“つまようじ少年”を生んだユーチューバーブームの功罪

デイリーニュースオンライン

万引きの“実況中継”風動画を続々アップ(写真はYoutubeより)
万引きの“実況中継”風動画を続々アップ(写真はYoutubeより)

 東京都内のスーパーなどで万引きをしたり、商品につまようじを入れる動画をYouTubeに投稿した少年が、1月18日逮捕された。15日にも逮捕状が出されたが、その後少年は逃走。逃走中も動画を投稿するなどして世間を騒がした。

 その中で少年はしきりに犯行動機を「少年法改正のため英雄になる」と訴えていた。

「18、19歳に少年法は適用しなくていい。物事の判断はつく」

 と主張している動画もあるが、1月20日発売の「女性自身」(光文社)では、彼の犯行理由として「誇大自己愛」を上げている。

 記事では、立教大学教授で精神科医の香山リカ氏が、つまようじ少年の人物像を提示。逃亡中も立て続けに動画を投稿していたことから、自分はスゴいということを誇示する「自己愛性人格障害」ではないかと分析。さらに、実生活では、仕事や勉強などで評価を受けていない人物としている。

 果たしてそれだけだろうか?

自作自演!? 過去2回の逮捕歴

 逮捕後に、つまようじ少年は万引きを行っていない可能性が高いと判明した。22本に及ぶ万引き動画の中には、商品を自ら持ち込んでいて、万引きを行ったかのように撮影しているものがあったのだ。さらに、つまようじ映像も自作自演の可能性が出てきた。

 ひょっとしたら彼は、目立ちたいが犯罪をするような度胸はなく、万引きや異物混入は一切していないかもしれない。しかしなぜ、彼は動画を投稿する場所としてYouTubeを選んだのか。

 少年は、2011年と2013年に殺人予告の動画をYouTubeに投稿し、2回逮捕されている。その他、「万引きしてみた」「キセル&万引きしてみた」「営業妨害してみた」「私の保護観察官を公開」などをYouTubeに投稿。彼にとっては昔からなじみがある動画サイトだった。

 そして2014年はYouTubeが一躍脚光を浴びた年でもある。ユーチューバーの存在だ。YouTubeに動画を投稿して、大金を稼ぐ人たちが社会的に認知され、人気者となっていった。

ユーチューバーブームとつまようじ少年

 彼が少年院を出たのは2014年8月のこと。徐々にユーチューバーが脚光を浴びた時期だ。そして12月に万引き動画の定期的な投稿が始まる。元日には登録者数の目標を5000人と宣言している。

 さらに注目すべきは、「彼がユーチューバーとして人気が出る秘訣を理解しているということ」とITジャーナリストはいう。

「短く煽動的な人目を引くタイトル。数分で見られる手軽さ。定期的に新しいネタを更新していく。これらユーチューバーの基本を彼は忠実に守っています」

 とくに12月の投稿からこの傾向が顕著だという。

「彼は非常に視聴者を意識しています。登録者“様”と映像の中で言っており、視聴者への話し方は丁寧な口調。明らかに会員を獲得していくことを意識しています。彼がユーチューバーとして稼ぎ、生活していくことを夢見ていたとしても不思議ではありません」(同シャーナリスト談)

 ユーチューバーには月に数百万も稼ぐ人がいると、しきりにテレビや雑誌などで特集されている。

 彼は生活保護をもらって生活をしているという報道もあり、生活には困っていた形跡が見られる。目立つだけではなく、お金を稼ぐ手段としてYouTubeを選んだとしても不思議ではない。だったら当然、社会復帰も念頭においているので、万引きや異物混入は一切行っていない可能性も高い。

「今の若い人たちの中には、YouTubeは金になると思っている人が多くいます。楽して稼げると。今回の犯行動機には、大金を稼ぐユーチューバーに憧れてという理由もあるかもしれません」(前出のシャーナリスト)

 現在ブームとなっているユーチューバーだが、有名になりさえすればお金を稼げると勘違いしてしまったのが、つまようじ少年なのかもしれない。そして、彼のような存在がまた生まれてしまう危険性もYouTubeにはある。

(取材・文/タナカアツシ)

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