【ネットニュース編集者によるイニシャル鼎談】清原容疑者逮捕の舞台裏

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薬物汚染の実態とは……
薬物汚染の実態とは……

山本一郎×中川淳一郎×漆原直行のイニシャル鼎談vol.6

 年明けから大きな芸能ニュースが続き、ネットニュース業界の賑わいが加速している。そこで、ネットのトレンドを知り尽くしたブロガーの山本一郎氏、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏、編集・ライターの漆原直行氏の3名にご登壇いただきトークイベントを開催。ニュースの舞台裏を語り尽くすその一部をレポートする。ラストの今回は、球界の番長として人気を博した清原和博容疑者についてだ。

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■スポーツ選手に忍び寄るの魔の手

山本一郎(以下、山本) 野球界は大変ですよ。清原問題を受けて公式に薬物関係に関しては排除するってことで、もう日本プロ野球機構(NPB)一回宣言してるんです。とあるメインキャスターの方が、清原さんは巨人に行ってからおかしくなったみたいなことを言ってしまったわけですね。まあ、私も関わりのある番組ですのでアレですが、ちょっと、先生それは、みたいな。

漆原直行(以下、漆原) さすがにそれは言っちゃ……。

山本 でも思い当たる節が、ないわけではないみたいな。ただ、まだ捜査途上ではっきりしないわけだし、現段階で申し上げるべきことではないかなと。やっぱさ、世相じゃん。いろんな報道が出て、一部には右肩を脱臼して成績を落とし始めた西武時代末期のことも書かれていたけど、通しで見れば清原さんが巨人行ってからおかしくなったのはみんな知ってるわけで。

漆原 そうだね。肩で風切る感が増したよね。

山本 なんか清原軍団みたいの作っちゃってさ、筋トレやってさ、故障してさ、痛み止め飲んでさ、治らなくてさ、的な……。

中川淳一郎(以下、中川) ひざ痛いよー、ってなっちゃったんでしょ?

山本 肩も痛かったみたいですね。それで痛み止め飲み始めたら、やっぱりもっと効く薬があったほうがいいとなりやすい。で、もっといいのがありますよ、とか言われるわけですよ。そこから入ってこられたら、早く全盛期の能力を取り戻したいと願うスポーツ選手は手出しますよ。

漆原 そこは「うん、それは仕方ない」とは言えないけど。

山本 いやだってさ、肩ひざ痛いんだよ。試合で集中できないだけじゃなくて、痛すぎて寝られないわけじゃない。で、理由の一部は自分で手がけた過剰な筋トレをしたからですからね。筋トレの結果、身体全体の重量大きくなって全力疾走でもしようもんなら、それを支えるひざの負担も大きくなるわけですよ。これは当たり前ですよね。

中川 なんで筋肉つけようとしたんだろう? 

山本 タイトル欲しかったんでしょ。それまでも無冠だったわけですし。当時広いとされた東京ドームで沢山ホームラン打ちたいと思って、ならば肉体改造だって話になった。もちろん筋力をつけること自体は必要なことで、一概に悪いこととはいえない。

 でも、身体には支えられるキャパシティというのがあって、それは関節や腱、靭帯によって支えられていて、筋力の増大ほど一気に強化することなどできない。極論を言えば、軽自動車にでっかいエンジン積むようなものです。

 いっぱい筋トレした結果、体重が増えて、ひざに一気に負担くるわけじゃないですか。靭帯が痛いだ、ひざの腱に問題が出るだ、半月板が歪むだ、色々問題が出て来る。痛いわけですよ。そうなると、スポーツ界には痛みを止めるいろんな方法があるわけですよ。リハビリ期間の間に禁止薬物を使って痛みを取りながら、ちゃんとリハビリをする。

 別に禁止薬物全体が一切駄目だというわけではありません。風邪薬や、育毛剤も駄目な成分を含むものはある。ぜんそくの選手は、ちゃんと球団を通じてNPBに申請して禁止薬物であるステロイドを処方されたりするし、要は、それを服用して身体に残った状態で試合に出ては駄目だと言うだけです。

 故障して、3ヶ月ぐらい二軍に落ちて、痛み止めなどで禁止薬物を服用している間に処置をして、その後リハビリに入ったところで使用をやめて、薬を抜く期間を作って試合に復帰するとかね。

漆原 試合に出る時までに薬が抜けてさえいれば、問題ないわけでしょ? 

山本 ドーピング問題ってみんな誤解してるんだけど、全部が全部使っていけないんではなく、大まかに言って使って試合に出てはいけない薬物と、そもそも使っては駄目だという薬物とがあります。だから、たとえば、ステロイドがダメですよっていうのは、基本的には、筋肉増強効果のあるステロイドが血中や筋肉組織に残ってる段階で試合に出てはいけませんって話。ただ、ステロイドは患部の炎症を抑えたりする本来の処方効果を期待して投与されることが多い。だからやるならちゃんと薬を抜いてから、ドライなカラダで試合に出て下さいね。ウェットだったらダメですよってことなんです。

 で、その禁止薬物にアスリートが手を出しやすい環境ってのは2つあって、1つは故障、1つは成績へのプレッシャーなんです。それをやめましょうっていまNPBが言わなきゃいけないのは、必要なことではもちろんあるんだけど、結構末期的だと思うんです。そう言わなきゃいけない“何か”が他にあるんじゃないかって思われてもしょうがない。それを巨人行ってからって言われると、“もしかして、そういうことなのか”ってなるわけですよ。

■球界のスターが薬物に手を染めた理由

漆原 それを言っちゃ、みたいな事なのね。よかったね山本さん、(収録とかで)そのキャスターの方の隣にいなくてね。もし話を振られたらどうしてました?

