安倍首相、集団的自衛権を”火事”でたとえたおかげで大ピンチ|プチ鹿島コラム

デイリーニュースオンライン

礒崎陽輔・公式サイトより
礒崎陽輔・公式サイトより

 政治家にとって言葉とはつくづく皮肉なもの。そんなことを感じたのが礒崎陽輔(首相補佐官)氏をめぐる騒動である。まず、礒崎氏は6月にツイッターで集団的自衛権についてこう語った。

《集団的自衛権とは、隣の家で出火して、自主防災組織が消防車を呼び、初期消火に努めている中、「うちにはまだ延焼していないので、後ろから応援します。」と言って消火活動に加わらないで、我が家を本当に守れるのかという課題なのです。》(6月9日)

 つまり、火事でたとえたのである。そして7月26日。礒崎氏は地元・大分市の講演で「法的安定性は関係ない。わが国を守るために必要な措置かどうかを気にしないといけない」と安全保障関連法案について発言する。この発言はすぐに騒ぎとなった。礒崎氏は8月3日の参院特別委員会で発言を撤回。翌日の新聞各紙が興味深かったのである。

「礒崎氏発言 火消懸命」(読売新聞)
「安保キーマン 火種」(朝日新聞)
「きちんと火消ししないといけない・自民幹部」(朝日新聞)

礒崎氏をクビにできないのは自分の言葉が響いているから?

 有事を火事でたとえていたら、いつのまにか自分が火事でたとえられているではないか。劇的な展開すぎた。「法的安定性は関係ない」と言い放った磯崎氏は更迭されて当然という声が大きくなった。なぜ首相は磯崎氏を守るのか?と言う声も多い。しかし、安倍首相もいま言葉の呪縛にとらわれている渦中なのだと思う。

 首相は先日ニュース番組で集団的自衛権について説明した。「日米同盟があるので米国は一緒に火を消してくれるが、日本はこれまで自分の家に火が付かなければ消火できなかった」と。首相も集団的自衛権を火事でたとえた。

 火事のほかには「友だち」でたとえたこともある。「生意気な安倍を殴ろうという不良が突然、一緒にいた麻生さんに殴りかかったとする。この場合は私も麻生さんを守ることができる」と。

 礒崎氏をクビにできないのは、まさにこれらの言葉が響いているのではないか? 集団的自衛権を火事でたとえてしまった以上、友だちが火事(炎上)になってしまったら全力で守るしかない。もし礒崎氏をクビにしてしまったら自分で説明していた論理が崩れてしまう。個別的自衛権でよいということになってしまう。だから守るしかない。

 政治家のたとえ話はつくづく難しい。

著者プロフィール

putikashima

お笑い芸人(オフィス北野所属)

プチ鹿島

時事ネタと見立てを得意とするお笑い芸人。「東京ポッド許可局」、「荒川強啓ディ・キャッチ!」(ともにTBSラジオ)、「キックス」(YBSラジオ)、「午後まり」(NHKラジオ第一)出演中。近著に「教養としてのプロレス」(双葉新書)。

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