『聲の形』青春の“切なさ”と“残酷さ”をリアルに描いた話題作

あにぶ

聲の形© 2008-2014 Kodansha
聲の形© 2008-2014 Kodansha

2013年2月に、週刊少年マガジンの読み切りに載ったある一つの漫画をめぐりネット上では賛否両論の意見が飛び交い、ツイッターでも話題騒然となりました。

それこそが今回ご紹介する漫画作品『 聲の形 』です。

読み切りが話題となり、その後に週刊連載が始まりました。作者は別冊少年マガジンにて連載され、劇場アニメ化もされた『マルドゥック・スクランブル』のコミカライズをしていた大今良時さん。

■社会的なテーマに焦点を当てた作品


この漫画がなぜそこまでネット上で反響を呼んだのか、それはこの作品が思春期で多感な時期の子どもたちによる『いじめ』を主題に扱っているところです。

一番初めに掲載されたオリジナル版と呼ばれるものや読み切りと週刊連載版では、若干設定が異なっているものの一貫したテーマは変わっていません。

本作のヒロインである『西宮硝子』は先天性の聴覚障害を持ち補聴器なしではほとんど音が聞こえず、言葉を発することも困難で筆談や手話でしか意思の疎通ができない少女。そんな彼女に対して始まったささいな『いじめ』、そのいじめの中心となっていたのが主人公の『石田将也』。

彼はいじめてもなにも仕返しをせずに笑顔を返してくる硝子に対していじめをエスカレートさせていきます。

事が大きくなるにつれて、始めは将也と一緒にからかっていたクラスメイトは離れていき、見て見ぬふりをしていたクラスメイトたちは将也を責め立てるようになり、全ての罪を擦り付けられた将也は孤立していき、今度は将也がいじめのターゲットへとすり変わっていきます。

その後中学でも続いた将也へのいじめは彼をより孤独へと追い込み、人間不信に陥った彼は硝子に対しての罪を懺悔したいと思うようになります。
高校生となったある日、再び転校していった硝子と小学生以来の再会を果たすことから物語は大きく動いていきます。

■嫌悪感さえ抱くリアルな描写

はっきり言って、胸糞悪い!! 一巻や二巻はとにかく読んでて辛いと思えるくらいの内容です。

特に硝子のいじめに対して見て見ぬふりをしていたクラスメイトの掌返しには妙な生々しさ、そして人の心の弱さと醜さを感じさせます。

そんな、読者に嫌悪感さえ抱かせるリアルで凄惨な描写と、それでも次の巻が気になって気になって仕方ないと引き込ませる圧巻のストーリー、いじめ問題という社会的なテーマを真っ向から描いた内容は、賛否両論の嵐と反響を巻き起こし、2014年度「コミックナタリー大賞」第1位、そして「このマンガがすごい 2015」でも見事1位に輝きました。

そして原作の完結と同時にアニメ化の発表がされました!!

■作品の本質

いじめという重い問題を扱ってはいますがこの作品の本質は、過去にいじめに合いながらそれでも前向きに生きる被害者と、いじめという過去の罪に苛まれる加害者の二人とそれを取り巻く人間との人間模様。そしてウブで青臭い青春恋愛群像劇を描いているところ。

うまく他人とのコミュニケーションのとれない硝子と、過去の罪から他人との距離感がわからなくなってしまった将也。未来を見つめて前向きな硝子と、過去をずっと見つめ続ける将也はお互いの気持ちに気付かないまますれ違っていきます。

そんな二人のディスコミュニケーションな関係のじれったさ、もどかしさ、不器用さ、ほんの少し何かがずれただけで人間関係が大きく変わってしまうことへの切なさのようなものが、この作品の本当の魅力なんだと思います。

『――あの時 お互いの声が聞こえてたら どんなに良かったか』という言葉が作中では登場します。この言葉にこの作品のすべてが集約されていると思います。…とにかく泣ける。。。。

すでに劇場アニメ化が決定済みの本作。劇場公開の前に一人でも多くの方に読んでほしいと心の底から思える作品です!!! 是非この作品を通じて、青春の“切なさ”と“残酷さ”、そして”甘酸っぱさ”を感じとってください。

(あにぶ編集部/Uemt)

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