うらみ、怨念、心残り…珠玉の“幽霊画コレクション”が大集結

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「うらめしや〜、冥途の土産展」会場風景。内覧会にて撮影
「うらめしや〜、冥途の土産展」会場風景。内覧会にて撮影

「うらめしや~、冥途のみやげ」展 ──全生庵・三遊亭圓朝 幽霊画コレクションを中心に──

 07.22[水]~09.13[日] / 東京都 / 東京藝術大学大学美術館 地下2階展示室

「うらみ」 それは、死んでも続く恐ろしい感情。

 そんな「うらみ」の表現を辿る絵画展『うらめしや~、冥途のみやげ展』が東京藝術大学 美術館で開催中です。

 元々、この展示は2011年の夏に行う予定でしたが、夏の電力不足の影響もあり延期になってしまいました。そこから4年後の今夏、ようやく開催されることになりました。

 今回の展示は怪談話を得意とした明治の噺家 三遊亭圓朝ゆかりの幽霊画コレクション50幅を中心に構成されています。普段は谷中の全生庵に保管されている展示物。

 これまでは8月にのみ公開されてきましたが、こうして美術館に展示されるのは初めてとなります。

ひんやりとした地下へ降り……。えっ、今入り口に何かいたよね!?

 入り口は地下2階ということで、階段を降りて行きます。なんだか、入る前からひんやりした空気です。地下に降りるとゲートが。

 あっ、あれ……? なんか今、現れなかった?

 このゲートはとても凝っていて、しばらく見ていると幽霊が現れたり、火の玉が現れたりと、非常に不気味です。今回の展示のために特別に作られた映像だそうですが、とてもリアル。

 実際の人魂や幽霊を見たことはありませんが、きっとこんなふうに現れるのだろうな……と思わせます。

 中へ入ると、薄明りの中で響く物悲しい風の音……。今にも何か出てきそうな雰囲気です。 会場を薄い布越しに眺めると、行き交う人の影がぼんやりと浮かびあがり、この世のものではないものに見えてきます。

圓朝と怪談について

 第1章は『圓朝と怪談について』の資料が展示されています。 全生庵に保存されている、三遊亭圓朝像や、圓朝怪談噺のビラ、圓朝の影絵の掛け軸、圓朝ゆかりの品など、圓朝についての展示品が並んでいます。

圓朝コレクションを公開

 第2章は『圓朝コレクション』です。圓朝は席上に幽霊画の掛け軸を掛けて、怪談噺を行っていました。現在、圓朝のコレクションは50幅あります。

 圓朝自身が集めたもの、圓朝死後にその意思を受け継いだ支援者によって集められたもので成り立っています。

 一説には、百物語にちなんで百幅集めようとしていたのではないかとも言われています。

 幽霊画の掛け軸が一面に並べられた薄暗い会場。天井に大きな蚊帳が吊るされています。ここのスペースには、通常の美術館にあるような上からの照明はありません。

 幽霊画の足下には行灯を模したフットライトがあり、幽霊画をぼんやりと浮かび上がらせます。また、ガラスケースもないので、幽霊(画)たちと同じ空間に立つことができます。

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「うらめしや〜、冥途の土産展」会場風景。内覧会にて撮影

 フロアには、浮世絵師の歌川広重(3代目が描いたものと思われる)や、円山応挙など、数々の有名作家が描いた幽霊画の掛け軸が並びます。

 幽霊画といえば、応挙ですね。初めて“足のない幽霊”を描いた、と言われていますが実はそれ以前にも足のない幽霊は描かれていたのだとか。

 ただ、これほどまでに「幽霊=足がない」という認識が広まったことには、間違いなく一役買っているでしょう。

 人間だけでなく雪女なども描かれ、ありとあらゆる怨念が描き出されています。 しかし、どの絵も綺麗……とうっとり眺めていると、じわじわと自分に向かってくるような恐怖もあり、薄らと背筋が寒く感じます。

