「家族会議で家から追い出され...」高齢化する万引き犯の悲しき実態 (2/2ページ)

東京ブレイキングニュース

五十円しか持ってないです」

「誰か立て替えてくれる人はいますか?」

「家出中みたいな感じだから、誰も来てくれないでしょうね」

 自分の父親と同じ年齢の男に、家出中だと告白されて困惑する。しばし言葉を失っていると、その沈黙に耐えかねたらしい男が、堰を切ったように話しはじめた。

「永年に渡り縫製工場を営んできましたが、リーマンショックの時に会社が倒産しまして......。ここ数年は、ビル清掃のアルバイトをしながら食いつないできたんですけど、稼ぎが悪くなってから家族に疎まれるようになりましてね。家族会議の結果、家から出されることになっちゃったんですよ。かれこれ三ヶ月ほど、ネットカフェやマクドナルドで寝泊まりしてきましたが、いよいよ所持金が底をついて、この二日間は駅の階段で寝泊まりしました。こんなことは、私の人生で初めてのことです。ここまで落ちぶれたからには、もう死ぬしかない。そう決めたら、死ぬ前に好きなワインが飲みたくなって......。これを飲んだら、その辺のビルから飛び降りるつもりでいたんです」

 ワインを選んだ時に栓の形状を気にしていたのは、コルク抜きがないため、すぐに飲めるものをと考えてのことらしい。

「もう生きていても仕方ないんです」

 とても可哀相な境遇にあるようだが、その真実は知り得ないし、それとこれとは話が別だ。商品を買い取れない上に、帰る家もなく、ガラウケも用意できないとなれば、被害金額の大小にかかわらず逮捕されることになるだろう。そのことを伝えると、それだけは嫌だと顔色を変えた男は、北海道に住む兄を呼び出すと言い出した。どうやら留置場に入れられることの方が、死ぬよりも嫌らしい。

 結局、警察に引き渡された男の身柄は、連絡を受けた奥さんが引き受けることになり、盗んだワインの代金も支払ってくれた。これをきっかけに仲直りしていただきたいが、三ヶ月ものあいだ不在だった夫の身を案じることなく、捜索願が出されていなかった事実は重い。金の切れ目が、縁の切れ目。数カ月ぶりに家の敷居を跨いだ男は、その後開かれたであろう家族会議で、どのような裁きを受けたのだろうか。いまも布団の中で眠れていることを願うばかりだ。

Written by 伊東ゆう

Photo by Giorgio Luciani

「「家族会議で家から追い出され...」高齢化する万引き犯の悲しき実態」のページです。デイリーニュースオンラインは、家族会議万引きGメン社会などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る