さっき死ぬとこだったよ:枡野浩一連載28 (3/3ページ)
長い一日だったため新品に替えたばかりのiPhoneの電池はもう切れかけていて、LINEを確認したら詩人が、《歌人、忘れ物でてきました!これから植田さんと新木場にとりにゆきます!》と言っていました。《よかった。》と私は返信しました。それが自分のiPhoneを見た最後でした。
お通夜だけでなくカプセルホテルに一泊して葬儀にも参列し、そのあと新宿三丁目のカフェで故人を偲ぶ会にも参加しましたが、その詳細は気持ちがいっぱいなので書けません。
以前もdocomoのケータイを新品に替えた直後に喪失したことがあります。いつも気持ちがいっぱいになっているとき、大金の入った財布などをよくなくします。なくしたものは、出てきたり、出てこなかったりします。私の意志には関係なく。死もそのように私たちに訪れるものなのかもしれないと思いました。
長い一日の途中に、遅刻へと走る電車の中で詠んだ短歌を二首、以下に載せておきます。
【短歌】
最後って自覚できないのが最後 いつも言いそびれるさようなら (枡野浩一)
http://urx3.nu/jlB5
さよならは聞こえなくても言うものだ そうしなければならないならば (枡野浩一)
http://urx3.nu/jlBa
【枡野浩一:プロフィール】
ますの・こういち
歌人。2013年春、まさかの芸人宣言。2013年秋、詩人の本田まさゆきと、お笑い芸人コンビ「詩人歌人」を結成。2014年秋、事務所SMA(ソニー・ミュージックアーティスツ)の先輩芸人・植田マコト(元「うえはまだ」ツッコミ)をむかえ、トリオ「詩人歌人と植田マコト」を結成。
【オススメ書籍】かんたん短歌の作り方(ちくま文庫)
http://books.rakuten.co.jp/rb/12794379/
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