世界標準を知るほど、猪木のプレゼン努力や頑張りを思い知る。[プチ鹿島コラム] (1/4ページ)

日刊大衆


先日「WWE」を特集するムック本の取材を受けた。私がしゃべったのは「WWF時代からの変遷を日本の観客目線で語る」という内容。

たとえば「ボブ・バックランド」を論じるだけで興味深い。WWFは全米進出に備え、エースをボブ・バックランドからハルク・ホーガンに変えた。「バックランド以前・以後」で激変した。プロレスとは何か、エンタメとは何か、もっといえば大衆とは何か。そのポイントでも考えられる。

そんな話をしながらも、インタビューの途中にしばしば出てきたのが「猪木史観」。私がここ半年くらい使用している言葉である。具体的にいうと「1964年のジャイアント馬場」(柳澤健・双葉社)を読んでしみじみ考えなおした「猪木の頑張り」のことだ。

あの本を読めば、世界で即通用したジャイアント馬場の偉大さがわかる。それまでも馬場が新人時代にアメリカで成功していたという事実はプロレスファンなら誰でも知っていた。しかし具体的にどの程度かは知らなかった。そこを柳澤健は丁寧に掘り起こしたのだ。
私が子どもの頃に「プロレスの教科書」で教えられた歴史とは、エリート・馬場に対しての雑草・猪木の奮闘である。猪木はストロングスタイルという旗印を掲げた。「強さでは馬場に負けない」という主張を。

この思想はウケた。「プロレス道」の雰囲気を帯びたのだ。かなりの長期にわたって、明るく開放的で誰でもわかるアメリカンプロレスは軽視された。

しかしメジャーリーグでは馬場だったのである。「大きいことはいいことだ」という圧倒的正義。アメリカでは客を呼べる人間がすべてであり、早々に呼べたのは馬場だった。

猪木がそれを覆すには勝負論とストイックさしかない。猪木は必死に我々を説き伏せたのだ。生きる術として。

世界で最も客を呼べたアンドレ・ザ・ジャイアントも猪木のリングでは「柔よく剛を制す」の相手のひとりだった。
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