ノーベル平和賞は「ブラック企業大賞」!? いい迷惑!な受賞者も

デイリーニュースオンライン

 極論です。ノーベル平和賞って、ある意味「ブラック企業大賞」に似ていませんか?

 一部の「市民団体」が「日本国憲法9条にノーベル平和賞を!」などという活動をしていた(注1)本年度のノーベル平和賞。当然、誰が授賞式に出るのか分らない憲法条文ではなく、受賞したのはパキスタンの人権運動家マララ・ユサフザイさん(17)。武装勢力タリバンによる女性の抑圧を批判し、2年前には銃撃を受けて瀕死の重傷を負いながらも信念を曲げなかった不屈の少女だ。受賞資格は十分だが、問題はその後だ。早速パキスタンのイスラム武装勢力が批判声明を出し、マララさんに対して「イスラムの敵には鋭いナイフを用意している」と攻撃を続けることを示唆した。

 そもそもノーベル賞のなかでも、政治的思惑に左右されることで評価が分かれるのが平和賞(注2)。1991年アウンサン・スー・チー、2000年 金大中、2007年アル・ゴア、2009年バラク・オバマ、2010年 劉暁波……母国(の政治体制の是非はおいて)で政治犯だったり、あからさまな受賞工作があったり。1990年以降だけを見ても、何やらいわくつきの顔ぶれが並ぶ。また仮に弾圧を受けている人、人権を侵害されている人を世界に知らしめるための授賞があったとしても、その判断は西欧的価値観によって為される。

「ノーベル平和賞」は「ブラック企業大賞」に酷似!?

 あまりにスケールの違う話だが、わが国に「ブラック企業大賞」という賞がある。従業員に対して過労やサービス残業を強いたり、パワハラや偽装請負、各種の差別を行ったり等を問題視されている企業、つまりブラック企業のトップを決めるという企画。毎年、名前を挙げられた企業を巡って論争が巻き起こることでも有名だ。

 政治的意図が濃厚な場合のノーベル平和賞もブラック企業大賞も、問題の存在、その背景や社会構造の欠陥を知らしめるのが授賞目的だということは分かる。「授賞によって社会問題化、国際問題化することで、少しでも状況を改善したい」という意図は。しかし「ブラック企業だ!」という指摘を受けた企業の従業員は、明日から待遇が変わるのだろうか? 告発する側は発表したことで仕事を終えるが、現場にいる人間の闘いが終わることはない。今回、マララさんを平和賞にノミネートした際にも、「17歳の少女にすさまじい重荷を背負わせることになる」(注3)という慎重論が出たのも当然だ。

 むろん問題の所在が分かったことで、具体的な救援や救済が集まる可能性もある。事実、マララさんの元には、かなりの資金援助の申し出が来ているという。しかし、彼女の命を守ってくれるものではない。世界に喧伝されるノーベル平和賞を得ることで、受賞者にふりかかる運命の過酷さに、ノーベル賞委員会と世界中のメディアはもっと敏感であるべきだろう。ブラック企業の社員は最終的には「辞める」という選択肢があるが、平和賞受賞によって貼りついたレッテルは剥がれることはない。

 イスラム武装勢力や中華人民共和国は、やはりワタミだのヤマダ電機だの(注4)より、はるかに強大なのだから。

(注1)憲法9条にノーベル賞を!運動…一部に高揚している人がいて、一部に「アホか」と批判している人もいる。
(注2)微妙な平和賞…だからか本命の科学系の賞に到底、手が届かない国からも受賞者が出ている。
(注3)「17歳の少女にすさまじい重荷を背負わせることになる」…NRK(ノルウェー国営放送)報道。
(注4)ワタミ、ヤマダ電機…近年のブラック企業大賞受賞者

著者プロフィール

田中ねぃ

コンテンツプロデューサー

田中ねぃ

東京都出身。早大卒後、新潮社入社。『週刊新潮』『FOCUS』を経て、現在『コミック&プロデュース事業部』部長。本業以外にプロレス、アニメ、アイドル、特撮、TV、映画などサブカルチャーに造詣が深い。DMMニュースではニュースとカルチャーを絡めたコラムを連載中。愛称は田中‟ダスティ

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