デヴィ夫人が北朝鮮拉致問題を一刀両断「日本政府の意図がわからない」

デイリーニュースオンライン

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 国際文化人であるデヴィ夫人が、世の中のありとあらゆる問題を一刀両断。既存の価値観に捕らわれない国際的な見地からニュースの見方を説く!

北朝鮮側の再調査報告はなぜ遅れたのか

 2014年5月、北朝鮮が日本人拉致被害者と日本人妻、残留日本人、遺骨の再調査を実施することに同意したものの、その再調査報告が遅れていることが、さまざまなメディアで伝えられています。2014年夏から秋にかけて何らかの報告が北朝鮮からされる予定でしたが、現時点ではまったくその気配すらありません。迅速、かつ詳細な報告と一刻も早い解決を望む日本と、「調査は初期段階」という北朝鮮には、その認識にかなりの食い違いがあるように思えます。

 今から12年前の2002年10月15日、5人の拉致被害者の方々が日本に帰ってきたとき、多くの日本人のみなさん同様、私も熱い涙を流しました。そして拉致の事実を知り、怒りと憤りを覚えたものです。しかし、そのとき、両国の首脳が調印した日朝平壌宣言を、先に日本政府のほうが反故にし、50万トンの穀物を送る約束も守りませんでした。政府はこうした事実を国民に隠しています。この日朝平壌宣言によって両国の国交が正常化されるものとばかり思っていたのですが、今日に至るまで何ら進展は見られません。

 もちろん、拉致という行為は決してあってはならない、人として許されざる問題だと私は強く思います。残された家族のみなさんの何十年にも渡る苦しみは、とても言葉に尽くせるものではありません。横田夫妻のお気持ちもすごく理解できます。

 しかし、だからといって、北朝鮮への弾圧・制裁を声高に叫ぶ今の日本のムードに、私は賛成できません。なぜ日本はもっと徳のある政治を行えないのでしょうか。罪のない、政治の犠牲者である民を苦しめる復讐は、迫害にほかなりません。北朝鮮のことを「悪の枢軸」とアメリカのブッシュ大統領は言いましたが、そもそも北朝鮮をそうさせてしまったのはアメリカではないでしょうか。

 北朝鮮は好んで共産国家になったわけではないと思うのです。朝鮮半島が分断されたのは、ロシアとアメリカという強国の犠牲になったようなもので、アメリカの同盟国と貿易ができない以上、北朝鮮は共産化し孤立化するしかなかった。『瞼の母』という戯曲作品ではありませんが、まさに「こんなヤクザに誰がした」ですよ。

 また、それだけでなく、拉致問題に関しては、日本人特有の「ことなかれ主義」も大きく関係していると思います。最初の拉致被害者が出た頃、日本の公安は知っていたはずです。なぜ日本は、このとき国をあげて北朝鮮に抗議しなかったのか。もしもっと早く問題解決に取り組んでいれば、第二、第三の拉致被害者はきっと出て来なかったことでしょう。

 また、日本は1910年頃から朝鮮の人々を日本に拉致するがごとく、強制連行してきていませんか?

 竹島の問題もそうです。なぜ日本は韓国が海軍の要塞を建て始めたのに、声を大にして李承晩ラインを抗議しなかったのか。ここでも「ことなかれ主義」が国益を損なっています。

「日本政府の意図がわからない」

 残念ながら、今回の再調査において、12年前に死亡したと発表されている横田めぐみさんなど8人の拉致被害者の方たちは一人も帰って来ないと私は思います。

 横田夫妻も、もしかしたら横田めぐみさんがすでに亡くなっていることを心のどこかで知っておられると思います。しかし、象徴的な存在となっている横田夫妻が公にその事実を認めてしまうと、家族会(北朝鮮による拉致被害者家族連絡会)の存在自体が揺らいでしまいかねません。悲しきかな、そのためのストールとして使われている可能性もあります。

 一説には、あれほど孫のキム・ウンギョンさんが北朝鮮に会いに来てほしいと言っても、横田夫妻は行かなかった。その背景には、元夫のキムさんと娘のウンギョンさんと会って、めぐみさんが亡くなったことを認めてしまうと、政府と家族会が困るので、行かせなかったとか。また、2014年3月にモンゴルでキム・ウンギョンさんに会っていますが、めぐみさんの話は一切しなかった、と。こんな不自然なことはありません。

 北朝鮮の再調査をここまで国をあげて盛り上げておいて、拉致被害者が一人も帰って来ないとなると、日本国民の落胆と失望は相当なものになるでしょう。そして、新たに北朝鮮に対する大きな怒りの感情が沸き起こってくるでしょう。今回の再調査結果の遅れも、日本側が高い要求をしているあまり、北朝鮮側がその要求を満たせるだけの調査結果がないのかもしれません。この問題を通じて日本政府がいったい何を狙っているのか、私にはその意図を計りかねます。日本政府は北朝鮮に4兆円といわれる戦争賠償金を支払うのがイヤなのではないでしょうか。

 私は「日本を取り戻す」と言っている安倍首相を基本的に支持し応援していますが、今回の日本人拉致被害者の再調査に関連した動きは、日朝平壌宣言を反古にし、北朝鮮を敵として位置続けるための口実探しなのではないかと邪推すらしてしまうのです。アメリカの影が見え隠れしていると思うのは思い過ごしでしょうか。(談)

デヴィ・スカルノ
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1959年、訪日中のインドネシア・スカルノ大統領と出会い、結婚。若くして大統領夫人となり、日本とインドネシアの友好親善に尽くす。現在は「デヴィ夫人」の愛称で親しまれ、テレビなどでも大活躍。また、NPO法人「アース・エイド・ソサエティ」を発足させるなど、地球規模の慈善活動も行っている。

(撮影/西田航)

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