スイスで裏金リスト流出…FIFA汚職事件は日本に飛び火するのか

デイリーニュースオンライン

5選を果たしたブラッター会長(写真右)だったが…
5選を果たしたブラッター会長(写真右)だったが…

 開催権を得ようと、南アフリカ政府がジャック・ワーナーFIFA(国際サッカー連盟)元副会長に示唆した賄賂が1000万ドル(約12億円)──。

 腰が抜けそうになるぐらい高額の賄賂が横行していたことが、米司法当局の起訴で明らかになったFIFA事件は、現在、アルゼンチン、コスタリカ、ブラジル、イギリスなどの捜査当局が連携捜査を行っており、世界に広がっている。

 前回、ブラジルワールド杯で発生した放映権料などFIFAの収入となったのが約5000億円。その利権を握るのが、5選されたゼップ・ブラッター会長、8名の副会長、16名の理事の計25名というのだから贈賄工作が活発化するのもわかる。

日韓W杯の放映権にも関与した企業が倒産

 日本ではあまり報じられていなかったが、「FIFAの目に余る腐敗」は、世界のスポーツ界に周知の事実であり、欧州などでは度々、指摘されてきた。今回の前哨戦のように、スイスではマーケティング会社の倒産をきっかけに「裏ガネリスト」が流出、スイス司法当局が、経営陣を詐欺・横領、文書偽造などの罪で起訴したことがある。

 この会社は、ドイツの「アディダス」と日本の「電通」が共同出資で設立。日本と韓国の共同開催となった日韓ワールド杯やその放映権にも関与していただけに、決して「対岸の火事」ではない。事実、捜査過程の04年7月、スイスから担当検事が来日。電通の担当幹部らの尋問を行った。

 この過程は、会員制総合月刊誌『FACTA』が、08年6月号で「スイス現地発」の形で報じ、その後も、同誌は「カタールW杯の汚れた裏側」(11年2月号)「FIFA腐敗『巨悪』の覆面」(11年8月号)、「電通沈黙『W杯チケット』の暗部」(14年9月号)と、折に触れて報じてきた。

 そこで明かされたのは、度し難いFIFAの腐敗であると同時に、そのサークルに入らなければ、開催権、放映権、商標権などのビッグビジネスには勝利できず、日本の場合は、電通が子会社を通じて間接的に関与してきたという事実だった。

 前回のスイス当局による摘発は、「民間(FIFA)に収賄罪は適用されない」というスイス法律によって罰金刑で逃れたものの、今回は米司法当局であり、あなどれない。

 そもそも、捜査が本格化したのは、FIFAの北中米カリブ海連盟の幹部を脱税で摘発。米司法省が幹部を司法取引に誘い込んで、FIFAの腐敗を供述させるとともに、捜査協力させたからだ。

 FIFAの本部はスイスだが、米国の金融システムを使ったから米国に対する犯罪であるとして、47の罪状で起訴した。

 日本の法律ではなく、米国法で捜査は展開する。そのうえ、時効もスイスでの罰金刑という過去も関係ないとすれば、日本への波及は十分考えられるだけに、事件の行方に神経を尖らせている関係者は少なくない。

伊藤博敏
ジャーナリスト。1955年福岡県生まれ。東洋大学文学部哲学科卒業。編集プロダクション勤務を経て、1984年よりフリーに。経済事件などの圧倒的な取材力では定評がある。近著に『黒幕 巨大企業とマスコミがすがった「裏社会の案内人」』(小学館)がある
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