「女性は男性より優れている」米国人類学者の主張に賛否

デイリーニュースオンライン

ヒラリー・クリントン氏が米大統領になれば戦争がなくなる?
ヒラリー・クリントン氏が米大統領になれば戦争がなくなる?

 3月上旬、以下のような主張が米大手紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』電子版に掲載された。

「女性は将来的に重視される多くの点で男性より優れている」

「女性が統治者になれば戦争の可能性が低下する」

「セックススキャンダルや汚職、暴力は全て圧倒的に男性的なもの」

女性の統治者がより良い世界作る―戦争の可能性は低下=米人類学者|WSJ日本版

 筆者はアトランタのエモリー大学に在籍する人類学者のメルビン・コナー教授。2016年大統領選にヒラリー・クリントン氏ら有力女性候補の出馬が確実視され、初の女性大統領が誕生する期待が高まったことを受けてのものだ。だが、あまりに女性賛美に満ち満ちた内容だったため、日本でも賛否両論が巻き起こっている。

女は遺伝子レベルで男よりも優れている?

 同記事では、女性が男性よりも優れているのは「染色体、遺伝子、ホルモン、脳の回路の問題」とし、女性は性的衝動や暴力性につながるテストステロン(男性ホルモンの一種)が少ないため、好戦的になることがないという。「あらゆる戦争は男性的」だとし、それゆえに女性が指導者になれば戦争の可能性が低下するという理論だ。

 だが、フォークランド紛争を指揮したマーガレット・サッチャー(英元首相)や第三次インド・パキスタン戦争を引き起こしたインディラ・ガンジー(印元首相)、ミュンヘン五輪事件の武力報復を指示したゴルダ・メイア(イスラエル元首相)ら、好戦的だった女性指導者も少なからず存在する。

 これについて同教授は「この3人の女性はその地位に上り詰める間に男性化していた」と指摘。つまりは「みなし男性」であるとし、それとは異なる「男性のマネをする必要がなくなった女性たち」が指導者になれば戦争はおろか、セックススキャンダルや汚職も減っていくだろうと推測している。

 これらについてネット上では共感コメントが多少あるものの、大半は以下のような疑問の声となっている。

「これは女尊男卑の考え方」
「男でも女でも権力を持てばやることは同じでしょ」
「女性統治者の例が少ないからデータとして無意味」
「ヒトラーが信奉してた優生学と同レベルに科学的根拠なし」
「女性政治家でもスキャンダルや汚職はあるよ」
「北条政子や則天武后とか、女帝でも好戦的な人は多いよ」

 また、ネット掲示板では「女の私から言わせてもらえば、表立った戦争にはならんとおもうよ。裏でネチネチ責める感じかな。表面上は仲良く見えるけれど…ていう。ただしグループになって一度火がついたら相手が焦土と化すまで止まらない」というリアルな意見も上がっている。

 一部のフェミニストが陥りやすいのが「男女平等」を訴えているうちに「男性は愚か」「女性は優れている」という思考にハマりこんでしまうこと。体力や感性などの性差はあるだろうが、根本的には男性であろうと女性であろうと何よりも個人の資質が大きな問題となる。何もかも「男だから」「女だから」で片付けるのは乱暴に感じられるため反発を招いているのだろう。

「女ごときが」根強い女性差別に賛同の声も

 その一方、男性側にも女性に対する偏見は根強くある。その代表例として近年話題になったのは東京都の舛添要一都知事だ。

 舛添都知事は1989年発売の雑誌で「僕は本質的に女性は政治に向かないと思う」と発言。「指揮者、作曲家には女はほとんどいない」としたうえで「女性はオーケストラを統率する能力に欠けている。作曲家が少ないのも論理構成をして様々なパーツを上手にワンパッケージにまとめる能力がないから」と主張。それが政治家としての資質の問題と重なるという理屈だ。

 また、体力的な問題として「政治家は24時間、いつ重要な決断を下さなければいけないかわからない。そのとき、月1回とはいえ、たまたま生理じゃ困るわけです」「女は生理のときはノーマルじゃない。異常です。そんなときに国政の重要な決定、戦争をやるかどうかなんてことを判断されてはたまらない」と語っていた。

 当時はマドンナ議員が増加していた時期だったが、それについても「歴史的な例外の時代であって、だから女ごときが出てこれる」「だけど、あのオバタリアンは全部“あがった”人ばかりなんでしょう」と言いたい放題だった。

 この発言は昨年(2014年)の都知事選前に急遽蒸し返され、ネット上で「女性蔑視」「女の敵」と非難殺到。もちろん、昔のことだからといえばそれまでだが、この発言に「いや事実だろ」「ホンネで言えばそう思う」などとネット上で匿名の賛同が寄せられたのは印象的だった。表立っては言えないが、一部の男性に舛添氏のような偏見があることは事実と言えるだろう。

「男と女の間には深くて暗い河がある」という歌詞もあるが、なかなか分かり合えないのが男と女。上述のような極端な偏見をぶつけ合っていれば、その溝は余計に広がってしまうだろう。性別でくくるのではなく個人個人を重視する世界になるのが理想なのだろうが、影響力のある人たちが男女対立をあおるような発言をしているようでは実現が難しくなってしまいそうだ。

(文/佐藤勇馬 Photo by Taekwonweirdo via flicker)

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