吉田豪インタビュー企画:爆笑問題・太田光「20年前から世の中で起こることは変わってない」(3) (4/4ページ)

デイリーニュースオンライン

実現しなかった爆笑問題VS浅草キッドの真相

──しかし、そういう無邪気な感覚はホントなくならないですよね。

太田 結局、漫才やってるからでしょうね。

──時事漫才を。

太田 うん。俺のなかで、世の中のできごとの思い出が全部漫才とリンクしてるから、職業病なのかわかんないけど、何年にこんな事件やスキャンダルがあったとかいったら「あ、こんなネタにしたな」ってすぐ思い出す。

──イジり方で覚えてるんですね。

太田 そうそう。でも、毎月『日本原論』みたいな時事漫才の原稿を書いてると、世の中で起きることってホントに変わらないんですよ。

──パターンが決まってるわけですね。

太田 政治家のスキャンダルと、変なヤツが出てきてへんてこりんなことをするっていうのと、あとはお金の問題とか、食品偽装的なのとか、だいたい20年前からずっと変わらないから、自然に俺のなかで分類されちゃってるのかもしれないね。

──これはこの箱、小島慶子はこの箱っていう。

太田 そうそう。

──その弊害もあるかもしれないですね、どんなニュースも笑ってもらえるもんだと思ってるっていう。

太田 そうね、こっちの思い込みだけどね。

──安倍首相いじりもそうですけど、その感覚がついちゃってる。

太田 そうなんだよね。そもそも『日本原論』の出発が阪神大震災とオウムの年だったし、俺らの始まりは昭和の終わり、崩御のちょっと手前なんですよ。だからデビューしたときは完全自粛ムードなところがあって、復活したときがオウムと阪神大震災で、ホントに漫才しにくい状況っていうのがあって。

──その状況をどうイジるのか、みたいな闘いから始まったわけですね。

太田 そう、そこからなんですよ、節目が全部。あの頃はまだネットがないから、地下のライブハウスだったらOKだったんだよね。全然笑って済まされてた。で、そういうムードが重ければ重いほどウケた。

──いまだに地下のライブハウスだとそういう空気はありますからね。

太田 うん。でも、そっち行って帰ってこなくなっちゃったヤツいっぱいいるからね。その体質はあるかもしれないね、根っこには。

実現しなかった浅草キッドとの舞台対決

──太田さんは地下で危険なことをやり続けるよりも、地上でギリギリのことをやりたいって前に言ってましたよね。そういう意味で、クローズドな世界で危険なことをやり続けている人と、テレビでギリギリのことをやるようになった人との対決として、浅草キッド対爆笑問題の闘いは観たかったんですよ。

太田 そうね、浅草キッドはそうだね。

──昔からガチな確執はあって、対戦に向けたいい流れもできていたところでポシャッちゃったわけですけど。

太田 ポシャッちゃったというか、あれは単なる玉袋(筋太郎)の暴走だからね。

──2013年2月に玉さんが「どっちの『たけし愛』が上かどうか、どっちが本当の漫才師か、舞台で勝負しろ!」って『東スポ』を使って対戦をアピールして、太田さんも「ひねりつぶしてやるよ! 赤子の手をひねるように。いつでも来い、この野郎!」「こっちは異種格闘技戦、さんざんやって来たんだよ、この野郎!」とか言ってたら、水道橋博士のストップが入ったんですよね。

太田 あれなんだったんだろ? 俺もよくわかんないんだけど。

──博士と東スポの担当者との間に信頼関係がなかったとか、いろいろあるみたいですけどね。

太田 博士も、ちょっとナーバスになってた時期というか、それこそ大阪の番組を辞めたり(2013年6月、テレビ大阪『たかじんNOマネー』の生放送中に降板を宣言してスタジオから立ち去った件)とか、ちょっと悩んでるのかなって思ったけど。

──光代社長が間に入ってまとめようとしたら「女は関係ない」のひと言で(笑)。

太田 ハハハハハ! 社長は社長でまた全然デリケートなものでも「ちょっとちょっとー」って入っていくから、それはそれでまたすごいんだけど(笑)。

──なんとか実現してほしいんですけどね。

太田 俺はべつに構わないけど、田中はプライド高いから、「浅草キッドとなんか」って思ってるからさ(笑)。

──ダハハハハ! 太田さんのコメントもよかったですよね、「お前らね、自分たちで意見を統一してから挑戦してこいよ」「俺だって受けて立つって言ってんだから、まず博士を説得しろ、お前は!」って。

太田 そうだよね。玉袋とはあのあと会って「ごめんなー」とか言ってたけど。「大丈夫なの?」って聞いたら、「いや、まあまあまあ」って。だから俺もふたりのあいだのことは詳しくはわかってない。

──それ以降、玉さんがラジオなりMXテレビなりで博士との不仲ネタを口にする機会が増えてますね。

太田 俺もあの頃周りから最近なんかうまくいってないみたいよっていうのは聞いたんだけど。でも、漫才はやってるんだよね?

──やってますね。

太田 まあ、漫才コンビはそういう時期もあるだろうしね。

<次回:太田光インタビューいよいよ最終話>

プロフィール


爆笑問題

太田光

太田光(おおたひかり):1965年、埼玉県出身。1988年に大学の同級生の田中裕二と爆笑問題を結成し、時事問題も取り込んだ漫才で人気を獲得。テレビ、ラジオなどで活躍する他、著書も多数。爆笑問題としての著書だけでなく、太田個人で『マボロシの鳥』などの小説も発表している。近著は爆笑問題と映画評論家・町山智浩との共著『自由にものが言える時代、言えない時代』。6月3日には毎年恒例の時事ネタ漫才ライブのDVD『2015年度版 漫才 爆笑問題のツーショット』をリリース。

プロフィール

プロインタビュアー

吉田豪

吉田豪(よしだごう):1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。徹底した事前調査をもとにしたインタビューに定評があり、『男気万字固め』、『人間コク宝』シリーズ、『サブカル・スーパースター鬱伝』『吉田豪の喋る!!道場破り プロレスラーガチンコインタビュー集』などインタビュー集を多数手がけている。また、近著で初の実用(?)新書『聞き出す力』も大きな話題を呼んでいる。

(取材・文/吉田豪)

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