山本太郎が朝日新聞を一定評価「吉田調書問題から愛国ポルノ」を語る

デイリーニュースオンライン

「表現者としての意思、意地を見せて欲しいですね」
「表現者としての意思、意地を見せて欲しいですね」

 反原発を掲げ、参院選で見事当選。世の中をざわつかせた山本太郎議員が国会議員になって1年が経過した。自他共に認める〝異端議員〟の目に、日本はどう映っているのか――今回は報道、ジャーナリズムの在り方について持論を熱く語ってもらった。

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「慰安婦」報道や、福島第一原子力発電所の吉田昌郎元所長の証言をまとめたいわゆる「吉田調書」にまつわる報道で誤報を認めた朝日新聞に、厳しい批判が相次いでいます。はっきり言っちゃうと、過去に出した記事について訂正を出したというのは素晴らしいと思うんです。

「誤報よりも報道が萎縮していくことのほうが怖い」

 遅すぎた感はあるにせよ、会社内に自浄作用があるんだな、と受け止めました。変わっていかなきゃいけないという意識があるんでしょう。会社内でいろんな勢力がある中で、間違いに対しては訂正していこうっていう力が勝ったんだと。「吉田調書」にしても、もともと公開しない話でしたよね。

 それを公開させたということに対してはプラスだったんじゃないかと思いますよ。扱い方に問題があったとしても、キッカケを作ったというのは大きかった。

 それを色んなメデイアがバッシングしていましたが、ドヤ顔の産経や読売は自分たちが過去に垂れ流してきた誤報に対して訂正記事は出してるんですかって。バッシングぶりは見ていて怖いですね。この先、特定秘密保護法など運用が始まったら? 報道がより萎縮していく事を合わせて考えたらもっと怖いです(笑)。

 今回の一件に関して、すべての報道に携わっている人たちに言いたいのは、これで萎縮しないでほしいということ。デッドボールすれすれでいいじゃないですか。じゃないとスクープなんて取れないでしょ。間違いがあれば正す。それでいいじゃないですか。萎縮してしまっては何も発信できなくなる。そうなると政府の公式発表しか見れなくなる。今の世の中の流れとして、それが一番危ない。

「戦争は資本主義社会が頭うちになる度に行われてきた」

 集団的自衛権が閣議決定されて、どこまでも行けるようにしようという政権の意図を感じます。武器の輸出の規制緩和が行われたのも、単純に金儲けの為です。今までほぼ防衛省のみだった顧客を世界に拡げる為。国内の防衛産業に関わる企業への大サービスです。イージス艦1隻に国内企業2500社も参加しているんですもの。マーケットを拡げて儲かって、他国との緊張を煽ればもっと儲かって。簡単な商売ですね。そうなって行けば当然、皆さんの税金はもっと増えますよ、防衛力を上げる為に! って。

 最悪、一歩間違えて戦争になっても、笑いが止まらないのは武器関連企業と利害関係のある政治家、官僚ですかね。

 その入り口に立たされている今、メディアが警鐘を鳴らせず、人々が危機感を共有できない状態が続くと、数年のうちに我が国が戦争に巻き込まれるリアルな状況を目にする事が出来るかもかも知れません、嫌ですけど。

 安倍政権が猛烈なスピードで、この2年間でやってきたことを見れば、何が起こっても不思議じゃない。歴史を見ても、戦争は資本主義社会が頭うちになる度に行われてきた、とわかる事ですもんね。安倍さんが総理じゃなくなっても、大企業・大資本側の利害関係者が多数派である限り、戦争でリセット、と言う究極の選択肢は残り続けるでしょうね。いい迷惑ですよね。だから何とかしたいんです。皆の力で。

「嫌韓、嫌中、にハマってる人は、ある意味、政治の被害者」

 アジア諸国叩きの書籍が売れるって状況もわからなくはないです。この国に生きる人の多くが生き辛さや疎外感を抱えてる様に感じます。生きる中で、自身のバランスを保つ為に、叩きやすい相手を探した結果、他民族へのバッシングに繋がってる側面もあるかも知れません。

 行き詰まった国の無能な政治家がナショナリズムを煽って支持されるって、世界中にある事で。日本国内で嫌韓、嫌中、にハマってる人たちは、ある意味、今の政治の被害者でもある、と思います。

 ひとり一人が必要とされる社会を政治が作っていく気概を持たなきゃいけないのに、必要とされないお前が悪い。生き辛いのはお前のせいだ。自己責任で生きろ。と言う社会を政治主導で加速させてきた。その被害者なのではないか。

 人々のやり場のない思いをぶつける先が、嫌中、嫌韓に向かう事を、誰が一番歓迎するか? 皆さんの首を締めるような労働環境を作り出し、この国の富を大企業・大資本に大胆な規制緩和で切り売りする、愛国者のフリをした政治家、官僚、企業家、資本家たちですよ。

 人々の不満や不信感や、変革を求める矛先が政治に向かわないようにするツールの1つにされているでしょうね。

 そういった類いの書籍を作ってるみなさんは商売でやられてるだけですよね。雑誌、書籍が売れるものに節操なく乗っかるというのは当り前の話。ちょっと悲しいですけど。商売ですから。

 でも、人の命にかかわる可能性があるモノに対して商業主義に乗っかってやっていくというのは……ホンマに腹立つな。

 TPPとか脱被曝とか、命に関わることまでカネの力で押し切るようなジャーナリズムだったらなくなっていいですよ。人々の生活を根底から引っ繰り返すようなことについては、もうちょっと、せめてその危険性という部分を問題提起として入れて頂きたい。

 紙面の1行、使う映像のほんの数秒でいいんです。表現者としての意思、意地を見せて欲しいですね。

著者プロフィール

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参議院議員

山本太郎

1974年、兵庫県宝塚市生まれ。1990年高校1年生時に『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』の「ダンス甲子園」に出場し、芸能界入り。1991年、映画『代打教師 秋葉、真剣です!』で俳優デビュー。『光の雨』、『GO』で2001年度日本映画批評家大賞助演男優賞を、『MOONCHILD』、『ゲロッパ』、『精霊流し』で2003年度ブルーリボン賞助演男優賞を受賞。2011年3月11日に発生した東日本大震災の後、4月より反原発活動を開始。2013年7月、参議院議員選挙に東京選挙区より出馬、666,684票(11.8%)を得て当選。内閣委員会に所属。現在、原発問題、被曝問題、子どもと放射能、TPP問題、労働問題、社会保障制度改革、表現の自由に関わる問題等に特に深く関わり活動中。

(取材・文/DMMニュース編集部)

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