GDP換算1.6%「中国人観光客」に依存する韓国観光業界の矛盾

デイリーニュースオンライン

ソウル随一の繁華街にも中国人観光客歓迎の文字が
ソウル随一の繁華街にも中国人観光客歓迎の文字が

 日本を訪れた外国人観光客数が過去史上最多を記録した2014年。その数は、なんと1100万9000人(1~10月期)。衆議院解散に踏み切った直後の安部総理が、各局のTV番組に出演し、ことあるごとに成果として話題にしたのが、この訪日外国人観光客数だった。原発など震災の影響を考慮して考えるのであれば、たしかにあっぱれな数字である。

 ところで、アジアには日本に負けず劣らず、観光客誘致に力を注ぐ国がある。常に日本にライバル心を燃やす国・大韓民国である。韓国観光公社の発表によると、1~9月に韓国を訪れた外国人観光客数は、1068万67人。前年同期比で15.4%増加となった。その内訳の詳細を見ると実に興味深い点がうかがえる。まず、韓国を訪れた日本人の数は15.7%減の約174万人。逆にロシア、タイなどの国の観光客数が、それぞれ26.4%、23.7%増となっており、もっとも多いのが中国人観光客となった。その数は468万3415人で、前年比36.5%増という破格の伸び率。加えて、年末までには、600万人を超す見通しだそうだ。

中国人のケツの毛まで毟り取る済州島のカジノ

 いまや、韓国にとって貴重なお客さんとなった中国人だが、その中国人の身にトラブルが急増している。例えば、中国公安が「済州島が新しい賭博犯罪の中心地となりつつある」とし、自国民の出国を取り締まるかもしれない珍事件が起きつつある。中国人観光客にとって、済州島は韓国3大人気のスポットのひとつ。日本で言うところの、沖縄と言えば分かりやすいだろうか。気候も暖かく、海産物がおいしい。その済州島について、中国公安が発行する『人民公安報』には、次のような内容が書かれていた。

済州島はミャンマーに並ぶ犯罪賭博の中心地。外国人観光客の80%以上が中国人で、その80%がギャンブルに興じる。そしてその人々は、80%以上のお金を失う

 済州島には外国人に開放されたカジノがある。それ自体は違法ではない。ただ、中国公安によれば、韓国のカジノ企業関係者が中国の裕福層に航空券、ホテル、通訳、性接待までつけた“オールインクルーシブサービス”を提供することで、誘いに打ち勝つことができない被害者が急増しているのだという。「飲む、打つ、買う」のフルコースを用意され、ケツの毛まで抜かれる事態に追い込まれるというのだ。

 自業自得の面があるとも言えなくないが、中国当局が警鐘を鳴らすあたり、かなり大きな問題であることはほぼ間違いない。ちなみに、中国本土では賭博は違法である。済州島の被害を考慮して、海外での賭博についても規制を強める方針にあると言われている。

 済州島のトラブルは主に男性に関するものだが、一方で韓国に旅行をする中国人女性たちもトラブルに巻き込まれている。といのも、韓国旅行の人気のひとつに整形手術がある。中国に戻った際にパスポートと顔が違うために、入管審査で止められるという事態が頻発しているというのだ。

 そんな中国人を取り巻くトラブルなんてなんのその。韓国の地方自治体やサービス産業では、中国人観光客をいかに誘致できるかに大きな力が注がれている。最近では、中国の運転免許所を持っていれば、レンタカーの運転を許可するという法案まで出てきた。済州島に限って言えば、すでに法案が通過した状態だ。ただ、誘致合戦が過熱し、外国人に対する規制が何の対策もなしに緩和され続ければ、新たなトラブルが生まれるのは必至。韓国では現在、レンタカーの運転許可を巡って、推進派と規制派のあいだで世論がまっぷたつに割れている状態にある。

中国人観光客は気性が荒く、声も大きい

 ところで、中国人観光客の急激な増加で、韓国社会はどう変わったのか。テレビ番組『TV朝鮮ニュース』では、中国人観光客が1年に韓国で使うお金は、日本円にして約1.4兆円という試算を出した。また、全体的な経済効果に換算すると2.3兆円で、これは韓国GDPの1.6%に相当する。

 まさに、現在の韓国にとっては中国人様々なはずなのだが……。もともと、世界で唯一チャイナタウンがない国が韓国である。両国国民の気質は合わないのだろうか。中国人観光客の爆発的な増加に、不満を表す韓国人も少なくない。ある韓国人記者は話す。

「お金を使ってくれるのはありがたいですが、日本人観光客に比べるとマナーも悪いし、気性が荒い。それに、声も大きい。飲食店などではクレームを言いだすと、納得するまでひきさがらないという話はよく聞きます。困っている韓国人も実は少なくない。韓国人も海外旅行者が増えていますが、外国で認められる為にはお金だけではだめなんだと、逆に身が引き締まる思いです」

 正直、韓国人も中国人も声の大きさは変わらない気がしなくもないのだが……。この記者以外にも、タクシーの運転主や飲食店のおばさんたちにも話を聞いていみたが、一様に「中国人は……」という渋い反応を見せた。念の為確認してみたが、その手の感情は日本人やタイ人などには抱かないらしい。

 韓国で中国人観光客がトラブルを犯したという報道はほとんど皆無である。それにもかかわらず、韓国人の中には反中国感情が芽吹きはじめている。中国人観光客誘致で得られる爆大な利益の獲得に熱を挙げる政府と、中国人に対する韓国国民感情の不一致。それは、現代韓国を象徴するひとつの縮図とも言えそうだ。

(取材・文/中川武司)

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