【陸自情報漏えい】「真の国益のため」幹部自衛官が秘密を漏らす本当の理由 (1/2ページ)

デイリーニュースオンライン

神戸港に浮かぶ海自の潜水艦(筆者撮影)
神戸港に浮かぶ海自の潜水艦(筆者撮影)

 自衛隊という組織への不満を持ちながら、組織に貢献したい、ひいては国益を利するための結果を導きたい──この相反する思いこそが、自衛官たちの情報漏えい事案に繋がってくる。

 12月4日、元陸上自衛隊ナンバー3の地位にあった泉一成元東部方面総監(64)ほか、元将官を含む自衛隊OB男女5人が書類送検された。なぜ情報保全では高い意識を持つはずの彼らがこうした行動に走るのか。現役陸上自衛官で駐在武官経験もある1等陸佐のひとりがその背景を次のように明かす。

クズ情報を与えてより高い情報を引き出るため

「幹部自衛官として『国益のために働きたい』という思いに尽きます。自衛隊は秘密が多い職場ですが、それでもそれを諸外国に伝えたところで安全保障上、何ら影響もないようなものも含まれています。それを伝えて逆に情報を諸外国から引き出そうと考える幹部自衛官は昔も今もいます」

 この1佐が語る「安全保障上、何ら問題のない秘密文書」とは、たとえば今回事件になった内部冊子「教範」をはじめとする、自衛隊の教育、人事に纏わるものだ。だが、内部文書を外部に渡すことは自衛隊法違反の罪に問われるということだ。そこに思いは及ばないものか。

「今回、書類送検された現役、OBを含む自衛官は階級の高い人がほとんどですね。階級の高い人ほど、『話していいこと、良くないこと』の区別がつくものです。だから『話していいこと』を話した“つもり”だったのだけれど、それが警察の公安部では『アウト、話してはいけないこと』た判断されたというわけです」

警察や官僚より敵国の軍人のほうが信用できる

 国益のためとはいえ、ロシアや中国といったわが国との折り合いもよくない各国の軍人との接触は、自らの地位を振り返るとどこか危険を感じるところもあるのではないか。その点について情報畑の元幹部海上自衛官はこう話す。

「率直に告白すれば、ロシア、中国といった国でも同じ制服を着ている軍人なら信用できるという思いもある。身内であるはずの外務省や警察のほうがよほど、信用できない。同じ自衛官でも陸と空となるとどこか壁がある。諸外国のミリタリー・アタッシュ(駐在武官)のほうが、まだ信頼するに足りる。それが大きいのではないか」

 この情報畑の元幹部海上自衛官は、諸外国の駐在武官に情報を渡すことが巡り巡ってわが国の国益に繋がることも多々、過去にはあったと語る。

「秘密指定されている。だから重要な文書だ。でも安全保障に携わる者からみればどうということもないそれ。これを手渡して、諸外国から国益を利する何かが得られれば、結果として国益に貢献できる。そう考えてもおかしくはありません」

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