【東芝】歴代3社長が引責辞任! それでも“粉飾”と言われない理由

デイリーニュースオンライン

刑事責任は問われないのか(写真は東芝HPより)
刑事責任は問われないのか(写真は東芝HPより)

 東芝事件は、恒常的に、しかも歴代トップが指示して粉飾決算を行わせていたという点で衝撃的だった。

 第三者委員会の上田広一委員長(元東京高検検事長)は、「報告書」に西田厚聰相談役、佐々木則夫副会長、田中久雄社長という歴代3社長の発言を克明に記載。3氏は退任に追い込まれた。

 常識的に考えれば、次の展開は刑事責任の追及である。

 利益操作は2008年度から2014年度の4~12月期までで1562億円にのぼる。この間の東芝の税引き前利益は5650億円。3割も利益をかさ上げしていたわけで、証券市場に対する背信行為であるのはもちろん、この粉飾の数字を信じて資金を投じた投資家にとっては、十分に刑事罰に値する。

証取委が課徴金処分を決めた理由

 だが、強制調査の上で刑事告発の権限を持つ証券取引等監視委員会の腰が重い。課徴金を科す方向で検討に入ったという。

 マスコミ各社は、第三者委員会の「報告書」が出された7月21日以降、「課徴金処分へ」と報じたが、それは罰金で済ませて東芝経営陣の刑事責任を問わないことを意味する。独自調査をすることなく、証取委が課徴金処分を決めたのはなぜか。

 第一に、東芝のような売上高6兆円、従業員20万人の大企業を窮地に陥れたくないこと。第二に、株価頼みのアベノミクスを続ける安倍晋三政権を揺るがせたくないこと、である。

 つまり、「報告書」が歴代経営陣の責任に言及することで、社内取締役12名中8名が退任して東芝は“みそぎ”を済ませ、その姿勢を国は容認したことになる。

「予定調和」の決着を予感させたのは、第三者委員会が最後まで「不適切会計」という表現に終始。「不正」とも「粉飾」とも言わなかったことである。

 上田委員長は、記者会見で「不正」としない理由をこう説明した。

「経営陣から圧力を受け、数字を調整した担当者らに違法の認識がなかった」

 違法の認識がないという意味では、粉飾会計のライブドア事件、インサイダー取引の村上ファンド事件などすべてそうで、「認識」が条件なら、経済事件は成り立たない。

「3日で120億円の利益を出せ!」

 こう佐々木則夫社長(当時)は命じ、現場がそのプレッシャーに負けて数字を作り上げた過程が、粉飾でなくて何なのか。

「不適切会計」というのはあくまで会社が雇った第三者委員会の結論。そんな会社と委員会との「予定調和」に引きずられることなく、証取委は独自調査のうえで判断をくだすべきなのである。

伊藤博敏
ジャーナリスト。1955年福岡県生まれ。東洋大学文学部哲学科卒業。編集プロダクション勤務を経て、1984年よりフリーに。経済事件などの圧倒的な取材力では定評がある。『黒幕』(小学館)、『「欲望資本主義」に憑かれた男たち 「モラルなき利益至上主義」に蝕まれる日本』(講談社)、『許永中「追跡15年」全データ』(小学館)、『鳩山一族 誰も書かなかったその内幕』(彩図社)など著書多数
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