 個人的には、作者不詳の作品が不気味に感じられました。誰が描いたとも分からない作品たちは、絵に描いた幽霊ではなく、絵自体が幽霊そのもののような気さえしてきます。

錦絵が彩る、うらみたち

 第3章は『錦絵による〈うらみ〉の系譜』です。19世紀前半から、歌舞伎において幽霊が出る怪談ものが増えました。中でも夏狂言では『東海道四谷怪談』の大ヒットなども受け、錦絵でも幽霊が描かれるようになったそう。

 他にも『皿屋敷』や『東山桜荘子』など、多くの人気演目があり、それらは次々と錦絵に描かれていきました。

 葛飾北斎が描く『東海道四谷怪談』のお岩さんや、歌川国芳が描く『東山桜荘子』の朝倉当吾の亡霊など、艶やかでいて美しい幽霊たち、ついつい見入ってしまいます。

『四谷怪談』のお芝居で使われた人形は、目玉がガラスになっていて動くそうです。そのうつろな表情に思わずぞくっとしてしまいました。

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「うらめしや〜、冥途の土産展」会場風景。内覧会にて撮影

 また、一流齋貞水 口演『四谷怪談』の映像上映も。薄暗い部屋の中で「ヒュ~、ドロドロ……」というお馴染みの笛と太鼓による効果音を聞くと、日本の夏だなぁ、という感慨も湧いてきます。

うらみが演じる美

 第4章は『〈うらみ〉が美に変わるとき』です。 幽霊画は美人画が形を変えたものとも考えられるそう。美しい幽霊画の掛け軸が展示されています。

 キービジュアルになっている、 生霊となった六条御息所を描いた上松松園の『焔』は、 9月1日~13日のみの限定公開のため、残念ながら今回は見ることができず……。

 8月18日に入れ替わる作品も多いので、前半、後半と2度楽しむのもいいかもしれませんね。

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上村松園 《焔》大正7年(1918) 絹本着色 絹本着色 東京国立博物館 Image:TNM Image Archives 9/1 -9/13展示

“うらみ”を浄化!?

 法要式も行われました。 この日は内覧会ということもあり、展覧会の無事を祈って圓朝コレクションが飾られた部屋での法要式も行われました。

 こんなにうらみを纏った絵画に囲まれて、正直ちょっと怖かったのですがこれなら安心ですね。 幽霊画に囲まれた会場での独経は、怪しげな雰囲気を演出します。まるで、幽霊たちもその場でお経を聞いているような気分にさせられました。

 りんが鳴り、お経が会場に響くと会場の空気が清らかになったような……?

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“冥途の土産”を買って帰ろう。幽霊が出る?

 特設ショップも期間中には、ある時間帯になるとどこからともなく幽霊が現れて『うらめしや展特設ショップ』を開催するようです。一緒に撮影も可能な明るい幽霊ということで、そちらを楽しみに行くのもいいですね。

 ご朱印帳、お守り、護符などおオリジナルグッズも販売されるようです。 その他にもユニークなオリジナルグッズがたくさん!

  • 御朱印帳 1300円(税込)
  • お守り 800円(税込)
  • 護符 800円(税込)
goods
  • LEDライト付ルーペ:1500円(税込) 幽霊が出てきそうな、薄暗い場所でお使いください。
  • 缶バッジ(32mm):160円(税込) 恐ろしい形相の般若と、どこかゆるい雰囲気のドクロ。会場でドクロの掛け軸を見たときから「オシャレ!」と思っていたので、個人的に気になります。
  • ろうそく:2000円(税込) お部屋で怪談話をするときにいかがでしょうか?
  • 一口饅頭(10個入り) :300円(税込) 10個入りでこの値段はコスパがいいですね。リアル「まんじゅうこわい」が出来る!?
  • 黒豆きな粉飴:600円(税込) 幽霊画界のアイドルたちが大集合。お土産にぴったりです。
  • チョコレート:650円(税込) 高級感漂うパッケージのチョコレート。中身は一体どんなチョコ……?

 その他にもグッズがあるそうなので、ぜひ現地でチェックしてみてください。

『うらめしや~、冥途のみやげ展』は9月13日まで。 この夏、少しひんやりとした気分で過ごしたいという方は、ぜひ行ってみてはいかがでしょうか。

 怖がりさんはお守りや護符を買うのも忘れずに!

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(取材/舟崎泉美)

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