吉田豪インタビュー企画:紀里谷和明「死んでもいいと思ってやってると何かが発生する」(3) (1/5ページ)
プロインタビュアー吉田豪が注目の人にガチンコ取材を挑むロングインタビュー企画。最後の騎士たちの戦いを描いた『ラスト・ナイツ』が大きな話題を呼んでいる映画監督の紀里谷和明さんのインタビューも今回がラスト。紀里谷さんのプライベートの交友関係などから人生と向かい合うスタンスまで、かなり踏み込んだことを聞かせていただきました! 読めば、あなたも紀里谷さんのことが好きになるはず!!
普通にしててもケンカを売ってると思われる
──Twitterでいうと、無邪気だなと思ったのが、地方で「今日はここで飲むから、みんなも来れば?」とかわざわざ書いたりすることなんですよね。
紀里谷 ハハハハハ! まあ、そういうのいいんじゃないかなと思うんですよね。所詮俺、裏方だから。
──もう裏方でもないですけどね。
紀里谷 それもよくわかんない。でも今回、全国いろいろ周って、写真撮影OKで誰に対してもサインするってやってるわけですよね。それはもちろん拡散していただきたいっていうのもあるんだけど、やっぱり驚かれるわけですよ。でも、写真っていってもただ突っ立ってるだけじゃないですか。何をしてるわけでもないし、サインだってちょっと手動かすだけの話で。それで「わーっ、うれしい!」とか言ってくれるわけですよ。「いや私は写真はダメで」とか、「サインはダメ」とか、ビッグな人はそうしないと面倒くさいことになるのかもしれないけど、俺なんかはそんな気はないですよね。それぐらいで喜んでもらえるなら、それでいいじゃんって思っちゃう。それで拡散していただいたら、すごいパブじゃん。いまどこ行ったって、「あ、これが噂の!」って言われるもんね。
──「しくじった人だ!」と(笑)。
紀里谷 そうそうそう。名刺を見せると、「ああ、これが噂の名刺ですね」って地方でも言われるのよ。それがまたテレビに出て、また道端に行くと「ああ、テレビで観ましたよ!」って言ってくれるから、それはそれで機能してるし、みんなハッピーだし。
──相当イメージよくなったんじゃないですか?
紀里谷 だから俺自身はわかんないですよ。教えていただきたい。
──面と向かっていけすかないって言われたことはないでしょうからね。
紀里谷 ない。お袋は前に言ってたけどね。「あなたはしゃべり方がキツい! 目つきが怖い! そんなカミソリみたいな目でこっち見ないで!」って。
──いくつぐらいのときですか?
紀里谷 20代。「あなたとしゃべってると怖いのよ、すぐに怒るし。私、あなたの周りにいるとしゃべり方から気をつけないといけないのよ」って。親父からも、「おまえ、もうちょっとお母さんに優しく話せ」と諭され。岩井(俊二)さんもこないだインタビューで言ってたよね、「初対面のとき、こいつひどいこと言う男だと思った」って。
スタッフ オカマが言うようなことを男言葉で言うからって。
──オカマの毒舌を(笑)。
スタッフ そうです。これがオカマだったらいいけど、男言葉で言うからこいつなんなんだと思ったって。
紀里谷 でも俺は岩井さんがそう思ってたなんて思いもしなかった。そのインタビューを読んで、「え、岩井さんもそんなふうに思ってたの? えーっ!?て感じなの。仲良くしてくれてるな、この人って思ってたの。それが違うんだね。『ダウンタウンDX』でも言ったけど、とにかく「表出ろ」って言われることが多いんですよ。
──ケンカを売った気はなくても。
紀里谷 うん。そういうことなんでしょうね。俺はふつうにしゃべってるつもりなんだけど。
──だいぶ、その手のトラブルも減ってはきてるんですか?
紀里谷 気をつけてますもん。だいぶ気をつけてる。俺としては愛情表現なんですよね。楽しくしゃべってる感じなんですよ。それが違うみたいですね。「おまえ、なんだよ!」って話になる。誠心誠意キッチリ話してるつもりなのに、それがそう映らない。まだちょっと頃合いをつかんでるような状態なんですよ。
──まだ!
紀里谷 フフフフフ。あなたがたはそうやって簡単に思うだろうけど、俺にはそうじゃないんだよ。だから逆にあなた方がアメリカとかに行って、向こうの人たちと話をして「なんでおまえはもっと意見を言わないんだ!」って言われたときにわかることなのかもしれない。
──向こう流の自己主張なわけですね。
紀里谷 そう。「俺こんなに言ってるつもりなんだけど」「いや全然。伝わんねえよ!」とか言われてる感じなわけ。それと同じで、俺は引いてるつもりなんだけど、「え、まだダメなの?」「これでも?」って思いますよ。