格之介を見かけたのは、行きつけの書店『ぶんぶく堂』でした。

すれ違っただけで気が付かなかった珠に、文学オタクでクセの強い書店の主人・本田(川島潤哉)が「秋山格之介だよ!『羅城門』に『蜘蛛の巣』、今一番の売れっこ先生だよ!」と告げました。

「えぇ〜〜〜っ!!」。

このドラマ始まって以来、“こんな表情は初めて”というほど、珠は仰天した表情で大興奮していました。

書店では、ボードレール、ドストエフスキー、エドガー・アラン・ポーを手に取り購入、「相変わらず渋い品揃えですね」と言う格之介。

「お忙しいのに読む時間はないのでは?」と尋ねる本田に、

「文学は呼吸。吸うように読んで吐くように書く。どちらかでは生きていきません」と、有名な顎の下に指を当てる芥川ポーズで答えます。

本田の顔には、憧れと畏怖が入り混じったような表情が。

この時、格之介が購入した分厚い書籍は、3冊で5円50銭。

時は、大正5年(1916)10月。おおよそで現代の金額にすると、約6,600円〜ほどだそう。決して安いとはいえない金額でしょう。

格之介は値段を気にする様子もなく余裕で購入していることから、すでに売れっ子だったので、経済的にも余裕がある状態だったのかもしれません。

書店『ぶんぶく堂』で三冊の本を購入する秋山格之介(NHK「ブラッサム」公式「X」)

帝大在学中に『羅生門』を発表した芥川

NHK「ブラッサム」の公式サイトでは、秋山格之介の人物紹介は、

鋭い洞察と独自の感性で名を馳(は)せる文壇の寵児(ちょうじ)。代表作に『羅城門』『蜘蛛の巣』など。

と紹介。モデルについて言及はしていないものの、どう考えても『羅生門』『蜘蛛の糸』を書いた芥川龍之介がモデルです。

芥川龍之介は、明治25年(1892)東京生まれ。子供の頃から優秀な成績を収め第一高等学校から、超難関の東京帝国大学(現在の東大)文科大学英文学科に進学しました。

在学中の大正3年(1914)には、クラスメイトの菊池寛、久米正雄らと同人誌第3次『新思潮』を刊行。廃刊するまでに、処女小説『老年』を発表して作家活動をスタートしました。

かの有名な代表作『羅生門』を芥川龍之介の名前で発表したのは、大正4年(1915)のことです。その後、大正5年(1916)第4次『新思潮』を発刊し、そこに掲載した『鼻』が、夏目漱石に大絶賛されました。

同年、帝大の文科大学英文学科を20人中2番目の成績で卒業、海軍機関学校の嘱託教官(担当は英語)として教鞭を執るかたわら、創作に励んだのでした。

宇野千代と出会ったのはこの頃かと思われます。

実際、千代が京都で同棲していた従兄・藤村忠が帝国大学に進学したため、共に上京したのが、大正6年(1917)です。

ドラマ同様に、本郷の洋食屋『燕楽軒』でウエイトレスのアルバイトをしている時に、編集者・滝田樗陰(※)が連れてきた芥川龍之介と出会いました。

※ドラマでは滝田樗陰は『首都公論』の敏腕編集長・黒崎(遠藤憲一)として登場。

東京帝国大学を卒業する1916年(大正5年)頃の第4次『新思潮』のメンバー。右から2番目が芥川龍之介、一番右は成瀬正一、一番左から久米正雄、松岡譲。wiki  public domain

写真集がでるほどの美男子だった芥川龍之介

『燕楽軒』でのアルバイトは、宇野千代の人生を大きく変えました。

当時、芥川龍之介は、非常に「男前」「美男子」としても有名で、日本近代文学館からは『芥川龍之介写真集』も出版されたほどでした。

かたや、宇野千代は『燕楽軒』でアルバイト中、その美しさで『本郷のクイーン』と呼ばれたほどの人気者。

美男子&美女の二人が出会ったのに、意外と千代と龍之介との間に恋愛めいた話は見つからないようです。

この当時、千代は同時期に滝田樗陰が連れてきた同い年の今東光とのほうが仲良しでした。東光はまだ文士とも画家とも呼べるほどではありませんでした。

その頃の今東光は絶世の美少年であった。(『生きていく私』角川文庫)

東光は千代が仕事が終わりまで待ち家まで送っていったり、散歩をしたりそうです。

ある日二人で町を歩いている時のこと。千代は、八百屋の店頭で売っていた“一束二銭の葱”の安さに目を止め思わず購入しました。

恋を語り合っても好い若い男と女の散歩の途中で、この女は葱を買った、東光はそう思ったのかも知れない。(『生きていく私』角川文庫)

