【韓国】猟銃事件で警官殉職も「防弾服不足」という仰天理由

デイリーニュースオンライン

韓国で発生した猟銃乱射事件の現場
韓国で発生した猟銃乱射事件の現場

 去る2月27日、韓国・京畿道華城市の一戸建て住宅で猟銃乱射事件が発生した。原因は金銭トラブル。犯人(75歳)は鉱山開発などの事業に失敗、不動産など100億ウォンの財産を持つ実兄に事業資金の援助を求めたものの断られ、兄夫婦を射殺した。そこへ、通報を受けて駆けつけた華城西部警察署南陽派出所長イ・カンソク警部が犯人に撃たれて死亡した。

 被害者宅には警察に通報した息子の嫁もいたが、事件直後2階から飛び降りて腰を負傷、病院で手当てを受けている。なお、犯人はイ警部を射殺した後、自身も猟銃で自殺、今回の猟銃乱射では合計4人が死亡する惨事となった。

銃乱射事件に武器を持たない交番警官が出動!?

 朝鮮日報によると、当時イ警部は巡査1名と交番から現場に出動、一人で犯人の家に突入したところ、肩を撃たれて死亡したととのこと。しかし、その際にイ警部は防弾チョッキを着用していなかったという。

 韓国では防弾チョッキはスナイパーや機動隊にのみ支給され、一般の警察官は犯人逮捕の行動規定により、現場の状況によって拳銃、警棒、手錠、防剣服、スタンガンなど必要な装備を準備するようにはなっているものの、そうした装備が不足気味で、現場の警官が丸腰(武器を所持していない状態)で出動するケースも少なくないという。

 ある警官によれば、そのように普段はしまってある防剣服でさえ、出動が遅れそうな場合は着ることもなく現場に向かうことさえあるという。なお、この「防剣服」とは刃物による攻撃を防ぐためのもので、銃弾には非力である。

対北朝鮮ゲリラの「機動隊」が優先される事情

 こうした、一般警察官の装備が充分でなく「冷遇」とさえいえる背景には日本とは異なる韓国の警察制度がある。

 日本の警察は各都道府県公安委員会の下にそれぞれ警視庁なり府警、道警、県警が存在し、都道府県ごとに独自に行動している。警察庁という国家組織はあるものの、都道府県警の連絡・調整を担うだけで直接の指揮命令権は持っていない。

 ところが、韓国の警察は警察庁が指揮命令権を持っていて、ソウル市警や各道の地方警察を動かす国家警察だ。さらに、機動隊が「戦闘警察」という名称で、デモの鎮圧だけでなく、北朝鮮の武装ゲリラ討伐という任務も担っており、準軍事的な存在となっているのだ。

 この機動隊員は、警察官採用試験で採用された若者ではなく、徴兵制で集められ陸軍で軍事訓練を受けた者が配属され、階級制度も一般警察官とは異なっている。

 そうした側面から、防弾チョッキのようなものは対北朝鮮ゲリラと向き合う部署に優先的に回されることになる。結果、交番などの一般警察官に対する装備が手薄となり、銃を持った強盗や乱射事件への対応が日本とは異なり不十分になってしまっているようだ。

 今回の事件に対し、ネット上でも一般市民から様々な意見が寄せられている。

「検問のときに撃たれたら危ないだろ!」
「装備が足りないだなんて1960年代じゃないんだから!」
「銃を持って暴れるやつらはそのまま射殺してもいいだろう」
「いや、それをやったら検察や野党やマスコミが蜂のように群がってイ警部を袋叩きにしただろう。今の韓国の警察は、軍政時代とは異なる民主警察だから……」

 ともあれ、今回の派出所所長の殉職は防弾チョッキさえあれば防げたものである。実に痛ましい事件だ。

(取材・文/山田俊英)

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