古市憲寿氏「ハーフ劣化」発言にみるニュースサイト『J-CAST』との混ぜるな危険感|やまもといちろうコラム

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Photo by emiliokuffer
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 山本一郎(やまもといちろう)です。またまた今年も、おめでとうございましたね。

 そのめでたい年始にかけて、フジテレビ系『ワイドナショー』に出演した際に、古市憲寿さんの暴言がまた炎上していたようで、興味を持ったわけです。

「ハーフって劣化するのが早くないですか?」 社会学者・古市憲寿氏の「差別発言」に非難殺到(J-CAST 16/1/4)

 まあ、確かに字面だけ見ますと差別っぽく見えますね。迂闊といえば迂闊だし、古市さんっぽいといえば古市さんらしい踏み込み方といえます。なんだろう、この「古市だからまあいいか」と思ってしまうこの心象風景は。もちろん、気になる人からすればとんでもない差別発言だと捉える向きも多いでしょう。そこは番組としても狙っているのか、ネットで騒いでもらって数字を稼ぐという意味では炎上商法的に見えなくもありません。

 一方で、1月1日に放送されたこの番組のネット上での反響を見ますと、実のところ放送をされた直後はほとんど無反応であります。番組実況の掲示板やTwitterなどでも、幾つか古市さんの発言に反発するコメントは見られるものの、話題の合い方になっていた「ハーフ」ウエンツ瑛士さんとの掛け合いに概ね収斂しています。

 ところが、ネットでこの話題が炎上するのは文字通りこの内容でJ-CASTが「差別発言」に非難殺到と記事化し、ネットだけでなくヤフーニュースなどニュースアプリで取り上げられてからの炎上であります。見る限り、そこまで炎上と言えるほどの言及数はネットに無く、巧い具合にJ-CASTが炎上ぽいコメントだけ掬い上げてまとめて、非難殺到をしているかのように演じる形になっているのが興味深いです。

 ある意味で、古市さんが不用意発言や過激な文言をテレビで吐くという、芸人アプローチを全力でレシーブしているのはJ-CASTでありまして、「不適切だと言ってもおかしくはない」レベルのものを、ネットで炎上している体で記事にして、本当に字面だけ読んだ人が炎上させてしまうという豪快な炊き付け芸が素晴らしいといえます。

器用さを併せ持つ社会学者

 過去にも、いろいろJ-CASTには”古市案件”とでも言える冠記事が見受けられ、もちろん実際に放送でそう言っているんだろうけど、「社会学者の古市憲寿さん」というよりは「炎上芸人・古市憲寿」という印象付けを強めていこうというニュアンスを強く感じます。

 ほかにも数件にわたってJ-CASTが古市さんの「暴言キャラ」を際立たせるような記事を掲載、これがまた妙に面白いので随分読まれているという側面があるようです。

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 まあ、ある意味で率直な物言いだなあということで、個人的にはそんなに気にならないのですが、いざその矛先を妖怪みたいと名指しされた女性議員が聞いたとき差別的だと思うのも当然のことです。その意味では、古市さんは社会学者としての顔と、「論客炎上芸人」の顔を使い分けながら、際どいところを歩いてきた人なんだということはよく分かります。

 そんな古市さんですが、東京大学でジェンダー論にて教鞭をとっておられる指導教官・瀬地山角先生から、ハイアングルな叱責をされておるようです。

Kaku Sechiyama facebook

指導教員は私ですので、私の責任でもあります。このような差別発言は如何なる文脈においても許されてはなりません。社会学者と名乗るのであれば、なおのことです。「ハーフ」という表現を含めて、完全に「アウト」です。当人にも伝えるつもりです。申し訳ありません。

 これをあるべき師弟関係とみるか、博士課程にある大の大人に対してメディア商売で喋ったことにまで、指導教官が統制するべきものなのかは分かりません。いわんとすることは分かりますが。若手論客である社会学者として過激なことをいう一方、しっかりと論じる本を出したり大勢の議論で取りまとめ役ができる起用さも持つ古市さんの、「角を丸めて牛を殺す」的な状況もまたもったいないなと思うわけであります。

 この辺を読むと、ああ古市さんはもともとは頭のいい人なんだなと思うんですよね。

保育園義務教育化(古市憲寿・著)

 J-CASTにおかれましても、やはり古市さんのような人はネット界隈や学者世界とテレビ界隈をつなぐ大切な資源ですので、あんまりいきなり掘り尽くして資源枯渇するようなことのないよう、カロリー産出量を計算して計画的な燃焼を心がけていただければ、細く長く燃える素材として重宝するのではないかと思います。限りある資源を大切に。

 画面の向こうから無数の「お前が言うな」という罵声が飛んできている幻覚が見えてまいりましたので、こちらからは以上です。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

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