リクルートや東京電力で暗躍…“守護神”石原俊介という男

デイリーニュースオンライン

マスコミ、捜査関係者、東京電力など大企業の総務担当者がこぞって集まった“情報交差点”だった
マスコミ、捜査関係者、東京電力など大企業の総務担当者がこぞって集まった“情報交差点”だった

「情報の世界」で、「この人を知らないとモグリ」とまで言われた著名人が、2013年4月に亡くなった。石原俊介、享年72――。

 マスメディアや捜査機関、そして暴力団など反社会的勢力(反社)にも太いパイプのある元共産党員。『現代産業情報』という発行部数が1000部に満たない情報誌の発行人で、何かの資格や地位を持つわけでもないこの人を、リクルートや東京電力といった大企業が最期まで遇し、少なくない金額の顧問料を支払い続けた。

 石原氏と20年近く情報交換を続け、間近にその人となりを見てきた私は、11月23日、『黒幕』(小学館)というタイトルで、石原氏の封印された半生を追ったノンフィクションを上梓した。

「高級マンションがいくつも買えた」

 石原氏の得意分野は、政治経済に今後起こるであろうことの「先読み」であり、発生し、進行している事件の「予測」である。

 企業の総務・広報担当者、テレビ・新聞・雑誌の記者、捜査当局の情報係にとって、石原氏の情報は欠かせないもので、だからみんなが付き合い、石原氏は「情報交差点」となっていった。

「黒幕」とは、「事件・事象の背後にいて、情報力をもとに、その着地点を予測。時に流れをリードする“裏”の人」という意味である。

 決して、表に出なかった。

 しかし、40年以上、情報戦の最前線にいて、リクルート事件、イトマン事件、金丸脱税事件、ブルネイ王室AV女優接待事件、総会屋利益供与事件、芸能界脱税事件、武富士事件、日本振興銀行事件と、過去の政界や大企業や反社が絡む主だった事件には必ず関与、存在感を見せつけた。

 多くの人が、ネットやスマホの情報洪水にいて、取捨選択に困っているなか、誰もが認めるプロの情報職人は、情報をどう集め、生かしていったのか。

 石原氏が強調したのは、まず本や雑誌、新聞を徹底的に読むこと。次に考え抜くこと。そして人に会うことだった。

 誰にでも想像がつくことかも知れないが、それを不断の努力で継続するのは容易ではないし、時間もカネもかかる。

 人と会うための主戦場を、石原氏は銀座に設定していた。そこで、顧問先企業の担当者と会い、暴力団・右翼などと密会、日本版CIAの内閣情報調査室や警視庁捜査員らと情報交換、記者や編集者と交流した。

「先読み」も「予測」もそうした作業のなかから紡ぎ出されたが、自腹を基本としていたために、銀座に落としたカネはハンパではなく「高級マンションが幾つも買えた」という表現は決してオーバーなものではない。

 そうして生涯現役を貫き、大企業の「守護神」であり続けた石原氏の意識とノウハウと技を知り、情報社会を生き抜く知恵にしていただければ幸いである。

伊藤博敏
ジャーナリスト。1955年福岡県生まれ。東洋大学文学部哲学科卒業。編集プロダクション勤務を経て、1984年よりフリーに。経済事件などの圧倒的な取材力では定評がある。『「欲望資本主義」に憑かれた男たち 「モラルなき利益至上主義」に蝕まれる日本』(講談社)、『許永中「追跡15年」全データ』(小学館)、『鳩山一族 誰も書かなかったその内幕』(彩図社)など著書多数
(Photo by shibainu via flicker)
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