4世代連続も…生活保護受給者増につながる負の連鎖

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貧困を根本から解決するのは難しい
貧困を根本から解決するのは難しい

 1995年に100万人を切っていた生活保護受給者数は、2014年には約216万人にまで増加した。京都府のある自治体の生活保護担当者のひとりは、「世間ではアベノミクスの活況といわれるが、景気動向に関係なく生活保護受給申請を行なう人は肌感覚で増えてきている」と話す。

生活保護受給が世襲される理由

 こうした新規申請者のなかには、生活保護世帯(ケース)の2世、3世、最近では4世まで見受けられるという。前出の生活保護担当者は、「政治家、芸能人、医者……子は親の背中をみて育つ。生活保護世帯にも同じことが言える」と生活保護世帯に“世襲”という実態があることに触れる。

 親子で生活保護が“引き継がれる”スキームは実に単純だ。まずある受給者の親が子どもを作ったとしよう。この世帯では子どもが多ければ多いほど生活保護費──保護受給者たちの言葉でいう“給料”が増える。その額は大都市では2万円、他都市では低くても1万円だ。生活扶助費という名の“給料”を増やすために子どもを作る。作れば作るほどカネになるからだ。

 その子どもたちがやがて成人して独立し、就労して自立すれば問題ない。実際、親が生活保護を受給していても、子どもは成人後に自立するパターンのほうが多い。だが一部では、親が受給額を貯蓄にまわす余裕がないゆえに、子に大学や専門学校はおろか高校教育すら受けさせる経済的余裕がない場合もまた、少なくないのだ。

 今の時代、高校教育すら受けていなければ就労の機会は極めて限られる。結果、就労機会を得られなかった子たちもまた生活保護受給に頼ろうとする。10代後半や20代前半で子を生むという連鎖が続いた結果、2世から3世、4世へと短いスパンで受け継がれる。

「生活保護を受給する母子家庭世帯では子沢山の傾向が顕著です。避妊を知らないのか父不在の子がどんどん増えていく。一般のサラリーマンと違いといえば、生めば生むだけ彼女らにとっては収入が増えるのだからやむを得ないが。どこか思うところはある」(神戸市のある自治体の生活保護担当者)

大阪市の受給者のうち7割が九州出身者

 京都市、神戸市とみてきたが大阪市では事情はさらに深刻だ。大阪市西成区で生活保護受給費支給日に幾度となく取材したが、受給者の話す言葉には明らかに九州訛りの言葉が目立つ。

「大阪市では生活保護受給者の約7割が九州出身者といわれている。これは現場にいても肌感覚で感じます。よく大阪市が『生活保護受給率全国ワースト1』とメディアでは騒ぐが、こうした実態はあまり報じられていない」(大阪市生活保護担当者)

 この声を裏付けるかのように、長崎県佐世保市の更生保護施設の職員をしていた男性は筆者に対し、「更生保護施設を出て『大阪市に行く』という者が後を絶たない」と証言する。大阪市の市長部局勤務のある職員は、こうした傾向は何も大阪市が生活保護受給に寛大な措置を取っているのではなく、「大都市ゆえに大勢の人が集まる。その大勢は生活保護受給目的で大阪市にやって来る。地方都市と違いよくも悪しくも生活保護受給を取り巻く環境が整備されていることによる」とその内情を明かす。

大阪都実現後も他都府県から受給者が流入する?

 大阪市西成区、天王寺区に蔓延る生活保護受給者を囲い込む「福祉アパート」にみられる低所得者層をターゲットにした、いわゆる「貧困ビジネス」がそれだ。

 今、大阪市では、橋下徹市長の掛け声の下、生活保護受給率を減らそうと躍起だが、「市長もさすがに『九州からの直近の転居者は生活保護受給させない』とはいえない。こうした問題にメディアは焦点を当てて貰いたい」(同)とこれまでの大阪市の生活保護受給率にのみ焦点を絞ったマスコミの報道姿勢に苦言を呈する。

「それでも生活保護受給の“1世”が他都府県出身でも、2世、3世が大阪市生まれなので“大阪市の話”となってしまう。そこが何とも歯がゆい」(同)

 生活保護世帯の世襲、継続に似た現状とその出身地の傾向、非常にセンシティブな問題だけに大阪市としても、「その時々の市長の方針に沿って淡々と施策を実行する」(同)しかないようだ。

 仮に“大阪都”が実現しても、この問題もまた世襲ならぬ引き継がれることは目に見えていよう。どこで誰が歯止めをかけるのだろうか。そこが大きな課題である。

(取材・文/川村洋)

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