3・11の”卒業祝い給食”は不謹慎?肥大化するクレーマーへの違和感 (2/2ページ)

デイリーニュースオンライン

 今回の卒業祝い給食の件を非難したのがどんな人物であったのか明らかにされていない。ただ近年は、インターネットが広まったこともあり、個人が企業や団体へクレームを入れやすい、いわばクレーマーの天国が出来上がっている。

 今回の一件以外にも、過去には様々な例がある。2011年には、フジテレビの展開するテレビ番組に「韓流への偏重の傾向がある」として、フジテレビ本社を取り囲む抗議デモが実施されるに至った。当時はフジテレビの番組スポンサーをつとめていた企業への抗議行動がインターネットを通じて広まり、賛否を呼んだ。またスキャンダルや失敗、常識に欠けた行動で注目を集めたアーティスト・芸能人に、SNSを通じて非難を直接ぶつけるネットユーザーも多い。

 こうした背景をもとに芸能界や映画業界では、"クレーム対策"を行うことも少なくない。

 2015年1月には、ロックバンド「凛として時雨」が過激テロ組織「イスラム国」による邦人人質事件に配慮して、音楽番組「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)で披露した『Who What Who What』の歌詞を変更。今年も2月6日に公開を予定していた映画『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』が、劇中に軽井沢スキーバス転落事故を連想させるシーンがあり、「観客がこちらの意図しない感情を持ってしまう可能性がある」として公開延期が発表されている。

 "そこまで自粛するのはやりすぎではないか"という意見もあるが、一度難癖がつけば企画自体がボツになったり悪評が広まったりするかもしれないだけに、アーティストや制作サイドの気持ちは分からなくもない。

「人は感情が動いたときに誰かに意見を言いたくなりますが、多いのは絶賛と批判です。そのなかでクレームというのは厄介で、"お客様は神様"の精神が根付いている日本人は、少しでも批判が来ればすんなり受け入れてしまいがちです。意見を言ってきた匿名ユーザーの年齢やバックグラウンドは分からないわけですから、小学生の匿名クレームに対して50歳の社長が頭を抱える……なんて状況はいくらでもありえます。クレームの受け手は全ての声を鵜呑みにし過ぎないように気をつけ、状況や色んな意見を吟味して判断していかなければなりません」(同上)

 インターネットは情報量が爆発的に多い環境を作りだしたりコミュニケーションの時間を縮めたりするなど、多くのメリットを生み出してきた。しかし一方で利用者の良心や判断力は一層重要になっており、とかく生きにくい世の中になったのかもしれない。

海保真一(かいほ・しんいち)
1967年秋田県生まれ。大学卒業後、週刊誌記者を経てフリーライターに。実話誌や週刊誌などで執筆し、芸能界のタブーから子供貧困など社会問題にも取り組む。主な著書に『実録!アメリカの陰謀』『格差社会の真実』(ともに宙出版)ほか多数。
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