突然死に気をつけたい……内科医に聞く! 若くても心筋梗塞になる人の特徴とは

学生の窓口

フジテレビ系の番組「テラスハウス」に出演していたアーティストの今井洋介さんが、心筋梗塞(しんきんこうそく)のために亡くなったという報道がありました。これまでにも、サッカー元日本代表の松田直樹選手やタレントの松村邦弘さん、女優の天海祐希さんなど、若くして心筋梗塞を発症した人のニュースを耳にします。

心筋梗塞といえば中高年に多いというイメージですが、若くてもなりやすい傾向はあるのでしょうか。内科医で大阪府内科医会副会長、泉岡医院(大阪市都島区)の泉岡利於(いずおかとしお)院長にくわしいお話しを聞きました。

■心臓を取り巻く血管がふさがり、心臓に血液が通じなくなる

まず、心筋梗塞がどのような病気なのかについて、泉岡医師はこう説明します。

「心臓は1日に約10万回休みなく動いて、全身に血液を送るポンプの役割を担っています。このポンプを動かすために、心臓に酸素や栄養を送り込む「冠動脈(冠状動脈)」と呼ぶ大きな血管が、心臓の周りを取り巻いています。

近ごろ、血管が硬くなる『動脈硬化』が原因で、この冠動脈中の血流が悪くなって、心筋に十分な酸素や栄養がいきわたらなくなる『虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)』という病気が増えています。『心筋梗塞』や『狭心症』をまとめてこう呼びます」

虚血性とは、血液がじゅうぶん心筋に行き届かない状態を指しますが、泉岡医師は血管の状態と心臓の関係について、次の説明を続けます。

「脂質の固まりであるコレステロールが冠動脈の壁にたまって内側が狭くなり、血液が詰まる、血液量が不足すると、安静時や運動時に関係なく、急に数分間胸の痛みや圧迫感が起こります。これが、『狭心症(きょうしんしょう)』です。

また、冠動脈がふさがり、血液が通じなくなって心筋の一部が壊死すると『心筋梗塞』になります。狭心症同様に突然、胸の中心部に激しい痛みが起こって30分以上続き、死に至るケースも多くあります」

若くても発症する可能性はあるのでしょうか。

「発症例の最多は60代~70代の男性ですが、ストレスや過労、無理なダイエット、運動不足、肥満、食生活の欧米化などが進み、若くして発症する人が増えています。

先ほど話した動脈硬化という病気も中高年の症状と思われがちですが、生まれたときから少しずつ血管に変化は起こっています。生活習慣によって進行のスピードは変わるのです」(泉岡医師)


■肥満、運動不足は動脈硬化を進める

ここで、年齢に関係なく心筋梗塞になりやすいタイプについて、泉岡医師は次の6つを挙げます。

(1)肥満やメタボ

体にため込まれた脂肪が内臓や血管を圧迫して、血液の流れが悪くなります。また、内臓脂肪がたまると、脂肪細胞から血栓(けっせん。血のかたまり)をつくるホルモンが多く分泌することが分かっています。

さらに、血液中の善玉コレステロール(HDL)が減って悪玉コレステロール(LDL)が増えるので、動脈硬化が進行しやすくなります。

肉類や油脂類、乳製品に含まれる飽和脂肪酸は、動脈硬化を促進します。また、炭水化物やお菓子に含まれる糖分は、肥満につながります。特に、太り気味で肉中心の食生活を好む人は、年齢に関係なく気を付けてください。

野菜や魚介類、海藻類、大豆類などを中心にした、栄養バランスの整った食生活を心がけましょう。魚類、特にイワシやサンマなどの青魚には、血液中のコレステロールや中性脂肪を減らし、動脈硬化を予防する働きがあります。

(2)運動不足

運動不足は肥満やメタボの原因の一つで、動脈硬化につながりやすくなります。ウォーキングやサイクリングなどの運動を1日30分以上・週3~4回は続けましょう。家事をするときにこまめに動く、通学通勤時にひと駅先まで歩くなど、日常生活での工夫も必要です。

(3)ストレス過多・過労

ストレスや過労は、血液中のコレステロールの量や血圧を上昇させて動脈硬化をまねき、心筋梗塞の引き金になります。(2)の運動不足の解消をかねてアウトドアで活発に動き、リフレッシュするなどしてストレスをためない生活を心がけましょう。

(4)喫煙

厚生労働省の調査によると、タバコを1日15~34本吸う人は吸わない人に比べて、心筋梗塞が発症する危険性が3倍に高まるとの報告もあります。タバコを吸っていると動脈硬化が進みやすくなります。禁煙を続けると、吸わない人と同程度までリスクを減らすことができるので、禁煙するようにしましょう。

(5)過度なダイエット

「体重80キロの人が、2カ月で30キロ減量した」などというメディアでの情報をよく見かけますが、この例のように、わずか2カ月で37.5%もの体重を減らすのはとても危険です。脂肪だけではなく、内臓をつくる筋肉や骨、血液、水分、ホルモンなどすべてが急に減少し、日常生活に耐えるエネルギーをキープできずに重とくな病気になる例はたくさんあります。

また、減量に成功しても、反動で1カ月で元の体重に戻るケースもあり、その場合は動脈硬化を起こす確率が上がります。極端なダイエットは命の危険があると知っておきましょう。

(6)太り気味の人で激しい運動を好む

肥満やメタボの人がフルマラソンやトライアスロン、ボクシングなど急激な運動をした場合、冠動脈の状態と血流の関係で一気に狭心症や心筋梗塞を起こすことがあります。激しい運動をする前に医療機関を受診して血管の状態を確認し、運動の可否を医師に相談してください。

「生活習慣を見直し、改善すると発症のリスクは抑えられます。血液検査の結果を見逃さずに、異常があれば早めに診察を受けて予防しましょう」と泉岡医師。

どのタイプも心あたりのある傾向で、思わずドキリとします。自分の血管は柔らかいだろうか、血液の質はいいのだろうかと、日ごろの生活習慣を振り返る必要がありそうです。

(岩田なつき/ユンブル)

取材協力・監修 泉岡利於氏。医学博士。内科医、大阪府内科医会副会長。医療法人宏久会泉岡医院院長。

泉岡医院 大阪市都島区東野田町5-5-8 JR/京阪電鉄京橋駅中央出口から徒歩7分
http://www.izuoka.com/

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