「恋愛はそもそも理不尽で傷つけあうもの」――唯川恵さんインタビュー(2) (2/3ページ)
―― 「合淫」という言葉もそうなのですが、昔の表現は艶やかで妄想がかき立てられますね。
唯川:先ほど「ホト」と「まら」の話が出ましたが、女性器と男性器も調べていくいろいろな言葉があって、それこそ地方によっても、時代によっても違うんですよね。現代のほうが、言葉が溢れていると思うのですが、表現という意味ではかなりしぼられていると感じました。
―― この8編の短編、すべて魅力的な作品なのですが、男性目線でいうと「山姥」をモチーフにした『真白き乳房』が好きでした。
唯川: あ、やっぱりそうなんですね(笑)実は「山姥」が好きという男性が多いんですよ!
―― すごく分かります。主人公の吾助と息子の草太、どちらも感情移入できました。
唯川:なるほど。今の男の子たちの感情は吾助に近いのか(笑)
―― 吾助は草食系なところがあって、山姥の誘惑に対して必死に抵抗しようとするけれど、あの感覚がすごく分かるんです。
唯川:私はあの作品を書いていたとき、男性にとって母親という存在はとても大きくて、その母親を象徴するものが乳房なんだろうなと考えていました。でも、とてもエッチですよね(笑)それとね、「山姥」って日本の代表的な伝承の一つですけれど、実は日本中に散らばっているんですよ。
―― その土地ごとに山姥がいる。でも、それぞれの山姥に違いはあるんですか?
唯川:まず共通している点は人を食べるというところですね。違う点は…ときどき、すごく縁起の良い存在だとされていることもあるんです。そういうのも調べていく中で分かったので、面白かったです。
―― いろいろな解釈があるんですね。でも、この短編集を通して「女性は怖い」という感覚がどこかにありました。
唯川:そう思ってもらえるのは嬉しいです。女性にとって、恋愛は時によって命がけなんですよね。今はそうではないのかもしれないけれど、かつては生き死にをかけた気持ちのやり取りだったのではないかと思うんです。『逢魔』ではそういったところを描きたかった想いはありますね。
―― 確かに「身分違いの恋」というのは、今ではあまりないですね。