拒否権はある? 自分だけアパートの家賃を値上げされたらどうする?
ひとり暮らしのひとなら、誰もが気になる「家賃」。更新の際に家賃が値上げされ、気に入っていたのにしぶしぶ引っ越したなんてひとも少なくないでしょう。
もし「自分の部屋」だけ値上げされたら、どうすれば良いのでしょうか? 大家さんから値上げを伝えられたのに、ほかの部屋は「今まで」の金額で貸しに出されていたら、不公平感満点で、応じる気にはなれないのは当然のこと。そんなときは「相当」と思える家賃だけを支払えばOKで、今まで通りの金額を支払っても「滞納」したことにはなりません。1万円は納得できないけど3千円アップが妥当、と思ったら、その金額を法務局に預けておけば完璧です。
■家賃は「相当」額を支払えばOK?
賃貸のアパートやマンションで、モメごとの種になりがちなのが家賃。とくに値上げの場合は「相場」が重要で、面積や間取り、駅から近いなどの立地条件がポイントになります。アパートの自分の部屋だけ値上げ要求された、なんてときも相場が重要で、同じ建物なのにこの部屋だけ? と疑問に思って当然です。こんなときは値上げに応じなくてもOK、自分が「相当」と思う家賃を払えば良いのです。
これは借地借家(しゃくちしゃっか)法・32条「借賃増減(しゃくちんぞうげん)請求権」が根拠で、「相当と認める家賃を払えば良い」と決められているからです。もし来月から5千円アップと言われ、納得できない、ぼったくり、と感じるなら今まで通りの家賃を払えばOKですし、2千円なら納得できるならプラス2千円で構いません。
値上げ対象が「自分の部屋だけ」なんて場合はまさにこのパターンとなり、
・ほかの部屋は値上げしないなら、「相場」ではない金額を要求されている
・自分の部屋「だけ」値上げされる理由がはっきりしない
まず大家さんに値上げの理由を確認すべきで、納得できなければはっきりと伝えておくべきでしょう。
■「供託」は最終手段
値上げに応じなくても、家賃の「滞納」にならないのでしょうか? 借賃増減請求権に従っている以上「正当」な行為ですが、もの別れが続けば裁判になるのは必至。納得できるまでとことんやるぞ! と思うなら、法務局に家賃を預けておけば完璧です。
これは供託(きょうたく)と呼ばれ、
・家賃を支払う「意思」はある
・ただし値上げには納得できない
ことを「第三者」に示すことが目的で、大家さんや管理会社ではなく法務局に家賃を「預ける」かたちで支払います。
もし裁判になっても、
・従来の家賃 … 7万円
・要求された新家賃 … 8万円
・供託した(=相当と思える)家賃 … 7万5千円
のように支払っていれば、踏み倒す意思はないことがはっきりと伝わります。
その後に裁判によって、たとえば7万3千円が妥当と判断されれば、差額の2千円×月数が戻ってきますし、逆に7万8千円に決まれば不足分の合計を支払えばOK、決着してから精算するので、これ以上モメる必要はありません。
ただし、裁判となれば長い日数がかかり、大家さんと折り合いがつかない時間が続くのは望ましいことではありません。どうしても納得できない場合はアリでしょうが、まずは話し合いでの解決を試みるのが良いでしょう。
■まとめ
・家賃の値上げを要求されても、納得できなければ応じなくても良い法律がある
・納得できる金額を支払えば、踏み倒したことにはならない
・相当と思える家賃を、法務局に供託(きょうたく)すれば完璧
・裁判で新家賃が決まったら、差額を精算すればOK
(関口 寿/ガリレオワークス)