ゲイ当事者が感じる「特別扱い」的な論調に潜むリスク

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LGBTは思っているより「普通の人たち」
LGBTは思っているより「普通の人たち」

【ゲイリーマン発 日本のリアル】

 ニュースをご覧に皆様こんにちは。梅雨も明けきらずまだまだ涼しい日が続いていますが、7月ですよ! 夏はすぐそこですね。

 筆者は先日、沖縄で開かれたゲイイベントとビーチパーティに参加してきました。一足先に夏を先取りできてなんだか得した気分です(笑)

「LGBT支援は企業に新しいイノベーションを起こす?」

 先日、米最高裁が同性婚を認めるなど、世界的にLGBTの人権問題が進展を見せています。こうした流れを受け、日本でも渋谷区にてパートナーシップ制度が導入されるなど、新たなライフスタイルの選択ができるようになり、筆者はこうした制度の細かい部分に問題点は残るものの、ライフスタイルの選択肢が増えることについては概ね歓迎する旨をこちらの記事でも書いて参りました。

 しかしながら、最近ゲイ当事者として少々気になる論調があります。それは、「LGBTを優遇することは、企業文化を活性化させる」的なもの。これまでの「人権問題としてのLGBT支援」とは違ったアプローチで、よく経済誌などで見かける最近流行りの論調のようです。

 しかしながら、1人の働くLGBT当事者として、筆者はこうした特集記事を見るにつけどうにもこそばゆい気分になります。

LGBTとは言えどもみんなが思っているより「普通の人たち」

 筆者は特段優秀な社会人でもありませんし、こうした記事は筆者のような「優秀でない人」に向けて書かれたものではないのかもしれませんが(笑)、LGBTであるという、先天的な性質に近い基本属性(※)をもってして「イノベーションを起こす人」とか、「新しい企業文化を作る人」と語られてしまうことは、少々しんどいものを感じてしまいます。

「人権問題」としての旧来的なアプローチとは違った視点でLGBTについて語られること自体は、非常に興味深い現象ではありますが、生まれ持った基本属性に過度の期待感を持たれるような論調があまりに蔓延し、自身の勤める会社が同じことを言い始めることを想像してみると、ややストレスフルになるのではないかと考えております。

※同性愛や性同一性障害が先天的なものであるかどうかは、現在のところ議論がわかれているのが実情ですが、長年このコミュニティにいる筆者の感覚としては、先天的なものであると語る当事者が多かったため、ここでは「先天的な性質に近い基本属性」としています。

殊にセクシュアリティの部分のみが強調されてしまう

 実際に、LGBT当事者で優秀な方や突出した能力をお持ちの方は筆者も多数存じ上げています。ただ彼らは筆者から見れば、例えヘテロセクシュアルだったとしても一定の成功をおさめている方々です。

 そうした方々が仕事を通じて社会的に成功をおさめ、それが自信となってご自身のセクシュアリティをカミングアウトしているというのが実際の流れであって、彼らがLGBTであるが故に成功をおさめた、というわけではないのではないでしょうか。

 まだまだ自身のセクシュアリティを堂々とカミングアウトして生活する人は少数派であるため、成功をおさめて目立った人がカミングアウトをした姿が一般化されてしまうのは、どうしてもありえることだと思います。

 多くの当事者は、過度の配慮や優遇も求めていなければ、過度の期待を持たれることも望んでいないように筆者は感じています。差別的言動やホモネタ等に心を痛める当事者がいることは忘れてはいけませんが、最近メディアで騒がれているほど、LGBTが特別な存在ではないこと、好きになる対象の性別や自身で認識している性別がヘテロセクシュアルの方々とは「違っている」だけであることをより冷静に認識される日が来ることを望みつつ。

著者プロフィール

ゲイライター

英司

東京・高円寺在住のアラサーゲイ。ゲイとして、独身男性として、働く人のひとりとして、さまざまな視点から現代社会や経済の話題を発信。求人広告の営業や人材会社の広報PR担当を経て、現在は自社媒体の企画・制作ディレクターとして日々奮闘中。都内のゲイイベントや新宿二丁目にはたびたび出没(笑)

筆者運営ブログ「陽のあたる場所へ ―A PLACE IN THE SUN―」

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