【高木復興相カネ問題】人の死は絶好の“票集め”だった! 国会議員「弔問」のウラ事情

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下着ドロの次は香典(高木つよしオフィシャルブログより)
下着ドロの次は香典(高木つよしオフィシャルブログより)

【朝倉秀雄の永田町炎上】

浅ましくも遺族の悲しみに付け込む国会議員の集票活動

 筆者は17年の政策秘書の経験から自著や雑誌の寄稿で「公選法の寄付の禁止規定など守る国会議員などほとんどいない」と操り返し主張してきた。民主党は「ここぞ」とばかりに、11月10日・11日、衆参両院の予算委員会の閉会中審査に高木穀復興相をターゲットに定めた。憲政史上、前代未聞の「下着ドロ」疑惑や公選法で禁止されている「香典」や「枕花」の提供に関して説明を求めたのだ。衆院では柚木道義議員が、参議院では「元祖お嫁さんにしたい女優NO.1」の市毛良枝の元夫の小川敏夫議員がそれぞれ追及したのはいいが、どうやら消化不良に終ったようだ。

 それとしても皮肉なのは、「香典」の問題が民主党副代表の北沢俊美元防衛相にも飛び火したことだ。北沢が代表を務める選挙区支部が2011年から2013年にかけて、選挙区内での葬儀に「香典」として56件、134万円を政治資金から支出したというものだが、与野党を問わず、公選法など誰も守らないのだから、それも当然であろう。人の不幸につけ込んでカネを儲ける「商売」の典型は医師と弁護士だが、それを集票活動の絶好の機会とするのが国会議員だ。葬儀や通夜に出たことがある人なら、たとえどんな無名の故人の葬儀でも必ず国会議員やその秘書が姿を見せることにお気づきであろう。

 なかには誰も知らせないのに、どこかで聞きつけて勝手に顔を出す“押しかけ弔問”さえある。日本人というのは、悲嘆に暮れているときの情義ほど恩に着る傾向がある。反面、人気商売の議員側からは、自分を強く印象づけ、地盤をより強固にし、新たな票の掘り起こしを図る絶好の機会となる。

 筆者は現職秘書時代、与野党合わせ8人の国会議員に仕え、代理として何百もの葬儀や通夜に顔を出した。弔問による集票効果の度合いは、議員本人―議員の妻―議員の息子―秘書の順で効果が小さくなっていく。「業界」では秘書が10回行くより議員が1回顔を出した方がいいとも言われているのだ。だから議員は国会活動などすっぽかしてでも自ら顔を出したいのが本音だ。どうしても抜けられない採決のある本会議や委員会、重要な党の会合などがあれば、代理を立てざるを得ない。誰が代理になるかは、故人と議員の親疎関係、身分や格、選挙での貢献度などによって前の順に従って決める。

肩書きと名前の入った「生花」を供えるのは当り前

 予算委員会では「香典」と「枕花」「弔電」が問題となったが、公選法では議員みずからが葬儀や通夜に出席し、社会通念上、妥当と思われる金額の香典を包む分には「違法」ではあるが、刑事罰は免れることになっている。高木大臣が答弁で「自分が行った。香典は私費から出した。政治資金収支報告書の記載は誤りだった」と言い張ったのは刑罰だけは逃れたかったからだろうが、「枕花」のほうは刑の免責規定がないから「自分は関係がない。後援会が勝手にやった」ことにしてしまっている。

 だが、筆者に言わせれば、絶好の集票機会であるはずの葬儀に議員本人がいっさい関与せず、周囲の者が勝手に「枕花」を供えたなどということはおよそ考えられない。組織選挙をやる共産党と公明党以外は、ほとんどの議員が「香典」は包むのは当り前だ。

 遭族や会葬者がよく見える場所に堂々と自分の肩書きと名前を書いた「枕花」や「生花」を供えるのが「業界の常識(?)」だからだ。そうしなければ、自分の名前を強く印象づけ、集票には繋がらない。それに議員というのは入るカネはいくらでも欲しがるが出るカネは節約主婦のように1円でも惜しむケチな人種が多いから、冠婚葬祭費を私費で賄うようなことはまずしない。政党支部や資金管理団体などが集めた政治資金から出すのが普通だ。

 そういう意味で、高木の「私費で出した」というのはまったく信用できない。そもそも政治資金収支報告書を作成した会計責任者が間違ったり、嘘を記載する理由がない。また高木は「自分が出た」と言い張っているが、受け取った遺族側は「息子が持ってきた」と証言しているし、遺族にもあえて嘘をつく理由はないのだから、彼の国会答弁は嘘だらけの可能性が高い。にも関わらず、高木は委員会終了後の記者会見で「これで一定の説明責任は果たしたと思う」などと嘯いているのだから、まったくフザけたオジさんだ。

国会議員は死者の名前はどうやって知るのか?

 予算委員会では「弔電」の問題も取り上げられた。「弔電」については公選法にも規定はないが、いくら集票活動の絶好の機会だとは言っても、家族や秘書を総動員しても手が回らないのが現実だ。

 そうなると、議員との関係が薄い場合には「弔電対応」で済ませてしまうこともある。高木大臣の場合、「地元新聞に掲載された訃報を基に弔電サービス業者に依頼していた」とされるが、浮動票の多い都会の選挙区ではもっと密度を濃くしなければならない。筆者が仕えたI代譲士などは選挙には滅法強かったが、それは選挙区内の葬儀をすべて把握し、ほぼ全員に弔電を送っていたからだ。

 ではどうやって選挙区内の誰が亡くなり、いつ葬儀があるかをどうやって嗅ぎつけるのであろうか。それにはカラクリがある。人が死ねば必ず「死亡届」を出さなければならない。市町村の担当部局の職員にはいつ誰が亡くなったかすぐにわかる。気の利いた国会議員の地元事務所では彼らに日頃、飲み食いをさせ、その都度、教えてくれるように前もって懐柔しておくわけだ。

 今日の人権感覚からすれば、プライバシーの侵害もはなはだしいが、そんな者はいっさい顧みない。いずれにせよ、人の不幸を集票活動に結びつけようとするのだから、この国の国会議員はまったく浅まし過ぎるにもほどがある。

朝倉秀雄(あさくらひでお)
ノンフィクション作家。元国会議員秘書。中央大学法学部卒業後、中央大学白門会司法会計研究所室員を経て国会議員政策秘書。衆参8名の国会議員を補佐し、資金管理団体の会計責任者として政治献金の管理にも携わる。現職を退いた現在も永田町との太いパイプを活かして、取材・執筆活動を行っている。著書に『国会議員とカネ』(宝島社)、『国会議員裏物語』『戦後総理の査定ファイル』『日本はアメリカとどう関わってきたか?』(以上、彩図社)など。最新刊『平成闇の権力 政財界事件簿』(イースト・プレス)が好評発売中
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