対北朝鮮制裁の波が中国にも…「代金踏み倒し」に脅える中国貿易関係者

デイリーNKジャパン

対北朝鮮制裁の波が中国にも…「代金踏み倒し」に脅える中国貿易関係者

核実験と長距離弾道ミサイルの発射に対する国連の対北制裁が、北朝鮮の社会不安を引き起こしている。その一方で、中国側の貿易関係者らも、制裁によって不安を感じはじめているようだ。

中国遼寧省の丹東市は、川を挟んで北朝鮮有数の都市である新義州市の向かいに位置し、中朝貿易の最重要拠点だ。税関周辺には中朝両国の多数の貿易会社や各中国企業の代理店、卸売業者が軒を並べる。制裁を抜きにしても、北朝鮮が何か起こすたびに不安と不況に襲われる地域だ。昨年3月には、脱北した北朝鮮の兵士が人質を取って立て籠もるという物騒な事件が起きた。

また、同時期に、北朝鮮当局は韓国人男性2人をスパイ容疑で逮捕。丹東市内にある「スパイの拠点」とされる店舗名が発表され、「スパイ不況」に見舞われてしまった。

今のところ、直接的な影響はないようだが、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、中国・丹東市の貿易関係者は不安に駆られているという。背景には、中朝貿易が抱える構造的な問題があった。

実は、中朝貿易は、まず北朝鮮に商品を送ってから、代金は後払いという形を取ることがほとんどだ。代金未払いのリスクがあるが、中国の貿易業者の間で過当競争が起きているため、こうした方式を取らざるをえない。そして業者たちは、北朝鮮で何か起こる度に「代金が受け取れないのではないか」という不安に襲われるのだ。かといって取引をやめてしまえば、北朝鮮側から「以前に送ってもらった商品の代金は払えない」と言われるかもしれない。まさに、にっちもさっちもいかない状況なのだ。

ある中国の貿易業者は「北朝鮮と貿易をしているほとんどの業者が同じ悩みを抱えている。しかし、過当競争で長年の商習慣を変えられそうにない」とボヤく。

すでに、中国工商銀行の丹東支店は、昨年12月から北朝鮮人名義の口座への入金や送金の取り扱いを中止。また、中国から出入国する際に2万元または5000ドル以上の現金を持っている場合は申告の義務があり、この措置が厳格化されるとなると、代金の支払いに問題が生じる可能性がさらに高まる。

一方で、中国税関のキャパシティを考えると、制裁の厳格な執行は難しいという指摘もある。

前述の情報筋によると、中朝間を往来するトラック車両の台数は、制裁決議前と決議後ではそれほど変わりはないという。さらに、中国の税関検査は、一般的に規制と緩和を緩和を繰り返す。制裁が実行されているかどうかも、ある程度の時間がたたない限り見えてこないだろう。

しかし、核とミサイルの暴走が招いた制裁が中朝双方の貿易関係者に不安材料を与えていることは間違いなく、大なり小なり悪影響が生じることが予想される。金正恩第一書記は、核開発と経済発展を両立させる「並進路線」を強調しているが、現場のこうした空気を無視しているとしか思えない。

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