【軽減税率】「1円でも嬉しい」と“合意”歓迎は貧乏人ではなく富裕層なワケ (2/2ページ)

デイリーニュースオンライン

食パンで3円の差は小さくない

 一方、お金持ちはどうか。富裕層が数多く住む兵庫県芦屋市の住民は今回の合意劇に多大なる関心を寄せる。芦屋マダムたちを直撃した。

「うちは主人と私、大学生の子、3人で食費は月に4~5万円程度です。もちろん外食を除いて、ですが。さほど高級な食材を用いず、スーパーでタイムサービスや賞味期限切れ間近のセール品を狙ってお買い物してます。ゲーム感覚で、いかに手頃な食材を手に入れ、美味しく頂くか。そこだけを考えています」

 兵庫県芦屋市生まれで芦屋育ちの主婦・ヨウコさん(44)は、地場企業オーナーの3代目(54)の妻。会社役員の夫の年収は1500万円程度だという。それでも結婚以来、倹約はかかさないという。ヨウコさんが続けて語る。

「食パンなんか例えばヤマザキパンのスーパーブレッドを138円で買っています。この価格は税抜き。だから税を入れると149円。もし今回、生鮮食品の税率が引き上げられていたならば152円。わずか3円ですが、ちりも積もれば、と考えると助かります」

 ヨウコさんをはじめとする30代、40代の芦屋マダムたちのほとんどが今回の軽減税率合意に歓迎と語る。

 兵庫県芦屋市の年収1000万円以上世帯と、西成あいちん地区年収100万円以下世帯では、なぜ軽減税率の関心度合いにこうも温度差があるのか。西成あいりん地区を数多く取材した経済ジャーナリスト・秋山謙一郎氏に聞いた。

「低所得層ほどお金への関心が薄いからです。西成あいりん地区でも“白手帳持ち”と呼ばれる日雇労働被保険者手帳を持つ労働者はそれほどでもありませんが、実質、ホームレス状態の日雇い労働者や生活保護受給者は、そもそもお金への執着が希薄。だから軽減税率がどうのといわれてもピンと来ないでしょう。一方で、とくに関西は、お金持ちほど1円、2円の差を気にします」

 富裕層ほど少額でもお金に関する執着を持つ。だが低所得層ほどお金への関心が薄い。だから消費税率や軽減税率といったニュースにも関心を示さないのだろう。本来、軽減税率適用で喜ぶはずの低所得層が、何ら今回の合意劇に興味を持たないというのは何とも皮肉な話である。

川村洋(かわむらひろし)
1973年大阪府生まれ。大学卒業後、金融業界誌記者、地元紙契約記者を経てフリーに。週刊誌や月刊誌で活躍中
「【軽減税率】「1円でも嬉しい」と“合意”歓迎は貧乏人ではなく富裕層なワケ」のページです。デイリーニュースオンラインは、社会貧困政治経済社会などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