シンガポールでクーポンサイト運営…アジア圏に参入する若き女CEOの勝算

デイリーニュースオンライン

「Reginaa Pte.Ltd」のCEO、大畠佑紀さん
「Reginaa Pte.Ltd」のCEO、大畠佑紀さん

 インターネット環境を利用し、割引、料理の提供など店舗からのサービスを受けることが可能なクーポンシステムは、スマートフォンの普及などにより世界中で需要が高まっている。

 シンガポールで「Reginaa Pte.Ltd」を運営する大畠佑紀さんは、数年前までまだモバイルサービス事業が発達していなかった同地に目をつけ起業。現在は「J PASSPORT」というクーポンサイトを運営し、飲食店、美容室などシンガポール国内の様々な店舗のサービスを配信している。

 そんな大畠さんの経歴は異色だ。

「学生時代には体操競技を行っていて、日本代表にも選抜されたこともあります。外国の大会に遠征することも多くて、そのころから海外で活躍したいという願望を抱くようになりました。大学卒業後は人材派遣会社の営業職を2年務めたんですが、かねてからの海外志向もあり、2007年にイギリス人が設立した、携帯電話の業務を行うベンチャー企業に転職したんです。従業員は外国人ばかりで会話はほぼ英語、しかも当時の私はITの知識なんて全くなかったから本当に大変でしたよ」

アジアの最新情報が集まるシンガポール

 外国人とのコミュニケーションやITスキルといった、現在の事業を行う上での基礎的な能力はこのときに身に付けたようだ。翌年、この会社は経営者が母国に拠点を移したことから日本での業務を停止するが、大畠さんはそれを機にして同僚とともに独立。モバイルサービス事業を行う会社を設立し、2011年から海外のクーポンサイト運営を模索することになる。

「まず私たちは、将来市場が巨大化することが予測されるアジア圏に目を向けました。その中でも現時点で市場が活性化していて、スマートフォンなどネット環境が発達しているシンガポールが最も適した場所ではないかと思ったんです。シンガポールはハブ(中枢)とも言われるようにアジアの最新情報が集まる場所。この国の事情を調査すればアジア全体の動向が把握できるという一面もあります。そして何より、シンガポールには、日本のクーポンのようなモバイルサービスが存在しなかったのが大きな理由でしたね」

 この地には、すべての条件が揃っていたという。大畠さんはシンガポールに渡り、広告代理店やソーシャルマーケティングを扱う会社と連絡を取り合って現地のリサーチを開始。そしてここならば十分にやっていけると確信を深め、11年11月、自身が代表を務める会社「Reginaa Pte.Ltd」を設立して本腰を入れた。

「まずは、各レストランやお店独自のケータイ会員の構築をお手伝いさせていただく事から始めました。現在の「J PASSPORT」としてクーポンのまとめサイトを開設したのは、13年12月。会員はほとんど現地の人たちです。現在は、200以上の店舗でクーポンが使用可能、登録会員数はシンガポールの人口の2%にあたる10万人を超えています。アジア圏の特性上、買物の時に特典を求める傾向が強いのも人気の要因になっています」

 見事、狙いは当たった。しかし異国の見知らぬ地でビジネスをやるのは相応のリスクがあるものだと思うが、よくぞ踏み切ったものだと感心する。

「シンガポールは異文化の混ざった特殊な地域ですが、日本人に対してはとても好意的です。これは先輩方の戦後の大きな努力のおかげですね。海外で事業を行うのは一見難しそうに思われるかもしれませんが、始めてみるとたくさんの可能性とわくわくすることだらけです。自分の知らなかった世界で多くの人たちと出会い、異なる文化や背景に触れることができます」

 今は毎日、仲間とともに自分たちのやりたい事を追いかけて生きていると、楽しそうに語る大畠さん。昨今の日本人は内にこもる傾向が強いとも言われているが、外に目を向けてみれば、一獲千金のチャンスはそこら中に眠っていそうだ。

(取材・文/亀谷哲弘)

大畠佑紀(おおはた・ゆうき)
1982年生まれ。「Reginaa Pte. Ltd.」CEO,創業者。大学を卒業後、インテリジェンスへ入社。ベンチャー企業での事業運営を経て、アプリ開発などを行うガプスモバイル社の立ち上げメンバーとして参画。モバイルを使った販売促進支援やドコモのiコンシェルサービスの営業経験を積んだ後、単身シンガポールへ渡り、2011年11月に同社を設立。「Reginaa Pte. Ltd.」HP 
「シンガポールでクーポンサイト運営…アジア圏に参入する若き女CEOの勝算」のページです。デイリーニュースオンラインは、ベンチャービジネス連載などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る