住宅エコポイント再開で関連企業の反撃が始まる

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住宅エコポイント再開の影響は!?
住宅エコポイント再開の影響は!?

 政府は総額3.5兆円の緊急経済対策をとりまとめた。そのための補正予算も閣議決定され、あとは1月中に開催される国会での承認を待つばかりとなっている。

 経済対策の目的は、消費増税によって冷え込んだ個人消費や低迷する地方景気の回復だ。具体的には、地域振興券(その地域で使える商品券)の発行や中小企業支援、災害復旧・復興などが中心である。

 今回、注目したいのはエコ住宅の購入やリフォームの際に付与される「住宅エコポイント」の再開。住宅エコポイント制度は、2010年にエコ住宅の新築やリフォームを促進するために作られた制度で、エコ住宅の新築なら1戸あたり30万ポイント、リフォームでも工事の内容に応じて最大30万ポイントが付与される。付与されたポイントは、地域産品や商品券、プリペイドカードなどに交換可能だ(1ポイント=1円相当)。

 同じくエコ家電の販促を目的とした「家電エコポイント」とあわせて、記憶している人も多いだろう。今回は、住宅版のエコポイントが再開されるわけだ。これから建てる住宅のほか、完成済みの新築住宅の購入も対象になる。現在は、地方の中小デベロッパーならともかく、住宅大手が販売する住宅は何かしらの「エコ」を売りにしている住宅が大半を占めており、これから家を買おうと思っている人の多くが対象になると考えていい。

 また、持ち家だけでなく借家のリフォームも同制度の対象。窓や外壁、屋根、床の断熱改修のほかに、バリアフリーの工事、太陽光発電の利用、節水トイレやエコ給湯器設置などの各リフォームに対して、3,000~60,000ポイントが付与される。

 2014年度の補正予算案では800億円程度の予算が確保された。一見すると、「なんだ800億円程度か、大したことないな」と思うだろう。

 しかし、前回の住宅エコポイントでは、当初予算の1000億円が制度の期限を待たずになくなり、追加に次ぐ追加で結局は4000億円程度まで膨らんだ。今回も、利用状況によっては予算が増額される可能性がある。

 また、当初予算額が大した規模でないことは確かだが、リフォームを担当する企業にはポイントの数倍~数十倍の増収効果が期待できる。例えば、窓の断熱改修には窓の枚数や面積によって3,000~20,000ポイントが付与されるが、断熱改修にかかる費用は数万~数十万円にのぼる。また、住宅をリフォームする際には、期間をわけて何回も工事を重ねるより一度で済ませてしまいたいと思うのが心情だろう。付与されたポイントは追加工事にも利用できるから、ポイントの対象となる工事以外のリフォームも増加するはずだ。

住宅エコポイントが住宅購入やリフォームの動機付けに

 では、今回の住宅エコポイントの再開がハウスメーカーや住宅設備会社の業績や株価にどう影響しそうか。まず、前回の住宅エコポイントが行われた期間の大手ハウスメーカー3社(積水ハウス、ダイワハウス、住友林業)と、住宅設備関連大手3社(LIXILグループ、TOTO、三協立山ホールディングス)の業績推移を見てみよう。

 住宅関連各社は、2007年のサブプライム問題、2008年のリーマン・ショックの影響で業績・株価とも大きく落ち込んでいた。企業によってばらつきはあるものの、住宅エコポイント制度がスタートした2010年頃から回復傾向が鮮明になったと言える。日本経済そのものがリーマンショック後の回復過程にあったとはいえ、住宅エコポイントが消費者の住宅購入やリフォームの動機付けになり、住宅関連各社の業績を押し上げたのは確かだろう。

 2011年3月に発生した東日本大震災の影響で、自動車や電機をはじめ日本企業は大打撃を受け、業績も軒並み大きく落ち込んだ。一方、ここで挙げた住宅関連6社に関しては、震災直後の2012年3月期も子会社統合費用やタイ洪水の悪影響があったLIXIL以外は業績が拡大。これも、住宅エコポイントが要因の1つになっていることは間違いない。

 住宅各社の2015年3月期の業績は、消費増税の影響で苦戦が目立つ。株価は各社まちまちの展開となっているが、新・住宅エコポイントが増税による悪影響からの反撃開始のきっかけになるのではないか。おそらく、今春から住宅エコポイントを前面に押し出した営業攻勢が始まるに違いない。

 そもそも、日本人は「ポイント還元」という言葉が大好きである。今回の経済対策には、住宅ローン「フラット35」の金利優遇が0.3%から0.6%に拡大される案も含まれており、住宅関連各社への追い風が続きそうだ。

新井奈央(あらいなお)
マネーライター。株式評論家・山本伸のアシスタントを務め、株や経済を勉強。その後フリーライターとして活動し、株や為替などを中心に投資全般の執筆を手掛ける。マネー専門のライターとして雑誌や書籍などの執筆で活躍中。そのかたわら、銘柄の紹介にも携わり、夕刊フジの月間株レース「株−1グランプリ」では、出場3度のうち2度、月間チャンピオンの座についている。
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