脳内が炎症する恐怖…隠れ患者36万人「慢性疲労症候群」

デイリーニュースオンライン

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 ある日突然、原因不明の強い疲労感、倦怠感に襲われ、それがずっと続いている。しっかり寝ても疲れが取れない。ぐったりしてしまい、自分の意志で身体を動かすことができず、仕事や日常生活に支障をきたす――。

 こんな症状に心あたりがある人はいませんか? もしかしたらそれ、「慢性疲労症候群」という病気かもしれません。

「慢性疲労症候群」は、単なる「慢性疲労」とはまったくの別物です。

「慢性疲労」は、疲れがなかなか取れない状態が続くもので、多くの人に経験があるはず。仕事や育児など、疲労の原因もハッキリしています。この場合は、しっかり休養をとったり、ビタミンB1などの栄養を補給したりすることで回復します。

 一方の「慢性疲労症候群」は、れっきとした病気。理研化学研究所などによる最新の研究から、脳内で起こる炎症が関与していることがわかっており、炎症の程度が強い人ほど症状が重篤になるようです。厚生労働省の推計では現在、日本には約36万人の「慢性疲労症候群」患者がいると発表しています。

 厚生労働省では、診断基準として、下の「前提条件」を2つとも満たした上で「症状」が8項目以上当てはまることを条件としています。

◆慢性疲労症候群の診断基準

[前提条件]

  1. 1か月に数日間、会社や学校を休まざるを得ないような強い疲労が6カ月以上続く
  2. 医師の診察や検査を受けても、とくに病気が見つからない

[症状]

  • 微熱、または悪寒
  • のどの痛み
  • 首、またはわきの下のリンパ節の腫れ
  • 筋肉の痛み、または不快感
  • 関節の痛み
  • 軽く動いただけで、その後、全身倦怠感が24時間以上続く
  • 頭痛
  • 原因不明の脱力感
  • 記憶力、思考力、集中力の低下、抑うつなどの精神神経症状
  • 不眠、または過眠などの睡眠障害
  • 急激な発症(主な症状が数時間から数日間で出現)

 病名や症状だけをみると、「ただの怠け病じゃないの?」と思われがちな慢性疲労症候群。しかし、実態はそんなイメージとは違い、とても深刻です。社会生活を送るのが困難になり、重症の場合は、車椅子での生活を余儀なくされたり、食事やトイレも困難な「寝たきり状態」になってしまうことも。

 実は、この病気はまだ実態がはっきりしておらず、医師の間でも知識や理解に大きな差があるのが現実。病院へ行っても、「過労ですね」「しっかり休めば治ります」などと片づけられてしまうケースも少なくありません。実際に慢性疲労症候群と診断されると、現状では、薬による治療が中心となります。

 国内に患者数は30万人ほどいると推計されていますが、「怠け病」との偏見に苦しみ、無理をして病気を悪化させる人も多いのだとか。

 症状に心あたりのある人は、「慢性疲労外来」や「疲労外来」を掲げた病院またはクリニックで受診しましょう。また、一般の内科などでも、ホームページで診療範囲を確認して「慢性疲労症候群」のキーワードが載っていれば安心。この病気について理解のある医師に診てもらうことが肝心です。

(文/相川英里子)

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