『とんねるず』が過小評価されすぎてないか?

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『とんねるず』が過小評価されすぎてないか?
『とんねるず』が過小評価されすぎてないか?

とんねるずが過小評価されていないだろうか?

とんねるずの冠番組は現在、『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系列)のみ。打ち切り説がささやかれたり、面白くないという意見があったりと、どうも否定的な意見が目立つ印象がある。

だが、とんねるずはもっと評価されるべきだ。

その凄さを、本稿で伝えることができればと思う。

画像出典:広告批評 1995年8/9月号 186号(戦後広告50年史年表)資生堂・キャンペーンガール

■影響を受けた芸人たち

とんねるずの凄さを語るうえで、まず、とんねるずの影響を受けている芸人が数多くいるというのは分かりやすい事実だろう。

代表的な芸人を列挙してみると、おぎやはぎ、バナナマン、ずん、次長課長、タカアンドトシ、ラーメンズ、東京03などがあげられ、それ以外にはウッチャンナンチャンなど、関東のお笑い界で活躍する芸人はほぼ影響を受けていると言える。

さらには大御所である笑福亭鶴瓶も、自身の番組で後輩である彼らに対して、今でも憧れている芸人だと公言している。

つまり、ここで間違いなく言えることは、それだけとんねるずが、今のお笑い界に与えた影響が大きいということだ。とんねるずの登場はセンセーショナルで、これまでのお笑い界に確実に革命をもたらすものだった。

■“間”の取り方が抜群にうまい

ここ数十年ではなかなかネタやコントをしないので忘れがちだが、とんねるずはコント職人である。

当時のとんねるずのネタの何が凄いのか。

とんねるずのコントはすべて石橋貴明が作っている。そして、その中で石橋本人が過去のインタビューで、木梨憲武ほどの天才はいないと発言している。それほど、木梨のコメディアンとしての能力は高い。

とかくお笑い業界ではネタを作っている方とネタを作っていない側で評価が分かれがちだが、本来はそうではない。要はネタを作る=優れているわけではないということ。このことを石橋自身も若い頃から自覚していた。

もちろん石橋自身も、笑いにおける演技や表現のポテンシャルは異常に高い。

笑いというのは、台本どおり言えば笑いが取れるほど、簡単なものではない。笑いで一流になるために確実に持っていなければいけない能力というものがある。

それは、コントや漫才を作る“能力”、それとトーク力ではなく笑いを引き起こすことができる“間”だ。

この“間”に関しては習得しようとしても、努力で簡単に習得できるものではなく、この“間”をつかめずに笑いが取れないという芸人は数多い。この“間”は感覚値でしかつかめないものである。

その“間”を生まれ持っている芸人こそ、木梨なのだ。ただ石橋も“間”に関しての能力は高いものがあるが、恐らく努力などによって身につけた後天的なものだ。

とんねるずは、人口的に“間”を身につけた石橋と、天然の“間”をもった木梨とで成り立つコンビで、お笑いコンビとして相性のいい組み合わせと言える。

■ツッコミとボケが明確に決まっていない斬新性

お笑いというのは、プロでやっていく以上誰かに似ている笑いでは、やっていけなくなる。常に新作を作り続けなくては、笑いがとれない大変な職業だ。

とんねるずのコントはそういった意味では、とんねるずにしかできないものだ。またとんねるずが生み出したコントのスタイルが当時は、あまりにも革新的だった。

漫才ブームが過ぎたあとのお笑い業界にとって、とんねるずのコントは斬新だった。ツッコミとボケが明確に決まっていないコントスタイルだったのだ。

これは、誰々がボケ役でもう1人はツッコミ役でと決まっていた当時の時代には考えられないほど斬新だった。

また、そのコントの設定もカメラ部でありながら体育会系の練習をするコントや、アントニオ猪木風の医者のいる日常の診察風景を見せるというシュールな設定のものなど、石橋が作るコントワールドは秀逸なものばかりだった。また明らかに演劇チックに作り込まれている演出も目を見張るものがある。

「タクシードライバー」というコントでは、考え落ちで怖い話の作りで、多分に演劇的な要素が入っている。「馬場兄弟」「猪木兄弟」はまさにツッコミとボケが混在するコントと言えるだろう。

ただし、演劇風の演出を取り入れながらもしっかりコントの間になっており、またニッチなオタクネタもふんだんに盛り込まれている。

とんねるずのコント作品は、今みてもクオリティーが高い。コントを作る石橋の才能は、お笑い界に激震を与えた。

今では知っている人も少ないと思うが、彼らは10年間ものあいだ、とんねるずのコントと題して単独ライブを行っていた。その単独ライブはテレビ番組では見ることのできない、綿密に作り込まれているコントだった。内容もシリアスなもの、テレビ受けしないような非常に実験的で斬新なネタも数多く、当時のお笑い好きを魅了した。

今はバラエティ番組主体の彼らだが、本業であるコント作りをぜひ見たい。

とんねるずの再評価はそこで成されるのではないだろうか。

(文:野碕てるひこ)

画像出典:広告批評 1995年8/9月号 186号(戦後広告50年史年表)資生堂・キャンペーンガール

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