暴言王”トランプ”が米大統領に?ヘイトスピーチが支持される謎

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暴言王”トランプ”が米大統領に?ヘイトスピーチが支持される謎
暴言王”トランプ”が米大統領に?ヘイトスピーチが支持される謎

 いきなりラリアットを食らわせ、馬乗りになって上からパンチでボコボコに——。やられたのは、世界最大のプロレス団体<WWE>のオーナーであるビンス・マクマホン(70)。殴ったのは、不動産王ドナルド・トランプ。そう、いまや米国の大統領選挙において<有力候補>の座に君臨するトランプ氏(69)だった。

 この喧嘩は<バトル・オブ・ビリオネア—ズ=億万長者の闘い>と題され、2007年のプロレス界のビッグイベント、レッスルマニア23(注1)で行われた。かねてから口論を続けていたマクマホン氏とトランプ氏が、「決着を付けよう」とそれぞれ代理のレスラーを立てて対決。しかし任せてられずに、遂には直接バトルに発展した、というわけだ(注2)。

 当然「ヤラセ」だ「茶番劇だ」という批判も噴出したが、資産総額千億円を超えるトランプ氏が汗だくで闘うバカバカしい姿が、なかなか見られない光景として大ウケした。

 こうしてプロレスのリングで大暴れしたり、バラエティ番組に出まくる特異な億万長者は、常に全米の注目を集めるようになった。トランプ氏の代名詞ともいえる不穏当な言動は、大統領候補になってもエスカレートするばかり。

■キング・オブ・ヘイトスピーチ

「メキシコからの移民は強姦魔で、麻薬の密売人。メキシコとの国境に“万里の長城”を築いて、密入国を防ぐべき。費用はメキシコの負担で」
「イスラム教徒は、アメリカへの入国を禁止しろ!」
「アメリカに居る不法移民1100万人を強制送還する部隊を創設しよう!」
「フセインやカダフィら、独裁者がいた時の方が中東はマシだった」

 などと、トランプ氏は発言。もちろん米国でも猛批判を浴び、キワモノ候補の烙印を押されていたのだが……。

「変わらぬ支持率の高さに加えて、先日のネバダ州共和党党員集会(候補者指名争い)でも圧勝(注3)して、予備選・党員集会3連勝。しかもネバダ州はトランプ氏が非難してきたヒスパニック(中南米)系住民が非常に多い場所だけに、“トランプの勢いは本物”との観測が強まってきました」(米在住ジャーナリスト)

「強いアメリカをもう一度!」とわめいて強硬に見えるトランプ氏だが、本質は反グローバリズムであり、国内重視政策(注4)。このマインドが米国社会の保守的な白人労働者階級の支持を得ていたのだが、なんと<敵>であるはずのヒスパニック系住民の支持をも獲得してしてしまった。

 ヘイトスピーチを浴びせた相手から支持されての圧勝。たとえ正当な理由があっても、他民族を批判しただけで「ヘイトだ!」と因縁をつけられる日本では、考えられない。これも米国における言論の自由、民主主義の強靭さの現れかもしれない。トランプ氏という、悪趣味な装いをまとってはいるが。

 3月にはスーパーチューズデー(注5)などで候補者が絞り込まれる。世界最高の権力者が決まるまで、目が離せない。

(注1) レッスルマニア…WWE年間最大のイベント。全世界で視聴される。
(注2) 直接バトル…最後はトランプ氏の代理レスラーが勝利。罰としてマクマホン氏は丸坊主にされた。
(注3) ネバダ州で圧勝…トランプ氏は45.9%の得票率。2位のルビオ上院議員、3位のクルーズ上院議員というヒスパニック系の血が流れる2人に大差をつけた。
(注4) 国内重視政策…いわゆるモンロー主義(孤立主義)に近い。
(注5)スーパーチューズデー…最も多くの州が、予備選・党員集会を行う天王山。

著者プロフィール

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コンテンツプロデューサー

田中ねぃ

東京都出身。早大卒後、新潮社入社。『週刊新潮』『FOCUS』を経て、現在『コミック&プロデュース事業部』部長。本業以外にプロレス、アニメ、アイドル、特撮、TV、映画などサブカルチャーに造詣が深い。Daily News Onlineではニュースとカルチャーを絡めたコラムを連載中。愛称は田中‟ダスティ”ねぃ

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