「福岡にこれ以上若者を取られないために...」佐賀市、新卒者に便利なあるモノを提供へ
九州一の大都市・福岡市からJRで約54キロ離れていて、通勤圏としては微妙な位置にある佐賀市。2015年1月7日の西日本新聞によると、佐賀大・大学院の2013年度の卒業生で就職した1089人のうち約320人が福岡県内に就職したという。
電車で職場に通うサラリーマンにとって、距離や車内の混み具合は切実な問題だ。東京郊外だと長距離通勤者も珍しくないが、それでも自宅から50キロ以上離れていると体力的にきつくなる。身軽な単身者なら「職場の近くに部屋を探そう」と考えてもおかしくない。
若者の流出を止めるべく、佐賀市はある策を打ち出した。秀島敏行同市長は6日の記者会見で、市外へ通勤する新卒者に対し、JR特急定期券の補助を2015年度に始める考えを明らかにした。
「佐賀には雇用の場が非常に限られていて、(新卒者は)福岡の都市圏にかなり出ていっている。福岡と佐賀は距離的に近くなり特急等の数も増えている。(佐賀で)家族と一緒に生活をしながら、福岡に行けるんじゃないかという思いから、特急を使って通勤してもらうことができないだろうかと考えた」JR佐賀駅から博多駅方面へ向かう上り列車は平日58本ある。そのうち特急は45本で全て博多行。新鳥栖駅で九州新幹線に乗り換えるという手もあるが、所要時間は大差なく、1カ月の定期代は在来線特急の方が約9000円も安い。
佐賀駅7時56分発の特急かもめに乗ると39分で博多駅に着く。普通電車と比べれば27分の短縮だ。
佐賀駅(tosimisiさん撮影、Flickrより)
通常、企業が出す通勤手当は普通運賃のみ。これから福岡市内への就職を予定している佐賀市の若者から、「特急代を出してくれるなら、親元で暮らし続けてもいい」と考える人が出てきてもおかしくない。
なお通勤先は福岡市に限らず、久留米市や鳥栖市、佐世保市なども含まれる。
自治体による特急券補助はなにも佐賀市だけではない。
佐賀市や久留米市よりもさらに南に位置する福岡県筑後市は、転入者が市内の新幹線駅から通勤・通学する場合、1カ月当たり1万円の給付を行っている。鹿児島県薩摩川内市も1~2万円を補助する。
通勤者限定になるが、福岡県久留米市や栃木県那須塩原市、長野県佐久市も似たような補助制度を設けている。元からいる住民より転入者に手厚いところは、どこかMNP(ナンバーポータビリティ)に通ずるところがあるような......。
自治体の立場から言えば、「地元で暮らし、地元の企業で働いてもらう」ことがベストには違いない。しかし現実問題、その実現はかなり難しい。ならば、せめて「住まい」だけでも地元に――佐賀市などの試みは、その切実さを感じさせる。