【戦極MCバトル優勝者インタビュー】晋平太が語るヒップホップの未来

デイリーニュースオンライン

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「高校生RAP選手権」がBSで放送され、第一線で活躍するMCのZeebraは6月に自身が代表を務めるレーベル「GRAND MASTER」を発足。8月に公開された園子温監督映画「TOKYO TRIBE」にも現役のMCが数々登場するなど、一昔前まではアングラな世界と認識されていた日本のヒップホップシーンが今、さまざまな方面で盛り上がっている。

 10月19日、ラップのフリースタイル(MCバトル)の頂点を決める「戦極MCバトル10章」が渋谷SOUND MUSEUM VISIONで開催された。

 10章という節目を迎えた今回の大会を最後に「しばらく戦極を行わない」と主催者のMC正社員が宣言するなど注目度の高かった本大会は、GOLBYやACEなど数々の大会で勝利してきた強者揃い。そのなかで優勝を勝ち取ったのは、ヒップホップ界のベテランでありMCバトル最大の大会「UMB」(アルティメット・エムシー・バトル)の司会を務める晋平太。

 大会終了後、会場全体が歓喜のムードに包まれるなか、さっそく晋平太にインタビューを行った。

戦極10章チャンピオン晋平太「相手の素を引き出す戦いがしたい」

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――今回は、優勝おめでとうございます。大会を終えたばかりですが、今の心境はいかがですか?

晋平太 ありがとうございます。今回は、バトルしてみたかったやつ全員と戦うことができたので、とにかく楽しかったです。でも、やっぱり疲れましたね(笑)。

――全力を出し切ったという印象でした。いつもより規模が大きいですし、節目の大会ということで注目度も高く、観客もかなり湧いていましたが、緊張はされましたか?

晋平太 もともと緊張しないたちなので、それは大丈夫でしたが、「戦極1章」のチャンピオンという実績とUMB司会という立場上、若いやつらには負けられないというプレッシャーがありました。

――今回一回戦ではGIL、二回戦ではTK da 黒ぶち、三回戦ではNAIKA MC、四回戦ではACE、そして決勝で GOLBYとバトルを繰り広げましたが、手ごわかったり印象に残った相手はいますか?

晋平太 みんな手ごわかったし、すごく記憶に残っていますが、ACEは全力で来てくれたので……一瞬負けたかな、と思いました。

――ACEは独特のフロー(ラップにおける流れや言い回しのこと)や巧みな技術で支持を集めていますが、晋平太さんとのバトルのときは、それらを全て捨てて生身で戦っているなという感じがしました。

晋平太 フローやライム(韻を踏むこと)など技術がうまいのは当然として、僕はそういった小手先の技術だけでなく、相手の素を引き出してバトルをしたいなと思うんです。さらに僕はベテランと言われる層なので、そういう意味ではやりにくい相手かもしれませんね。

対戦相手への愛がもたらした優勝

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――そもそも、今回の優勝の理由を自己分析するとなんだと思いますか?

晋平太 うーん、わからないですけど、僕は本当にMCバトルが好きなので、皆さんに楽しんでいることが伝わっているんだと思います。恥ずかしいですけど、バトル中は楽しすぎて本当にいつもニヤニヤしてしまうんですよ(笑)。

 MCバトルや対戦相手への愛が伝わるようなバトルをしたいといつも思っているので、それが受け入れてもらえているのであれば嬉しいですね。

――本当に、晋平太さんのバトルは本当に愛を感じる試合ばかりでした。どのMCも晋平太さんをリスペクトしているのが全てのバトルから伝わってきましたし、晋平太さんも愛を持って相手にぶつかっているのがよくわかりました。

晋平太 バトルってどうしても悪口のぶつけあいになってしまうんですよね。UMBでも全国32カ所を回っているので、それをすごく感じていて。UMBの司会を通して今のリアルなヒップホップシーンを見てきて、技術も可能性もある若い子がすごく増えていると感じます。

 今回大会に参加したのも、MC正社員さんが熱心に誘ってくれたからというのももちろんですが、バトルは単なるけなし合いの勝ち負けだけじゃなくて、それ以上のことをもっと伝えられる手段だということをみんなに伝えたかったからなんです。

 素の相手を引き出して、こっちも愛を持ってぶつかっていけば、バトルでの勝利が単なる売名ってだけじゃなく、その先にMCバトルの可能性を見出してくれるんじゃないかと考えていて、そういう積み重ねが日本のヒップホップシーンが変えるんじゃないかって思っているんです。

――なるほど。晋平太さんのようなベテランが積極的にバトルに出ることで、もっとヒップホップシーンが盛り上がればいいですよね。

晋平太 そうですね。UMBの存在が大きいのであまりバトルに出る時間を確保するのは難しいですが、またスケジュールが合えば出たいなと思います。

 でも、基本的には若い子がどんどん出てきて活躍できるような場を整えて、育ててあげたいという気持ちが強いですね。

――また晋平太さんがバトルに出るのを楽しみにしています! 今回でしばらく開催がないという戦極ですが、晋平太さんにとって戦極ってどんな大会ですか?

晋平太 戦極は……ラブがあって、それがすごく伝わってくる大会ですね。もちろんどの大会でもそうなんですが、MC正社員さんのバトルに対するラブはすごく大きくて、それに共感する人が連鎖していって大会をどんどん良くしていっているなと思います。

――今後は若い子を育てていきたいということですが、晋平太さん自身はどんな活動に注力していく予定ですか?

晋平太 UMB以外だと、今年の年末にMCバトル出演者のコンピレーションアルバムを出す予定です。自分の音源のリリースも少しずつやっていけたらと。こうやってみんなが協力しあって音源を出したり、イベントをやったりということでヒップホップシーンが盛り上がっていくんじゃないですかね。

ヒップホップのフリースタイルシーンをリードする男、晋平太の素顔

 インタビュー中にも、バトルで下した相手や出場MCが次々と晋平太に祝福の声をかけていた。この人望の厚さも、彼が愛を持って相手に接しているからこそ生まれるものなのだろう。

 「カッコよく撮ってくださいね」とはにかむ晋平太の表情からは、優勝に対する驕りは一切なく、ただヒップホップに対する愛だけがあったように思う。ヒップホップの未来を育てていくのは晋平太のような男なのかもしれない。彼のようにヒップホップを愛するMCがもっと増えてほしいと切に願う。

 晋平太が司会を務めるUMBは、11月2日、新宿ロフトにて東京予選が開催される。こちらも要チェックだ。

UMB 2014 東京予選
  • 開催日時:11月2日(日)OPEN 17:00 START 18:00
  • 会場:新宿ロフト
  • チケット料金:当日 2500円、フライヤー持参またはアプリのクーポンで2000円(税込・ドリンク代別)

(取材・文・写真/DMMニュース編集部)

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