「なぜコメントを使わないのか」取材者から批判を浴びて…|事件リポーター阿部祐二コラム

デイリーニュースオンライン

 DMMニュースをご覧の皆さん、こんにちは。阿部祐二です。

 今週もたくさんの現場に、足を運ばせていただきました。こうも現場に足を運んでいると、同じ場所に出向くこともしばしばあります。今日はそんな現場でのエピソードと、業界で囁かれているスタッフとの確執、さらには現場取材後の楽しみもお話したいと思います。

スタッフとの激突は日常茶飯事

「阿部さん、この前の放送で私のコメントが使われてなかったんですけど、なんでですか? ちゃんと取材に答えたんだから使ってくださいよ」

 情報番組のリポーターという仕事上、事件や災害の現場だけでなく、全国各地のイベント会場や飲食店、さらには街ゆく人々まで取材させていただきます。皆さんが善意でコメントを寄せてくれて、それで僕達の番組が成り立つ。

 その善意が無視されたらどうでしょうか。取材を受けてくれた方で放送を楽しみにしていたのに、自分がまったく映っていなかったら……そりゃムカつくでしょう。

 冒頭のような〝クレーム〟が僕の元に届くことは結構あるんです。

 その度に申し訳ないという思いと、被取材者に対する配慮がまったく足りない我々取材チームの姿勢に反省する限りです。

 もし番組の時間の関係で、あるいは内容上使えないということであれば、ナレーションのバックにして顔だけ露出させる方法だってあると思います。

囁かれるスタッフとの不仲説

 とくに、こうした心ない編集をするのは良くないと思いますし、取材現場で彼らと一緒になると、もう既に多くの人に話を聞いているのにも関わらず、「念の為にもう少し(コメントを)取ってもらっていいですか?」と僕にいう。必要以上に材料を集めようとする。その結果、過剰取材になり、放送に乗せられない方が増えるのです。

 僕はいつもスタッフに「取材した人はなるべく使ってほしい」と伝えます。なかには、

「僕は良い番組を作るためだったら冷酷にもなります。必要ないものはバッサリいきますよ」と反論をするのもいますが、それは的を外れた論。被取材者をモノ扱いしているようでは、良い番組なんて作れません。

 僕が取材した方々を大事にするのは、彼らは視聴者であり、つまりは我々の味方でもあるということを強く意識しているからです。モノ扱いしていいような対象ではないのです。

 最近は若いディレクターと仕事をする機会が多く、このようなぶつかり合いが増えています。だからというわけではないのですが、僕は出張先で彼らとは一緒に食事を取らない。食事は必ず一人と決めています。その風景を見た他局の人に「阿部はスタッフと衝突しすぎてハブられてる」なんていう噂を流されたこともあります。

現場取材のあとに訪れるもうひとつの現場

 なぜ、〝一人飯〟なのか?

 ここでいう食事は、取材が終わった後のオフのことを指すのですが、スタッフさん達をリスペクトしているが一緒に食べると、仕事の話になるので心が休めない。僕は仕事から離れ、その土地の人たちと触れ合う機会を求めて一人飯に行くのです。

 先日、僕の舌と心を満足させてくれたのが、島根県松江市の「皆美」さん。東京・銀座にも支店のある有名店です。女将さんにオススメを聞いたところ、「鯛めしです」とすぐの返答。普通、鯛めしというと、鯛をまるごと一匹、お釜の中に入れてお米と一緒に炊き込んだもの。あるいは、鯛の刺身が乗った海鮮丼のようなものを想像されるでしょう。でも、ここは違うんです。

 ご飯の上にそぼろにした鯛の身が乗っていて、時計回りに裏ごしした卵の白身、海苔、大根おろし、刻みネギ、裏ごしした卵の黄身がキレイに敷き詰められている。言うならば、6色ご飯なんです。これは箸を入れるのがもったいないな。そう思いながらも鯛のそぼろと卵あたりをイッキにかきこんでやろうかと思ったら、「ちょっと待って」と女将さん。「だし汁をかけてお茶漬けのようにして食べてください」という。中央に鎮座したわさびをめがけてだし汁を投下します。だし汁によりキレイに並んだ6色が濁った色になるのですが、口の中で新たなハーモニーが生まれました。

 ご飯をベースに鯛と黄身、鯛とネギ、あるいは鯛と大根おろしと海苔のように、だし汁を仲介として何パターンもの〝カップル〟が口の中で成立。このだし汁は名仲人さんですよ。口にごはんを運ぶたび、いろんな味が楽しめるんですね、これが。あまりの美味しさに東京に帰っても必ず銀座店に足を運ぼう、そう思ったほどです。この時は、女将さんから松江の歴史や地元の旬の食材の話など、色々な話を聞きながらの楽しい食事でした。一人飯は、こうした会話を楽しむことができるのも好きなところなんですよ。

 いやぁ、至福の時(笑)。

著者プロフィール

テレビリポーター

阿部祐二

1958年生まれ。東京都板橋区出身。阿部ちゃんの愛称で親しまれ、テレビ番組『スッキリ!!』のリポーターや俳優として活躍中。

「「なぜコメントを使わないのか」取材者から批判を浴びて…|事件リポーター阿部祐二コラム」のページです。デイリーニュースオンラインは、グルメ連載などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