Twitterで人生終了? ”身元バレ”で会社をクビになる人が続出する背景

デイリーニュースオンライン

2015年に多発した「Twitterで人生終了」
2015年に多発した「Twitterで人生終了」

 今年はTwitterで個人の思想にもとづいた活動をしている人たちが「身元バレ」で退職するハメになる騒動が頻発した。特に「反レイシスト」を掲げる攻撃的なリベラル活動をしているユーザーに多いが、なかにはコンビニのアルバイト店員がマナーの悪い客の個人情報などをさらして大炎上したケースも。

「Twitterで人生終了」とは何とも恐ろしい話だが、会社の信用を落としかねないだけに経営者サイドからは「過激な政治活動をしている社員は雇いたくない」との意見も上がっている。本来なら思想・信条は個人の自由だが、誰もが情報発信できるSNSの普及によってそうもいっていられない時代に突入したようだ。

しばき隊が「身元バレ」連発…退職に追い込まれる

 今年最もネット上で騒がれた「Twitter退職」は11月初めに発生した「ぱよぱよちーん騒動」だろう。

 その発端はイラストレーター・はすみとしこ氏の「そうだ難民しよう」イラストが話題になったことだった。シリア難民を不法移民扱いする卑劣さに批判が殺到したが、その一方で同氏のフェイスブックに多数の「いいね」がつけられていた。

 これにC.R.A.C.(旧・レイシストしばき隊)に所属する「反安倍 闇のあざらし隊」を名乗るアカウントが反発。「いいね」を押したユーザーの個人情報を収集し、それらを「はすみリスト」として公開・拡散した。

 しかし、これに「個人情報保護法違反では」と非難が集中。反対派ユーザーたちが逆に個人情報を突き止め、同アカウントの人物がセキュリティ会社の社員であると特定した。そのきっかけとなったのがタレント・千葉麗子(40)のツイートであり、この人物は千葉ら特定の女性に「ぱよぱよちーん」という謎の挨拶を送っていたために一時は流行語になった。

 さらに、本来なら個人情報を守るべき立場のセキュリティ会社のリソースを使っていた疑惑まで浮上。非難にさらされた勤務先の会社は「該当人物は本人の意思で退職した」と発表した。

「個人情報さらし」がブーメラン状態

 これに関連して起きたのが、大きく報道された『新潟日報』の元報道部長の事件。「はすみリスト」公開や過激なリベラル系ユーザーの言動に批判的だった新潟県弁護士会の高島章弁護士に対し、「壇宿六(闇のキャンディーズ)」を名乗るアカウントが暴言で攻撃。「お前の赤ん坊を豚のエサにしてやる!」「こいつを自殺させるのが当面の希望」などと絡んでいた。

 執拗な嫌がらせに高島弁護士は防戦一方だったが、2ちゃんねるに「しばき隊闇のキャンディーズは新潟日報の社員」との書き込みがあったことから、その情報と基に相手の身元を特定。過去に当該人物は口論した相手に「これから君のこと洗わせてもらうわ、会社やら学校やら大変やな」とツイートしていたが、単なる脅しではなく報道機関の情報網を悪用した恐れもある。

 身元が割れると件の報道部長は急激にトーンダウンし、高島弁護士と話し合ったうえで「今後は匿名に隠れて、人を傷つけるような卑怯なことをしないことを固く誓います」と謝罪ツイートした。さらに「もう二度とTwitterをしません」と宣言。それだけでは済まず、新潟日報社は当該人物の役職を解いて無期限の休職処分にした。

 これと同時期に「しばき隊の中心人物」とされる「bcxxx」を名乗るユーザーも身元バレ。「bcxxx」氏は反レイシスト界隈でも特に過激な言動が多いユーザーとして知られていたが、共産党市議である母親がブログに「息子が原発撤退デモを主催して頑張っている」と書き込んだことをきっかけに身元が割り出されてしまった。

 同氏は「これ以上迷惑をかけるわけにいかないということで、自分の一存で、長年勤めた会社を辞めることになりました」と書き込み、その二日後の11月16日以降は今まで頻繁に行っていたツイートをやめてしまった。同氏の勤務先はテレビ番組の制作などを手掛ける企業だったが、こちらも信用を損ないかねないという判断があったのだろう。

 過激な反レイシストたちは意見の違う相手に対して「個人情報をさらして黙らせる」という手段を得意技にしていたが、とんだブーメランになってしまったといえる。

過激すぎる言動は「就職に不利」との意見も

 政治的な活動だけでなく、個人のモラル感情を発端にした事件も起きている。

 11月下旬、 大手コンビニ・セブンイレブンの男性アルバイト店員が雑誌などを立ち読みした客を自身のTwitterで罵倒していると話題に。店員は立ち読みした客を「朝から仕事も行かず金も払わず漫画を読み耽るダメ人間」「夜中に店来て情報の窃盗を行う中年カップル」などと罵倒し、防犯カメラで撮影された顔写真や職務を通じて得た名前や住所などもさらしていた。

 さらに客の免許証の写真や電子マネーの署名を公開したケースまであり、客の個人情報や車のナンバーをさらしたうえで「コイツを殺したら自腹で5万払おう!」と殺害依頼を書き込んだこともある。

 程なく神奈川県内のセブンイレブンの30代店員であると判明し、セブン&アイ・ホールディングスは「顧客の信頼を大きく裏切る行為」と謝罪。当該人物は騒動発覚後の11月20日に退職した。

 いずれも本人たちが「正義」にのっとって誰かに制裁を加えようとした結果だ。しかし、世の中には立場の違う人間がたくさんいるのだから絶対の正義はなく、いずれも「個人の思い込み」に過ぎない。それを互いに擦り合わせていくのが社会というものだが、他者の立場に鈍感な人間は「自分の正義は絶対」「同調しない人間は悪だから何をしてもいい」と勘違いしてしまう。

 これが極まって職権乱用が疑われるケースまで起きており、企業にとっては雇用リスクが高くなってくる。

「SEALDsやデモへの参加が『就職に不利になる』というウワサが拡散されたことがありましたが、実際に最近は学生や転職希望者のSNSをチェックする人事部が珍しくなく、あまり過激な活動は敬遠対象。リベラル活動がダメというわけでなく、過激な言動の人物は敬遠したくなるのが人情です。もし会社の機密やリソースを悪用されたら、致命的なダメージになってしまいますからね」(企業人事担当者)

 政治活動や個人の思いを表明するのは自由だが、一線を踏み越えた悪質な言動はネットでも現実と同じように手痛いシッペ返しを食らう。ネットの匿名性の高さが暴走を助長している部分もあるが、もはやネットなら身元がバレないという感覚は通用しない。 

 それでも「匿名だから安心」とTwitterで暴れる人たちが今後も現れるのだろうか。

佐藤勇馬(さとうゆうま)
個人ニュースサイト運営中の2004年ごろに商業誌にライターとしてスカウトされて以来、ネットや携帯電話の問題を中心に芸能、事件、サブカル、マンガ、プロレス、カルト宗教など幅広い分野で記事を執筆中。歌舞伎町や新大久保をホームグラウンドに飲み歩くのが唯一の楽しみ
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