新しい体験を与えてくれる犯罪捜査ゲーム『Her Story』 (3/4ページ)
他のルートでストーリーを進めていったプレイヤーたちとも話をしましたが、彼らは違うタイミングで作中の物事を見つけていったにも関わらず、それでも自分のために作られたストーリーに感じられたと言っていました。
これは本作のクリエイターで脚本家のサム・バーロウさん、ハンナ役のヴィヴァ・サイフェルトさん、この2人によるところが大きいでしょう。それは、何が起きたのかがわかっていくにつれて、すでに見た動画に新たな側面が生まれていくからです。
気遣いに聞こえていたのが計算高く、冷淡に聞こえていたのが愛情深く、といったようにハンナの言葉一つ一つが別の意味を持ち始めるのです。バーロウさんの生んだ言葉は様々に読み取れ、サイフェルトさんの演技は見るものに深読みさせる、この2つの相性がなんとも素晴らしいです。
ゲーム中のデスクトップの中にあるプログラムの一つは、データベーストラッカーとなっており、どの程度の動画が未見で、それが時系列のどの位置にあたるのかがわかるようになっています。動画は200以上あり、すべてを見つけられるとストーリーの全貌がわかるのだと思いますが、それも馬鹿げた考えかもしれません。
とはいえ、不完全なストーリーだといっているわけではなく、必要なものは全てそこにあります。しかし、これは誰かの日記を読めばその人を完全に理解できると信じるようなものです。自分の中に彼らのイメージを構成できるだけのパズルのピースがあったとしても、その全貌を理解することはできないのです。

本作でしか味わえない感覚がある
複雑な現実を、あらすじのあるストーリーに変えたいという人間の欲求。その根本的な欲望に応えるのが『Her Story』です。
人生は後ろを振り返り理解されるものです。