美少年と疑似恋愛ムードを楽しみつつも、やはり「安い葱」を見ると美女の仮面は剥がれ落ち、現実的な“主婦の顔“がひょいっと現れる……共感するエピソードです。

この話は、後日東光が芥川龍之介に話したのか、短編『葱』になったようです。

昭和2年の芥川龍之介。wiki

デート中「安い!と葱を買う千代から生まれた短編『葱』

芥川龍之介の短編『葱』とは、神保町にあるカフェの女給・お君さんが主人公。色白で眼が涼しい美人で、白いエプロン姿は竹久夢二の画中の人物が抜け出したようだと書いています。

そのお君さんは、女髪結の2階に間借りしている生活で、机にさまざまな書籍があるが、「残念ながらおれの小説などは一冊も見当たらない」。この一文は、芥川の心情を表しているような。

お君さんは、洒落た服装の無名の芸術家・田中君に恋します。

二人はサーカスを見に行くことになりますが、いざ待ち合わせると「サーカスは昨日で終わりだった。今日は自分の知る家に行き食事をしよう」と誘う田中君。

そっと手をつないだ二人は店まで歩きました。お君さんは今夜への期待や不安なのか、散歩の途中に目に入るものすべてがキラキラ見えていたようです。

ところが。

お君さんは、八百屋の店頭に「一束四銭」の札が付いた安い葱に眼が釘付けに。田中くんを1人残し駆け寄り葱を2束買いました。

田中君の脳裏からは、これから彼女を連れていく店の姿は消えていき、目の前に葱が浮びツ〜ンとした匂いまでしてきたよう。

「御待ち遠さま。」
憐むべき田中君は、世にも情無なさけない眼つきをして、まるで別人でも見るように、じろじろお君さんの顔を眺めた。(芥川龍之介「葱」)

今宵はロマンティックな逢瀬になるはずが、お君さんが葱を買う行為で、思い切り生活感に満ちた日常に引き戻されたのでした。「100年の恋も醒めた」ということなのでしょうか。

ちょっと、田中君には悪いけれどクスッとなって、お君さんには「わかる!わかる!」と言いたくなってしまう話です。

これが、甘やかな香りを放つ桃などの果物だったらこうはならなかったかも。

お君さんのモデルは宇野千代、田中くんのモデルは今東光……とすると。

千代の所帯染みた一面を知ってがっかりしたのは仲良しの東光ではなく、店内での美しい姿しか知らなかった(そして密かに憧れていた?)芥川のほうだったのかも?

そんな風に思えるような、小説でした。

書籍を読む秋山格之介と、西洋レストラン「悠樂軒」でウエイトレスとして働くようになった珠。(NHK「ブラッサム」公式サイト)

35歳という若さで自死した芥川

レストランのウエイトレスをしつつ従兄との生活を支えていた宇野千代は、まだ、ただの「小説を読んだり書いたりするのが好き」な若い女性。

5歳ほどしか年齢は離れていないものの、すでに作家として有名だった芥川龍之介は、恋愛対象どころか「憧れの雲の上の人」だったそうです。

その後芥川は、大正8年(1919)に結婚、翌年には長男・芥川比呂志(日本の俳優、演出家)も誕生しますが、大正10年、海外視察員として中国旅行から帰国後に心身が弱っていったそう。

この頃から作風は、自身の暗部をさらけだすような傾向が強まっていったと言われています。

その後、自身が編集した出版物のトラブルや義兄の自殺などの不幸な出来事が続き、昭和2年(1927)7月の早朝、致死量にあたる薬物を飲み、芥川龍之介は自ら命を断ちました。享年35歳という若さでした。

在りし日の芥川龍之介(1927年)wiki public domain

最後に

『燕楽軒』のアルバイトで宇野千代は『文学への道』へと歩み始めると同時に、衝撃的な一目惚れの恋をして、連れ添った二度目の夫・藤村忠と離婚、三度目の結婚へと走ります。

【ブラッサム】珠のモデルと結婚も束の間、置き去りにされ…木村保(金子大地)のモデル・藤村忠の生涯

芥川龍之介への憧れはあり、家へ訪ねて行ったこともあるそうですが、深い関わりはなかったようです。

けれども、東京で初めて出会った本物の有名な作家が目の前にいるという経験は、震えるほどの感動だったかと想像します。そして「文学の世界」がより身近に感じられ、書く意欲を刺激したきっかけとなったのではないでしょうか。

『ブラッサム』に関する話題は、こちらの記事でも紹介しています。ぜひご覧ください。

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参考:

・『宇野千代 ちょっと自伝』宇野千代・三宅菊子(マガジンハウス)
・『生きていく私』宇野千代(角川文庫)
・「おいでませ山口へ」作家・宇野千代とは?波乱万丈な生涯と故郷・岩国で育まれた人生観
・『葱』芥川龍之介(青空文庫)

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