北朝鮮の最新「ワイロ事情」牛肉を入手する裏ワザとは?

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ワイロが横行する北朝鮮(写真はイメージです)
ワイロが横行する北朝鮮(写真はイメージです)

 北朝鮮は、世界で最も思想的な統制の厳しい独裁国家のひとつだ。そして同時に、最もあからさまに「ワイロ」のやり取りが横行している国でもある。権力、すなわち役人の権限が強い分、彼らを買収することで、融通をきかせられる場面も多くなるという訳だ。

 ひとくちにワイロと言っても、必ずしも現金でやり取りされるわけではない。物価変動が激しく通貨の価値が上下し易いので、現金よりは市場価値のあるモノが重宝されるケースが少なくないのである。北朝鮮情報ニュースサイト「デイリーNK」の北朝鮮国内にいる取材協力者は次のように話す。

「最近、おカネと同様にワイロとして喜ばれていたのは牛肉だ。食糧難で出回っている量が少ないため、祝日などにおカネの入った封筒と牛肉を役人に渡すと喜ばれる。渡す相手は市場や税金を担当する管理所長、住民監視を行っている保衛部員、ガソリン·ディーゼル油などを管理する燃油管理員などが一般的だね」

牛肉を入手する驚きの方法とは

 それにしても、ただでさえ希少な牛肉を庶民がどうやって手に入れるのか? そこには、ひとつの裏ワザがあった。

「実は、わが国では家畜を勝手に殺して食べることは禁じられている。トラクターなどが少ないため、牛は食料と言うよりも『生産手段』として重宝されているからだ。しかし、病気になった牛なら殺しても罰せられることはない。そこで、畜産部門の担当者に『この牛は病気だ』という報告書を書かせた上で牛を一頭譲り受け、その牛を食肉工場に連れていく。もちろん、畜産部門の担当者にも食肉工場の担当者にも、何らかのワイロを渡さなければならない」

 これでは、ワイロを調達するための経費としての“ワイロ”を調達するだけでも一苦労である。むしろ、ワイロを経済の中に組み込んでしまった方が、国が豊かになるのではないかと思えるくらいだ。

 しかし一方で、決してオモテの経済に組み込めないシロモノが、ワイロとして出回っている例もある。それは覚せい剤である。

 前出とは別の協力者によれば、「昔は外国製の酒やタバコ、食べると体に良いとされる鯉などが主だったワイロだったが、最近は役人たちが『もっとほかのモノはないか』とねだるようになった」という。

 そして、新たに登場したのが「覚せい剤」だという。

 北朝鮮では国家機関が覚せい剤などの製造に手を染めてきたと見られているが、そこで生産されたものは日本など国外への密輸出に振り向けられていた。

 ところがある時点で、その製造ノウハウが拡散。さまざまグループが密造を行うようになり、覚せい剤が国内で蔓延するようになっていったという。

 その蔓延ぶりについては機会を改めて書くことにするが、贈収賄で堕落した北の治安機関には、どうやらその流れを食い止められないらしい。

 ワイロはやはり、国を滅ぼす悪しき習慣なのである。

著者プロフィール

高 英起

デイリーNK東京支局長

高 英起

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNK」の東京支局長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』(新潮社)など。@dailynkjapanでも日々、情報を発信中

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