橋下市長「副総理に」で自民党内部から不満…安倍総理の求心力低下か

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維新を取り込むため橋下市長を副総理に抜擢するとの噂も
維新を取り込むため橋下市長を副総理に抜擢するとの噂も

 6月14日、安倍晋三総理大臣と菅義偉官房長官が橋下徹大阪市長と松井一郎大阪府知事と官邸で会談した。

 先の大阪都構想をめぐる住民投票で、橋下市長は自民党大阪市議団を目の仇にしてきた。それにも関わらず、自民党のトップである安倍総理と橋下市長が懇意にするのは奇妙に映る。

 安倍総理の悲願とされる集団的自衛権の行使容認をめぐり、憲法学者3人から「違憲」と断じられた。安倍政権が進める安全保障法制は、事実上「詰んだ」状態になっている。そのため、安倍総理は維新の取り込みに躍起になっていると言われる。その初手が橋下市長を自陣営に引き込むことで維新を賛成に転じさせる作戦だ。

 2014年12月の衆議院選挙では、橋下市長は街頭演説で繰り返しアベノミクスを絶賛した過去がある。もともと、自民党と維新は政策的にも近い。それだけに安倍総理と菅官房長官は橋下市長と一緒になることで政策を進めようと考えていることは間違いない。

 だが、維新の半分は結いの党から合流した議員だ。結いの党の前身は、みんなの党であり、みんなの党は自民党でもなく民主党でもない第3極を目指して旗揚げされた。ところが、渡辺喜美代表が自民党に急接近したあたりから、永田町界隈では“自民党渡辺派”と揶揄されるようになる。そうした事情もあり、江田憲司議員はみんなの党を離れて結いの党を結成している。

 そうした経緯があるだけに、結いの党から維新に合流した議員の中には橋下市長と自民党が急接近することを面白くないと感じている議員も少なくない。ところが、結いの党出身の議員たちから不満の声は聞こえてこない。永田町関係者は、その事情をこう話す。

「近々に国政選挙がないので様子見している部分もあるでしょうが、元結いの党の議員たちにとって、また党が分裂してしまうことを恐れているようです。結いの党を結成したときも比例復活組の議員が多く、渡辺代表から『党を移るなら議席は党に返すべきだ』と言われるなど一悶着ありました。だから、党の移籍に関わる話で波風を立てたくないのでしょう」

橋下副総理が実現すれば維新はコントロールできるが…

 なにより注目されるのが橋下市長の動向だろう。橋下市長は政界からの引退を表明しているが、日刊ゲンダイが「市長退任後に副総理格として入閣か!?」とも報じた。いくら府知事・市長経験者とはいえ、一民間人が副総理になるのは前代未聞だ。現実味に欠ける話ではあるが、現・副総理の麻生太郎財務大臣はこの報道を快く思っているはずがない。

 なにしろ麻生副総理は、2012年の自民党総裁選で安倍候補を全面的に支援した。元総理大臣経験者である麻生太郎議員の力が第二次安倍内閣の誕生をお膳立てしたと言っても過言ではない。それゆえに安倍政権が誕生すると、副総理に抜擢されているのだ。仮に橋下副総理が実現すれば維新は完全にコントロールできる。安全保障法制も無難に成立させられるが、その代償は計り知れない。

 実は安倍総理に強い不満を抱いている議員たちはほかにもいる。それが旧町村派の面々だ。先の総裁選では、派閥の長である町村信孝議員が出馬した。それにも関わらず、派閥の長を無視して安倍総理も出馬して総裁の座を射止めた。

「総裁選のときもそうなのですが、町村さんの訃報が流れたときも安倍総理は番記者たちと赤坂で飲んでいて、すぐに駆けつけなかった。日頃から派閥の長であり、恩人でもある町村さんを疎ましく思っていたことは間違いなく、町村さんを慕う議員は怒り心頭ですよ」(前出・永田町関係者)

 民主党政権で冷や飯を食った自民党議員たちは、一致団結して政権を奪還した。前述の麻生太郎副総理や町村信孝前衆議院議長のほか、地方議員や自民党議員だって安倍再登板のために力を尽くした。もちろん、大阪市議団も同様だ。

 安倍総理は目先の安全保障法制を実現するために維新を味方につけようとしているが、これでは先の大阪都構想で反対の論陣を張った自民党大阪市議団の立場がなくなる。

 安倍総理は橋下市長を取り込むことで政権を盤石にしようと目論むが、その裏では大事なモノを失いつつあるのかもしれない。

(取材・文/小川裕夫)

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