【産経VS毎日】落差ありすぎる"反安保デモ"への評価をどう読むか|プチ鹿島コラム

デイリーニュースオンライン

参議院ホームページより
参議院ホームページより

 安全保障関連法案をめぐる報道は、新聞各紙のスタンスや主張の差を味わう絶好のチャンスだった。最近、私のなかで盛り上がったのは「産経VS毎日」である。まず産経新聞は、FNNとの合同世論調査の結果としてこんな見出しをうってきた。

『共産など4党支持者73% 安保反対集会「参加」特定政党に集中』(9月15日)

《安全保障関連法案に反対する集会に参加した経験がある人は3.4%にとどまった。共産、社民、民主、生活各党など廃案を訴える政党の支持者が7割を超えた。最近注目を集める反対集会だが、今回の調査からは、「一般市民による」というよりも「特定政党の支持層による」集会という実像が浮かび上がる。》

互いの報道に力が入る各メディア

 これにさっそく反論したのが毎日新聞だ。

『産経世論調査:安保法案反対デモの評価をゆがめるな』(9月17日)という記事で、

《安倍政権の応援団として、全国に広がる安保法案反対デモが気に入らないのはよく分かる。「毎日新聞や朝日新聞はデモを大きく扱っているが、デモに参加しているのはたった3.4%にすぎない」と言いたいのだろう。》と噛みつく。

 さらに反論として、

・この世論調査は全国の男女1000人に電話で質問したとされ、そのうちデモや集会に参加したと答えた人が34人いたと推定される。全国の有権者1億人にこの数値を当てはめれば、安保法案反対デモの参加経験者が340万人に上る計算になる。

・デモ・集会に参加したと答えた3.4%の内訳分析まで行っているが、推定人数わずか34人を母数に、支持政党の内訳をパーセンテージで、しかも小数点以下まで算出することに統計的な有意性はほとんどない。

・1000サンプル程度の無作為抽出調査では、パーセンテージで通常3~4ポイントの誤差が生じるとされる。にもかかわらず、3.4%という小さな数値を根拠に「デモに参加しているのはごく少数の人たちであり、共産党などの野党の動員にすぎない」というイメージを強引に導き出した。

 最後に毎日新聞は産経の記事を「とても世論調査分析とは呼べないものであることを指摘しておきたい」と書いて終わった。しかし産経も負けていない。一週間後には今度はこんな見出しできた。

『安保法の反対デモ 50%が「共感せず」本社・FNN世論調査』(9月22日)

《「共感しない」と答えた人が50.2%で、過半数となった。安倍晋三首相を呼び捨てにして「戦争法案反対」「民意を無視」などと一方的に訴える手法は広く受け入れられたとはいえないようだ。》

 ちなみに「共感する」は43.1%だった。安保法案に関しては、ざっくり分けると「賛成 読売、産経 反対 朝日、毎日、東京」というスタンス。だからこそ互いの報道にも力が入る。

 9月26日の「産経抄」は、《安全保障関連法の成立に前後して異なものを見た。それまで「民意」を錦の御旗(みはた)と掲げて連呼し、デモを礼賛してきた一部の新聞が、安倍政権を支持した有権者に矛先を向けていたのである》として、毎日新聞に載った作家の高村薫のコラムを取り上げた。「この有権者たちは、政治を自分のこととして考えたことがあるのだろうか。猛烈に腹が立つ」という高村氏のコラムに「真摯に政治に思いをはせ、平和を願うからこそ安倍政権を支持してきた有権者は当惑するしかない。」と産経は反論する。

 続けて産経は朝日新聞20日付朝刊の1面コラム「有権者に問いたい。(昨年12月の衆院選は)熟慮の末の投票・棄権だったのだろうか」に対し、「まるで、熟慮していれば安倍政権側には投票しないと言わんばかりである。」と書く。産経VS毎日の構図に、朝日も入れられた感じだ(いつも通りと言うべきか)。

 新聞の読み比べが趣味の立場としては、各紙のアツい対決が見逃せない。

著者プロフィール

putikashima

お笑い芸人(オフィス北野所属)

プチ鹿島

時事ネタと見立てを得意とするお笑い芸人。「東京ポッド許可局」、「荒川強啓ディ・キャッチ!」(ともにTBSラジオ)、「キックス」(YBSラジオ)、「午後まり」(NHKラジオ第一)出演中。近著に「教養としてのプロレス」(双葉新書)。

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