新国立競技場は”森のスタジアム”か!? 森喜朗会長、大放言の真意を探る|プチ鹿島コラム

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新国立競技場のB案(JSC技術提案書より)
新国立競技場のB案(JSC技術提案書より)

 新国立競技場の新しいデザイン案が公表された。候補は2点。

「五重塔VS御柱」(スポーツニッポン)
「法隆寺VS縄文遺跡」(日刊スポーツ)

 A案とB案のちがいを表現するスポーツ紙の見出しである。両案とも「和」テイストで木材を前面に押し出すのが共通。そしてなにより「杜のスタジアム」というコンセプトが偶然にも同じだった。

 さっそく「森(喜朗)のスタジアム」と思ってしまった人も多いだろう。しかし森喜朗がすごいのは、自分もこの話題にからんでくることなのである。「外観を見ると、B案がいいと思う。いかにもスポーツという雰囲気が出ている」と述べたと報道された。さっそく「立場(五輪組織委員長)をわかって言っているのか」という批判がわきおこる。うかつだ。なんて、うかつなおじさんだ。

マスコミの期待に見事に応える森喜朗

 このあと、本人は反論。各紙によれば14日におこなわれた日本トップリーグ連携機構「感謝の夕べ」というところで「遠藤利明五輪相の講演会の後に壇上に立つと、不服を述べた」(日刊スポーツ)という。

《「B案がいい」と話したことが、一部で批判されたことへの怒りから演説は始まった。》

《 記者から聞かれて言っただけだ。はめられた。》

 私は森喜朗が「B案がいい」と言っていると知ったとき、「自分の不人気を逆手に取って、あえてB案がいいと言っているのではないか? 本命はA案なのではないか。A案周辺と森喜朗の関係性をさぐったほうがよいのでは」と思ったが、記事を読むと森喜朗は単に記者に聞かれて「B案がいい」とのん気に発言した線が濃厚だ。うかつだ。うかつが私の邪推を上回った。

 マスコミは「森喜朗がまた何か言わないかな」と期待して「A案とB案どちらがいいですか」と聞く。森喜朗は見事に期待に応える。おなじみ森喜朗とマスコミのチキンゲーム。トムとジェリーみたいなもの。私は森喜朗を「うかつ」と書いたが、本人はリップサービスだと思っているはず。身のまわりでのサービス精神は狭い範囲では絶大な人気を呼ぶ。しかし特定の場所で「森人気」が高まれば高まるほど、遠くの普通の場所にいる国民には理解しがたい。これが「森人気」(政財界)と「森不人気」(国民)の正体なのだと思う。

 その証拠に、マスコミのやり方を批判した14日のスピーチではこんなことも言っている。

《さらにニヤニヤしながら「A案は木を使ったり、モロッコかASEANのどこかの国のお墓のような感じがしたわけですね」と続けると、聴衆はドッと沸いた。》(スポニチ)

 まさしく、周辺にはウケがいいことの証明ではないか。

《大ウケ状態に気を良くしたのか、森会長は聴衆から「また批判されますよ」とツッコミの声が入っても「(デザインを)私が決める権限なんてない。使わせてもらうだけの話。それが、国立競技場を造って何かするのは俺だとみんな思ってるんだ」などとボルテージを上げた。》

 これをまた報道されるのだ。スポニチの記事の見出しは「森会長、連日の大放言 新国立A案「お墓のよう」…大ウケにご満悦」だった。森の無限ループ。いつまで続くか、見守りたい。

著者プロフィール

putikashima

お笑い芸人(オフィス北野所属)

プチ鹿島

時事ネタと見立てを得意とするお笑い芸人。「東京ポッド許可局」、「荒川強啓ディ・キャッチ!」(ともにTBSラジオ)、「キックス」(YBSラジオ)、「午後まり」(NHKラジオ第一)出演中。近著に「教養としてのプロレス」(双葉新書)。

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