100年以上続く老舗企業数トップが日本の理由

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なぜ日本に老舗企業は多いのか
なぜ日本に老舗企業は多いのか

 日本は、100年以上の創業規模を誇る老舗企業の数が世界で最も多いというのは周知の話ですが、その第二位がアメリカと聞くと驚かれる方も決して少なくないという。

 今月、日本の長寿経営を研究する社団法人「100年経営研究機構」が設立されました。代表理事には日本経済大学の経営学部長を務め、老舗企業の研究では国内随一の研究成果を誇る後藤俊夫教授が選出され、8日、東京都渋谷区のシダックスホールで、その発足式典が開かれたため、私も故あって参加することになりました。

 式典では、数々の経営者団体や研究所で会長職を歴任し、事業構想大学院大学の初代学長も務めた野田一夫氏が基調講演を務め、日本経営の可能性についてその深い見識を披露しました。また、そんな老舗企業の一つ、株式会社山本海苔店から取締役営業副本部長を務める山本貴大氏も登壇され、何人かの識者とともに企業が継続する秘訣を話し合いました。

 そんな企業経営には、「同じスタイルを踏襲し手堅く進める経営」と「変化に対応しながら着実にステップアップを目指す経営」の二つに大別されるということで、その優劣というものは否定しつつ、「継続する」という必要性において、その自らのスタイルを様々な症例から学び取っていく必要があると野田氏は言います。

 さらに、山本海苔店の山本氏によれば、「経営は直系が三代続くと滅びる」と言われ、山本海苔店も嘉永2年(1849年)から始まり、初期の2代目、3代目は婿養子が代表を務めたと言います。そして、都度、着実に事業基盤の拡大と成功を収め、ある意味、時代の変化に対応するという意味では、血縁によるしがらみに囚われるより、新たな才能を補充した方がいい場合もあると語り、そんな自身が直系という点では、先々代から数えて三代目にあたる(笑)とし、自戒を込めて今後の経営について熱心に語られておりました。

 ただ、そうは言いつつも、総てに変化が伴うわけではなく、それなりに経営における理念を継承することは大事なようです。国内を代表するいわゆる名家の多くには、家の憲法ならぬ家憲というものがあるようで、かの三井家にはそうした教えが130か条もあると言います。やはり、それなりに成功を維持していくには相応の智恵が必要ということなのでしょう。このため、いわゆる「伝統」と「イノベーション」のバランスの見極めが、事業を継承していく上でいかに大事なのかということがよく分かります。

 私の場合、日本人固有の価値観並びに生活習慣として、神社並びに神道の研究をして参りましたが、同後藤教授からは、この日本型経営の真髄を探る上で、こうした伝統文化からその気性や気質の一端を洗うことは非常に意義があるとご指摘頂きました。一見、私と後藤教授の研究は文化と経営という異なるフィールドにいるようにも見えますが、実はイデオロギーの創出という点では非常に深い関連性があり、海外の研究者からも、その興味の先に世界最古の皇室たる天皇を挙げる者も少なくないと言います。

 今、同協会の歴史も始まったばかりですが、前出の野田氏は言います。100年経営を科学するわけだから、少なくもこの協会自体が100年は続かないと意味はない。そりゃ、確かにそうだ(笑)、ということで、今後、同協会は長年後藤教授が積み上げてきた膨大な長寿企業データのシステム化をはかり、会員企業を中心にその全情報を開示していくと言います。世界的に経営というと「MBA」を思い浮かぶ方も多いと思いますが、是非、これを機会にいわゆる日本型経営にも注目頂きたいですね。

著者プロフィール

toujyou

一般社団法人国際教養振興協会代表理事/神社ライター

東條英利

日本人の教養力の向上と国際教養人の創出をビジョンに掲げ、一般社団法人国際教養振興協会を設立。「教養」に関するメディアの構築や教育事業、国際交流事業を行う。著書に『日本人の証明』『神社ツーリズム』がある。

公式サイト/東條英利 公式サイト

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