山本 そしたら、「ですよねー」って。

漆原 そしたら今頃、ものすごい騒ぎですよ。また、ネットで大騒ぎ。

山本 でも確かに、あの頃の清原さんのカラダの大きくなり方ってのは、いま映像を振り返ってみても、故障おこす筋肥大ですよ。実際故障起こして、相当痛いだろうな、清原さん、辛かったろうなって思うわけですよ。

 しかも、球団も薄々気づいていたかもしれないけど、なかなか止められなかったんだろうなと。私なんかは、巨人にとても同情的です。もしも私があそこにいたら、清原さんを止められただろうか? と、どうしても思ってしまう。まさか覚せい剤とは思わないけど、成績が下降線になっていたし、どうにかしたいのだろうと。

中川 とたんに、出場試合が減っちゃいましたもんね。55試合とか、そんな年もありましたよね。

山本 いきなり身体を大きくするのってリスク大きいんですよ。それこそダルビッシュさんもそうだったし、金本知憲さん、陽岱鋼さんもそう。もちろん、筋肥大をしてパフォーマンスを引き上げたいぞという思想は良く分かるんですけど、いきなり大きくすることのリスクってのは、やっぱり考えた方がいいよってのは球界の端っこにいるイチ関係者としては思いますね。その話を知ってると、あぁなんてことを、みたいな。

漆原 裏のカラクリ聞くと、いろいろ繋がりはするよね。

山本 だから、色々ワークアウトとかやるわけじゃないですか。で、そのワークアウト会社についてるサプリメント会社もあったりする。それは単純に、普通の健康な社会人に対して、よりいいフィットネスをやるためにね。

漆原 補助食品を使いましょうみたいなね。

山本 そこにトレーナーがいるんですよ。で、そのトレーナーってのが、“ウェット”のこと知ってるわけですよ。痛くてとても寝られないとなれば、ボルタレンが出る。これは強いけど完全に合法な薬です。ただそれは非常に効果が強い分、連投しちゃいけないんです。前回服用から少なくとも4時間以上間あけてくださいねって話なんですけど。多分連続して飲んだりしたんだと思うんですよ。

漆原 痛み止めって、4時間あけろとか6時間あけろとか、用法容量の指定が細かいですもんね。

山本 消化器系に潰瘍ができたり、腎臓とか肝臓に負担がかかるってのもあるんですけど、意識障害を起こしたり、強い興奮状態になったりもする。それ以上に効かなくなってくるんです。さらに、耐性がついてきて、肝臓がすぐ分解するようになってしまう。

 そうなると、より強いものをってなって、別のモノが出たんじゃないか、っていうのが当時から言われているんです。でそれを処方したやつが、どうも聞く限りでは実話系の雑誌や週刊誌にタレ込んじゃった。そうすると今度は、色んな人が近づいてくるじゃないですか。他にもいいお薬がありますよってね。

漆原 お困りですか? こういう薬欲しいでしょ? 

山本 っていうね。そういうのに名前が出ちゃう、もしくは疑われるような報道が出ると一気に営業がかかる。でも、最初から覚せい剤繋がりって話は今回初めて聞いたんですよね。報道がどこまで正しいのか分からないけど。

漆原 これは太いお客さんになるかもしれんわ、ってことで、ロックオンされると。

山本 そういうことです。怖いは怖い。普通はそこで断るんですけどね……。だから、アスリートの中でも清原さんの闇堕ちは残念と言いつつ、他の種目で薬物疑惑をかけられる人たちがどうしても出てきてしまいます。同じトレーナーだろ、同じ故障だろ、みたいな。

 やっぱり、野球選手に限らず六本木や西麻布でアスリートが一般の人たちのいる店で「彼がいまキマっている」という話が聞こえてくると、やっぱりビビります。いままでは遠くの世界だったんですけど、まさかうちの選手や関係者で交遊関係あるやついないだろうな、って疑心暗鬼になっちゃうわけですね。

ー完ー

(構成/デイリーニュースオンライン編集部)

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プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

プロフィール

ライター/編集者

中川淳一郎

一橋大学商学部卒業後、博報堂CC局で企業のPR業務を担当。2001年に退社しフリーライターに。『テレビブロス』編集者、企業のPR活動、ライター、雑誌編集などを経て『NEWSポストセブン』など様々な、ネットニュースサイトの編集者となる。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)など多数

プロフィール

ライター/編集者

漆原直行

1972年東京都生まれ。編集者・記者、ビジネス書ウォッチャー。大学在学中より若手サラリーマン向け週刊誌、情報誌などでライター業に従事。ビジネス誌やパソコン誌などの編集部を経て、現在はフリーランス。書籍の構成、ビジネスコミックのシナリオなども手がける。著書に『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』『COMIX 家族でできる 7つの習慣』(シナリオ。伊原直司名義)など多数

次回告知/デイリーニュースオンラインPresents『山本一郎・中川淳一郎・漆原直行トークイベント』

【日時】3月3日(木)19時30分スタート(18時30分開場)
【場所】阿佐ヶ谷ロフトA
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/42594

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