映画『進撃の巨人』が酷評されるワケ「不自然な描写の連発」|架神恭介コラム (1/2ページ)

デイリーニュースオンライン

映画「進撃の巨人」公式サイトより
映画「進撃の巨人」公式サイトより

 映画批評サイト「超映画批評」が進撃の巨人の酷評を書いたところ、映画版のスタッフがこれに反応して失言し、炎上騒ぎになったことがありました。

超映画批評「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」

 それで一時は、スタッフを叩いたりする流れもあったわけですが、個人的には作品と作り手は切り離して考えるべきだと思っています。作り手が聖人だろうが凶悪テロリストだろうが、良いものは良い、悪いものは悪いで、失言など全くどうでもいいです。

 だってあなた、作り手の失言に気を悪くして作品が楽しめないなんて、他の誰でもないあなた自身の損失じゃないですか。モッタイナイ。

 さておき、では、100点満点中40点を付けた超映画批評の批評が、それほどの酷評かと言うと……。いや、これ、よく出来た批評に思えますね。良い所はちゃんと評価し、悪いところは悪いと言っている。

 超映画批評の前田有一氏は「巨人の登場シーンは大迫力」と書いているけど、僕もこれには全く同感。原作のあの巨人の不気味さを、あれを実写で、しかも日本人の役者で、よくあそこまで表現できたものです。この一点だけでも映画化した価値はある。

バカがバカなことをやっているさまを見せつけられる映画

 で、問題はやはり脚本ですね……。前田氏も書いている通り、

もちろん訓練不足の寄せ集めという設定なのはわかる。だが1分前のおかあさんのいいつけレベルも守れないのはそれ以前の問題だろう。調査兵団は2歳の赤ちゃん以下か。

 登場人物の行動が何かおかしいんですよ。

 人類の命運を賭けた最後の大作戦で、周りには巨人がウロウロしている超危険地帯の真っ只中。いつ襲われてもおかしくない一刻を争う状況で、仲間たちが必死に物資の積み込みをしている一方、主人公やバカップル兵士たちは何故かいんぐりもんぐりをおっぱじめ、そんな呑気なことしてるから、巨人に襲われて作戦が瓦解するという……。

 なぜいんぐりもんぐりしているのか? なぜ物資の積み込みを手伝ったり、巨人の接近を見張ったりしないのか?

 他にも、赤ちゃんの泣き声(明らかに不自然!)を聞いたからといって行軍から離れて探しに行って壊滅の危機を招いたり、有効打になりえないはずの弓矢をなぜか携行したり、人類の命運を賭けた最後の火薬を使って無意味な自爆心中を企てるなど、この映画は概ね「バカがバカなことをやってるさまを延々見せつけられる映画」になっています。前田氏が辟易する気持ちもよく分かる。

 しかし、一方で、この脚本を評価している人もいます。

進撃の童貞:実写版『進撃の巨人』

 こちらでは「童貞」というキーワードで、この映画の筋書きに対し見事な解釈を与えています。先の謎のいんぐりもんぐりシーンの意味合いも説明されており、いわく「上官が幼なじみのミカサといんぐりもんぐりしている事実に愕然とした童貞の主人公が、都合良く迫ってきたシングルマザーでとりあえず童貞を捨てようとしたシーン」とのこと。

 童貞のやり場のない焦りと葛藤、どうしょうもない悩みが描かれた上で、上官のシキシマから「(立体機動装置で)飛べ」と言われる。それを主人公の「(現状を脱却する)飛躍」と重ねているのだ、と言われると、なるほど、と頷きたくなるところがあります。

 そう考えると、あの謎のいんぐりもんぐりシーンにも必然性を感じられてくる……。「ウケそうだし、なんとなく恋愛要素入れとくべ」ではなく、ちゃんと表現したいことを表現するためのシーンだったのかもしれません。

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